働く意欲を取りもどせた話
来月から働くことになった。正社員で。
あれだけ労働意欲が底をついていたのに…
ずいぶん変わり身が早いな、と自分でも思ってしまう。
実際に就職活動をしたのは約1ヶ月間。
ただ、前職を辞めてから、「また働こう」という気持ちにもっていくまでに、3ヶ月以上を要した。
今回内定をいただけたことは、ほとんど奇跡だと思う。
それと同じくらい、労働意欲を取り戻せたこともまた奇跡だった。
少し前まで、
「私はまた働こうと思えるんだろうか」と、
漠然とした不安のなかにいた毎日だったから。
どうしてみんなそんなに働けるんだろう、
なぜ私は頑張れないのだろう、
自分に希望がまったく持てなかった。
泣けた日もあった。
そんな状態から、働く意欲をとり戻していった経緯を書いておきたい。
■無職の毎日、楽しい
とはいえ、なにか大きなきっかけや事件があった訳ではなく。
本当に日常の小さな出来事や、些細なことの積み重ねだった。
無職になって、「しばらくこの穏やかな毎日を楽しもう!」と決めて、
それはもう、とても楽しかった。
あらゆるストレスがなかった。
嫌な人間関係、売上目標、プレッシャー。
心身ともに健康で、本を読んで、散歩して、運動する気持ちよさ。
それができるありがたさ。
ご飯はほとんど自炊なので、旬のものを味わってみたり。
たまに気分の上がるカフェを見つけ、コーヒーをいただく。
最高だった。とても美味しかった。
ゆっくりとした毎日を、大事に噛みしめた。
あっという間だった。
働いていないのに、毎日が過ぎるのはこんなにも早い。
何をしたわけでもないけれど、ただただ充実していた。
気持ちが良かった。
心の底から癒された。
■日々を繰り返して気付いたこと
「ずっとこのままがいいなあ」とぼんやり思った。
そもそも貯金が尽きるからずっとは無理。
あり得ない。分かっている。
そう。そうなんだった。
「この日々は、働かなければ得られない」んだった。
いまの愛しい毎日は、過去の私が働いて得た貯蓄があるから成り立っている。
そこから捻出されている。
たとえば、日々で感じるこんなこと。
・健康な体で散歩ができる
・風の気持ちよさ、季節の移りかわりを感じる
・ご飯を美味しく食べられる
・カフェでほっと一息、コーヒーを味わえる
・人と会話して楽しく食事ができる
・あたたかいベッドで眠りにつける
これら全ては、収入があってこそ維持ができるものだった。
私が、私の気持ちよい生活を、これからも営んでいくために。
愛しい生活を、人生を、大事に過ごすために。
やっぱり、働くことが必要だ。
そう思えた。
■500円のリップ
10月の初めだったか、
保湿用のリップを切らしたため、ドラッグストアで買おうと思った時のこと。
いつも買う500円のリップを買うのにためらってしまった。
なんせ無収入なので、可能なところは節約しなければならない。
今まで気にしたことなんてなかった。
そうか、収入がある状態なら、500円のリップを買うのをためらわなくてもいいんだと、ふと思った。
もし収入があれば、保湿力がより優れる1,000円のリップも、
少し背伸びをして5,000円のブランドのリップも選べるようになるかもしれない。
何色にしようか。どんな香りのリップを買おうか。
そんな、選ぶ楽しみも出てくる。
「働くことは、収入を得て、人生の選択肢を増やすことなんだな」と、思わされた。
なにもゴージャスな生活を求めている訳ではない。
収入が増えたとしても、きっと私は高級リップではなくこの500円のリップを買う。
以前働いていた頃と同じように。
働いて収入があれば、あらゆるモノや経験、体験を買うことができる。
そもそも、今回無職に踏み切れたのも、ある程度の貯蓄があったからこそだった。
働くことから一度離れるという、大きな選択肢を持つことができた。
この選択は、それまで働いていたから取れたものだった。
たまに旅行に行ったり、
舞台を鑑賞したり、
映画館へ行ったりすることもそれと同じ。
ドラッグストアでなく、百貨店のコスメカウンターで、私に似合う素敵なリップをBAさんに選んでもらうことも。
そういったシーンは人生の幅を広げ、思い出を彩るものだと思っている。
だから、自分の人生に選択肢を得て、納得し、後悔しないように、最低限、生活の心配が不要なくらいは収入を得たいと思った。
よりリッチになるのではなくて。
あくまで自分の生活レベルで望む
「やりたいな」
「欲しいな」
と思うことを、諦めなくていいように。
一瞬のためらいなく500円のリップを買えるように。
あ、働こう、と思うようになった。
■おわりに
就労意欲〜立志編〜(鬼滅みたいに言う)の日々がこのように過ぎ、
また働こうと思えるようになった。
もっと長い時間、無職で過ごすつもりでいた。
このような心境でまた労働意欲がわき、
しかも来月から働くことになろうとは、
意外な結末だった。
不安で落ち込んだ日も、
充分に休息をした日々も、
本当に毎日が私にとっては必要な時間だった。
何の疑問もなく働いていた人間が、
転職失敗をきっかけに働く意欲を失って、
無職の日々を過ごして、
いま改めて働きたいと思えている。
つらかった時の私に教えてあげたい。
すべて、ちゃんと経験になっているぞ、と。
私にしか歩めない日々だったぞ、と。
もちろん、メンタルや体調を崩してまで働く必要はない。
自分が壊れる働き方や職場環境を選ばないことが、とてもとても大事。
だからこそ、その後の就職活動は思うようにいかず苦労したが、(短期離職から空白期間あり30代ノースキル転職2度目の厳しさ…)
それはまたの機会に。
私の毎日の心地よい日々と、
人生をより充実させる選択肢のために。
自分が納得して自分の人生を生きることができるように。
私がもう同じことで泣かなくてもいいように。
働こうと思う。
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