IMG_3747__編集済み_

「ねぇねぇ」って、いいな

きれいな風景に会ったとき、ひとり占めしていたくなくて、誰かと一緒にみたくなる。きれいなままを、大好きなひとに見せたいと思い、使い慣れないカメラであれこれしたり、したくなる。

中層階のオフィス、廊下のつきあたりにある大きな窓からは、比較的低めのビル群と、すこし向こうに東京タワーが見える。冬になり、あっというまに陽が落ちていく様も。
夕暮れ時、息抜きのお茶を淹れに立ったついでに、同じ部署の子を呼びに行く。もしくは、誰かが呼びにきてくれる。
外がきれいだよ、の合図だ。
仕事とは関係がないから、なんとなくこそっとしながら「ねぇねぇ」と、呼んだり、呼ばれたり。そうしたらちょっとだけ手を止めて、連れだって廊下に出る。

それは、見事な夕暮れだったり、曇り空からのぞく天使のはしごのような光だったり、いつもとは違う色の東京タワーだったり、いかにも三日月っぽい三日月だったり、する。

あとで、と言っても、景色は待ってくれないし、一緒に見ようと思われることが嬉しいから、忙しくても、嫌な気持ちがしない。私たちが窓際にくっついていると、何事かと、通りかかる別の部署の人まで立ち止まってくれるので、巻き込んで一緒に眺める。
終業を控えて、それぞれがなんとなくゆるむ時間帯。窓際で、心やすい人たちと過ごす、ほんの2、3分の幸福。見慣れすぎた窓だけれど、うつりゆく空の色、雲のかたちは今しかないもの。おもてを眺めるたびに、きれいだなぁ、とその都度思う。

なにかいいものを見つけると、誰かがだれかを「ねぇねぇ」と呼びに行く。
少し内緒風情で、なんとなく得意げに、ちょっとだけ子供に戻って。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?