ヒップホップ、ジャズ、ストリートアート- Twitterの新しいブランド戦略に込められた三つの要素
Twitterが2021年にローンチしたリブランディングには、ヒップホップ、ジャズ、そしてストリートアートの三つの要素が詰め込まれています。このリブランディングでは、過去のブランド戦略を再構築し、時代と社会にあった新しいブランドアイデンティティを展開することを目的としていました。Twitterは全世界のユーザーに向けて、よりブランドの差別化と独自性を打ち出しました。
このプロジェクトには、筆者がTwitterのリブランディングプロジェクトリーダーとして関わっていました。2014年にTwitter日本支社に入社し、その後、APACマーケティングを統括するためにシンガポール支社に異動し、最終的には2019年にTwitter本社のグローバルブランド統括者に就任しました。この記事では、筆者がTwitter本社にて唯一の日本人マーケターとして率いたグローバルプロジェクトについて解説します。
まずは、ヒップホップの影響から始めましょう。ヒップホップはニューヨークのブロンクスで生まれ、50年以上にわたって世界中に広がってきました。私は2007年からTwitterを使い始め、ライムスターのB-Boyイズムに感銘を受け、仲間と一緒にTwitterとヒップホップカルチャーの共通点について話し合っていました。ツイートは、ラップの歌詞のように、様々なトピックについて自分の考えや意見を表現することができます。ヒップホップは常に現実世界を反映しており、Twitterも自分の考えや経験を表現する場を提供しています。
次に、ストリートアートの影響についてです。Twitterの元CEOであるジャック・ドーシーは、「ツイートはグラフィティだ」と述べました。Twitterは、自由でアバンギャルドな考え方を表現することができ、ストリートアートのようなものです。Twitterのプラットフォームには、多様なユーザーがおり、それぞれが自分の考えや意見を自由に表現できます。Twitterは、世界中の人々が意見を共有し、多様性と包括性を促進するための重要な場となっています。
クリエイティブディレクターのデリット・デルーエンが私にこの写真を見せて言いました。「グラフィティをそのまま表現するとダサくなりがちだけど、この光景はニューヨーク、LA、パリ、ロンドン、そして渋谷でも見られるだろ?」我々は広告的ではなく、あくまでも世界共通言語であるストリートアートにフォーカスしたデザインを目指すことにしました。この過程を、エグゼクティブクリエイティブディレクターのドナ・ラマーは「ウォーホールからバスキアへ」と呼びかけ、時に挑発的でありながらリアルなTwitter体験をブランドデザインとして表現することに成功しました。
そして、ジャズの影響について話しましょう。Twitterで行われるリアルタイムな会話は、Sun RaやPharoah Sandersなどが繰り広げるフリージャズを彷彿とさせます。ジャズには即興性、知性、そして自由な精神があります。これらをブランドデザインに注入することで、Twitterは新しいデザインを作り出しました。音楽レーベル、ブルーノートジャズが手がけた名作アルバムカバーからインスピレーションを得たブランドブルーの使用が独自の雰囲気を醸し出しています。また、デザインチームはTwitterのブランドを普遍的なアート作品となることを目指し、ブランドデザインを追求しました。
Twitterのリブランドには、文化、音楽、ファッション、アートを通じてグローバルなオーディエンスと繋がることを狙いました。ヒップホップ、ジャズ、ストリートアートの要素を取り入れることで、ユーザーの感情に直接訴えかけ、Real, Straightforward, Unfiltered(ブランドを定義した三つの言葉については次回説明します)のブランドパーソナリティを反映したブランドデザインが完成しました。
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