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見栄と見栄え〜名前にまつわる四苦八苦:3. 〈未芙美〉が生まれた日

〈未芙美〉です。お題「名前の由来」、大詰の第3部におつきあいください。

「名前の由来」~自己紹介を兼ねて~
1. 宿題
2. 宿題の余波
3. 〈未芙美〉が生まれた日
1)音の響き
2)見栄えと縁起
 
3. 〈未芙美〉が生まれた日

本名と同じくらい、いやそれ以上に自然に名乗れる筆名が欲しい。
そんな思いが強まったのは、相方と結婚し入籍して、折々に呼ばれる新しい姓にまだまだ馴染めなかった頃のことだ。仕事では旧姓使用を選択していた。だから余計に、違和感が消えなかった。自分で決めた結婚だが自分で選んだ苗字ではない、と思っていた。

1)音の響き
ならば、新旧ふたつを融合した響きの筆名を、自分で選び、名乗ろう。
そんな発想で、まずは新旧の姓と下の名からアナグラム的に(ミステリーが好きだった…)名前らしき文字列を量産した。そして、それらを音読して、耳慣れた印象の、舌ざわりの良い音の連なりを探した。
「探してる音は、どれだろう?」
…すでにお気づきの方もあるかと思う。
これ、本質的に父と同じ名前の決め方なのだ。蛙の子は蛙…である。

そうやって、第三の姓と名を決めた(上につく苗字が一応はあるのである)。
父と違っていたのは、音を決めた後の漢字選びに膨大な画数チェックを実施したことと、書きやすさより見栄えを重視したことだ。

2)見栄えと縁起
何をもって見栄えの良い名前というか。これは個人の感覚の問題だ。
が、この時の私には明確な基準があった。「寄席文字にした時に映える名前」である。

「寄席文字」
勘亭流、相撲字と並ぶ、「江戸文字」の一種。主に寄席の空間やチラシで、演者名の表記などに使われる。単なるデザイン文字ではなく、伝統技術として継承されている書法。
※詳しくは橘右橘師匠の『図説:江戸文字入門』(河出書房新社)をお薦めします。

当時の私は、駆け出しながらすでに重度の落語中毒者であった。
噺はもちろん、噺家さんごとの高座の魅力や、寄席の空気感に夢中だった。そして寄席を彩る「寄席文字」という筆文字に魅了されていた。

寄席文字の書法の根底には、「大入」つまり興行の成功を祈って、文字を客席に見立て、アンバランスな隙間のない見栄えの良い文字を追求する…という姿勢がある。そして、藝の上達や藝人としての成長繁栄を願う気持ちを、右肩上がりの書体にこめる。
寄席ではメクリや幟に、演者は扇子、手拭いから名刺に千社札、ポチ袋まで、日常的にその文字を使う。
寄席文字は、藝にまつわる見栄と縁起の文字なのだ。私は、祈りのようなこの文字に似合う名前が欲しかった。

お古い師匠が、こんな話をしてくれた。
「幟ってのはさぁ、風が吹くとすーぐ裏っかえしになっちゃうだろ?
でも左右対称の名前は、幟が裏になっても読める。風向きに関係なく客が入る良い名だ、なんて事を言ったもんだよ」

この言葉が、候補に挙がっていた字を一気に絞り込むきっかけになった。
すると残った字の中から、〈未芙美〉という名前がすうっと浮かび上がって来た。これが自分と共に成長していく名だ、と直感した瞬間だった。

ひとり語りにおつきあいいただき、ありがとうございました。
今後とも〈未芙美〉をよろしくお願いいたします m(_ _)m
❤︎

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