【シナリオ】 「書けば、叶う」
〈人物〉
山崎栞(27)OL
内海草介(32)書店員
守屋敏夫(51)書店長
◯上野鳴鐘堂書店・催事コーナー(夕)
数本の笹に短冊が下がっている。
笹の隣に「星に願いを」と書かれたPOP。
スーツ姿の山崎栞(27)が短冊を笹に結ぼうとしている。
短冊が手を離れ、数m先の緑のエプロンをつけた長身の内海草介(32)の足元に落ちる。
栞「あっ…」
内海、屈んで短冊を拾い上げる。
「鳴海先生のような小説を書けますように」と書いてある。
内海、栞を見る。栞、俯く。
栞「もうやだ、恥ずかしい…」
内海、笹の内側の方に、丁寧に短冊を結ぶ。
内海「恥ずかしくないです。書けば、叶います」
内海、栞に微笑みかける。頬を染める栞。
◯上野鳴鐘堂書店・催事コーナー(夕)
「読書の秋フェア」の看板が吊られ、什器に本が平積みにされている。
「覆面作家・鳴海奏多 最新作!」のPOP脇で本を手に取る栞。
内海が近寄って来る。
内海「こんばんは」
栞「あ、こんばんは」
栞、内海を見上げて微笑む。
内海、エプロンのポケットからメモを出して差し出す。
内海「これ…鳴海奏多が『勉強になった』て書いてた本なんです」
栞「鳴海先生が? 内海さん、ありがとう」
栞、メモを受け取る。
「新井一『シナリオの基礎技術』」と書いてある。
◯表参道・ 欅並木
紅葉の下をコート姿の人々が行き交う。
◯表参道新井シナリオスクール・外
栞、「表参道新井シナリオスクール」の看板のあるビルを見上げている。
大きく息を吸うと、ビル1階へ入っていく。
◯表参道・ 欅並木(夜)
華やかな、クリスマスのイルミネーション。
◯表参道新井シナリオスクール・中(夜)
狭い教室。窓からイルミネーションが見える。
黒板の前で講師が話している。前方の席でノートをとる栞。
◯JR上野駅・中央改札広場(夕)
雑踏の中、「バレンタインフェア」の看板。ショーケースに群がる女性達。
茶色の小さな紙袋を下げた白いコート姿の栞が傍を通り過ぎる。
◯上野鳴鐘堂書店・レジカウンター脇(夕)
緑のエプロン姿の守屋敏夫(51)が柱にポスターを貼ろうとしている。
栞の声「すみません、今日は内海さんは…?」
守屋、振り向きながら、
守屋「内海は先月末で退職しまして」
栞「え! 」
紙袋を持つ春香の手が大きく揺れる。
栞「そんな…」
守屋「だもんで、てんてこ舞いでして…」
守屋、ポスターを貼る。目で追う春香。
栞「『スタッフ募集』…」
◯上野公園・桜並木
満開の桜。桜を見上げる人々。
◯上野公園・不忍池
水面を覆う一面の蓮の葉。7分咲きの蓮の花。
◯上野鳴鐘堂書店・催事コーナー
数本の笹に短冊が下がっている。
笹の隣に机と椅子、「七夕特別イベント 鳴海奏多先生、初!サイン会」のポスター。
緑のエプロンをつけた栞が指差し確認をしている。守屋がやってくる。
守屋「山崎さん、ついにご本人登場だよ。
お茶出ししといで」
山守、栞にウィンクする。
◯同・バックヤード・会議室・中
ノックの音。
栞の声「失礼します」
湯呑みを乗せた盆を手にドアを開けた栞、大きく目を見開く。
部屋の奥の椅子から内海が立ち上がる。
内海「山崎さん、お久しぶりです」
内海、はにかみながら栞に微笑みかける。
「5分で描く1年間」というテーマで出された課題。
*ぼんやりとした“1年”ではなく、特定の1日から始まる366日を描く。
という縛りが。
特定の1日をいつにするか? 1年の時間の変化をどう描写するか? で、かなり悩みました。
相当、内輪ウケのモチーフを使ってしまった…という反省はありますが、初期の作品の中ではわりと気に入っています。
今日は七夕。どうか、今日の皆さまの願いが、叶いますように。。。
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