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寄席にはすべてがある〜真打昇進披露興行覚書〜

寿 真打昇進披露興行
  於:鈴本演芸場 3月26日(木)夜席
(途中入場)
「親子都々逸」  五明楼 玉の輔
 相撲漫談    三遊亭 歌武蔵
 漫 才     涼風 にゃん子・金魚
「金 明 竹」  柳亭 市馬
 漫 談     鈴々舎 馬風
 手 品     アサダ二世
 漫 談     林家 木久扇
「長屋の花見」  柳家 三三
    <お仲入り>
真打昇進披露口上 
  玉の輔/正蔵/木久扇/一左/一朝/馬風/市馬
浮世節(両国風景)立花家 橘之助
「一 眼 国」  林家 正蔵
「芝居の喧嘩」  春風亭一朝
 紙切り     林家正楽
「締め込み」   春風亭一左

「血中落語濃度が低下すると健康状態が悪化」
「3週間生落語を摂取しないと、禁断症状が…」
と公言してはばからないワタクシ。
以前のホームグラウンドであったブログ(『みふみのトーキョー彩・時・記』@『ココログ』)では、ほぼ毎回、寄席や落語会で拝見した高座を記録していました。
『note』を始めた時、高座記録用マガジンを作って寄席の記録を書くことを楽しみにしていました。
それが、まさかこんなオープニングになるなんて。。。

2年半におよぶ休職=徂徠豆腐期間中、変わらぬお心遣いをくださったのは、多くの演者の皆さま。
復職のご報告の際には、すでにコロナのニュースが出始めておりましたが、
「一左さんの御披露目を皮切りに、バンバン寄席へ伺います!」と宣言しておりました。
「寄席で免疫力向上に努めます!」と。

その根底には、「寄席は365日休みなし」という認識があったわけで。
歌武蔵師匠がこの日も高座でネタにされたように、
「三密?…ここに当てはまりますか?」
※寄席ご来場の皆様は、マスク完備&適正人間距離に配慮、と良心的な方ばかり。ハコ側も換気等を徹底されてます。
「笑って免疫力を上げる方が良いでしょ?」
と本気で思っていたし、
復帰したわが「ぜんざい公社」も大概休まない会社ですが、
「たとえウチの会社が休む事があろうとも、寄席は休まないだろう」とどこかで思っていたのです。

それが、25日(水)の小池知事の「要請」で一転しました。。。

26日、春風亭一左”師匠”の御披露目・大初日。
相方の制止を振り切って鈴本演芸場へ足を運んだ私を待っていたものは。
一左さんご本人の
「今日の大初日が、鈴本の楽日になっちゃいました~」という第一声。
…日中に、都内全ての寄席の土日(28・29日)休演が決まったのでした。

◇*◇*◇

それを受けてか、番組は予定されていたよりも豪華に。
予定になかった木久扇師匠の高座が追加され、真打昇進披露口上では、歌舞伎座の御簾内でも演奏されていた一朝師匠が笛の名人芸をご披露。
この日が記念日となる新真打・一左師匠と、大初日をめがけて来たお客様に、何ができるのか、楽屋が全力で考えている様子が伝わってきて、胸が熱くなりました。

印象的だったのは、三三師匠の「長屋の花見」と、一朝師匠の「芝居の喧嘩」。
世間はお花見も自粛要請で、上野や目黒の桜の周りにはバリケード。歌舞伎座も休演…。
そんな最中、この日の寄席でお花見をして季節の巡るのを感じ、芝居へ行って小屋の風情を楽しみ。
そして、寄席の最も華やかな御披露目風景に浸る事ができました。
前座の頃から縁あって応援している一左さんが”師匠”と呼ばれる晴れ姿を拝んで、涙目になり、「締め込み」の熱演に泣き笑いになった私です。

ハネの太鼓と、幕内の三本締めの音を聞きながら…
一左師匠、そして同時にご昇進される全ての師匠方のご多幸と、
”全てをくれる寄席”の通常営業と、そのために何より疫病退散を、強く強く願って寄席を後にしたのでした。

どうか、普通に笑って過ごせる文化的な毎日が、早く戻ってきますように。


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