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お菓子の箱の中

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しまっておく。 ほかのひとの。
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#日記

2019/3/17

昔のノートをめくっていたら谷川俊太郎さんの詩がでてきた。たしか図書館で見つけて忘れないようにと書き写したものだと思う。数年前に書いたものだから自分の字が今とは違う。自分の字なのに自分の字じゃないみたいで、なんだか変な感じがする。

久しぶりに読んだけれどやっぱり凄い。そしてここに描かれているのはきっと春の夕方の情景だと思う。春の夕方の気持ちが閉じ込められている。

このCMも春の夕方の気持ちがする

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愛をあるだけ、すべて

愛をあるだけ、すべて

2018年10月29日、子どもが産まれた。

振り返ると、とても充実した1年だった。何年後かに振り返った時に、いつの時代に戻りたいかと聞かれても、多分2018年は選ばない。軽くハイになっていたかもしれない。こんなに一年を長く感じたこともなかった。

僕は40歳くらいで死ぬと思っていた。希死念慮があるとかじゃなくて、漠然と、僕の人生がそこから先に存在していると想像できなかった。父親が四十代で突然死ん

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好きなものは誰かに伝えたくなる

好きなものは誰かに伝えたくなる

昼間の電車が好きだ。

まばらな乗客に、あたたかな日差しが差し込む車内。ほんのりとあたたまったイスに、心なしか間延びした車掌のアナウンス。こんな平和な空間にいると、ここだけ別の時間軸で進んでいるのではと、疑いたくなる。

車内は、やさしい時間がゆったりと流れ、じんわりとこもる、あたたかさが乗客の眠気をエスコートしていた。

ぼくがうつらうつらしていると、電車は駅に止まり、小さな男の子が母親と手をつ

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「ねぇねぇ」って、いいな

「ねぇねぇ」って、いいな

きれいな風景に会ったとき、ひとり占めしていたくなくて、誰かと一緒にみたくなる。きれいなままを、大好きなひとに見せたいと思い、使い慣れないカメラであれこれしたり、したくなる。

中層階のオフィス、廊下のつきあたりにある大きな窓からは、比較的低めのビル群と、すこし向こうに東京タワーが見える。冬になり、あっというまに陽が落ちていく様も。
夕暮れ時、息抜きのお茶を淹れに立ったついでに、同じ部署の子を呼びに

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ベランダのソファ

ベランダのソファ

はじめての1人暮らしは、当時でもレトロすぎた、古い木造住宅。前の住人の置き土産である黄色いソファが、2階の1Kにぽつりと残されていた。

暮らし始めた際、ソファはありがたくいただいたものの、置いたままでは布団すら敷けないので、ベランダに置くことにした。
多少広い作りのベランダではあったけれど、2人掛けソファを置いてしまえばかなりの狭さになるうえ、そこは景色もなにもあったものではなかった。向かいの一

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