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古事記「八咫の鏡」(やたかがみ)をよむ

「絵本」が売れる~本が売れない時代に

なら、出版社全部は「絵本屋」になればいい? なんて屁理屈はいってはなりませんが、何がいいのか判らない時代に、それぞれ皆さん腐心されておられるようです。

ですから、そのガーシーが話題になったりしますが、その近くにいたであろう「ゴーン」(レバノン)なんかは、見向きもしないと云うのは、やっぱり賞味期限切れ、なんでしょう。だから目下「ガーシー」なのです。

じゃ社会とか世間の皆さんは、何を対象にしてその事件に注目するのでしょうか、といったらやはり「非日常性的」なこと、に対して興味を持つ、そんなことだと思います。

まあ少し前の「ぺろぺろ回転スシ事件」ではその少年側に巨額賠償金請求6700万円が出され、泣いて詫びた、そうですが、それで済むらな法律いらん、という話しです。

それとは対照的な満面笑み「バルマン」男は、あの手この手で1億円を稼いだと当局がガサ入れを始めた。(アパレル会社「QALB」社長でもある)

■文字通りガーシー一色の様相だった。民放プロデューサーに聞いてみると、「各局の情報番組は、軒並み数字を落としました。所詮、ガーシーは数字を持っている男でも、数字が取れるネタでもなかったということです」
 逮捕後に放送された民放各局の報道番組と視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯)を見てみよう。
●「真相報道 バンキシャ!」(日本テレビ、18:00~18:55)11・5%
●「サンデーステーション」(テレビ朝日、21:00~22:00)10・2%
●「Mr.サンデー」(フジテレビ、22:00~23:15)9・6%
 2023/6/7(水) 11:02配信 デイリー新潮
インターネットに投稿した数十人の一部から、警視庁捜査2課が任意で事情聴取したことが9日、捜査関係者への取材で分かった。うち複数人は「容疑者側と、切り抜き動画による収入の5割を支払う約束をした」と話したという。[2023年6月9日23時14分] 日刊スポーツ

など、昨今メディアが大騒ぎしている訳は、それだったんですね。それで判ったのは、YouTubeから得た広告巨額ロイヤリティーは、そんなふうにしてにして姑息に稼いだ(違反しない?)金、今頃仮想通貨に化けているかもしれない。そうなると当局の追及も難しい(それが目的)。

そうした一連の事件中身が暴露されると、成田空港の「作り笑い」が判ったような気がします。ですが、その犯罪まがいの手練手管は、素人さんには、まったく違う世界だし、そんなことを見越して「世間のアホ」と本人は見下していたのでしよう。

で世間は、その「知らない世界」を知ろうとするわけですから、メディが、こぞって報道するわけです。云ってみれば「勧善懲悪」系がはっきりしていて、その巨悪が誰かと云うのは、歴然と判っていて、当人もそれを承知で嘲笑する、そんなことじゃないでしょうか。

その反対のケースを被ったのが私個人の問題で、先日の「記事配信停止処分」の件でした。
何回も云いますが、何回も云わないと気が済まないし、やったほうも何回も、それを出されたらヤバい、と思うでしょう。だからしばらく、これを出します。

■利用規約にて禁止している「盗作、剽窃など、他者の著作権等を侵害しているもの」と受け取られる内容を確認したため公開を停止しました。対象の記事(The Lost Weekend : A Love Story)は先にて「公開停止中」と表示されました。

それを受け取ってから、すぐに記事削除したので大事には至ってません。が、過去にも同様(ライフドアブログ)で、イエローカードされたので、やはり削除しました。

まあ丸写し、ですから著作権侵害に違いありませんが、としても出典のURLは明記してあるし、本文はその場で直ぐ確認できるようにしてあります。また、それをコピペして荒稼ぎするなんて毛頭思わないし、反対に該当記事アピールのつもりもあります。云ってみれば「恩」がアダに変換された典型例です。

そんなことで、記事にするにしても毎日の平凡な日々日記では、読者もつまらないし、書く方にしてもネタが切れる。そこの狭間です。

そのガーシーが何者なのかは知る由もありませんが、とっかかりが参院選でしたから、選挙の話し、しますが私の経験で云ったら、選挙は「有象無象」の世界で、「人間心理」を読むのに最も適している。(当事者の心理)

その頂点が自民党で、そこに群がる野党一群です。いや政策云々のはなしではなく、人間ネゴシエーションの駆け引きです。
超、簡単に解剖すれば勝つのにどれくらいの「金」がいるかというはなし。選挙投票は基本ですから、投票で決しますが、投票所で記名する「名」、その一票にタグが付いている。なにかといったら、その重さを計る目に見えない金銭タグです。その最終ゴールの重さによって権利が決定する。これほど判りやしくて、安易な方法はない。それを投票有権者は、素知らぬ顔をして投票結果を語るわけですから、民主主義とは改めて、すごいシステムだと認識するのです。(自民党統一教会、公明党創価学会などの集票マシンも同様)
個人的には2024年5月に一宮町長選挙(未定)がありますが、すでに準備期間ですから、手はずは整える必要があります。供託金50万円、まずそれを用意するのが先決です。

そんなことで、記事は、エキサイトでないと人は読まないし、書き手にしても、タダのコピーでは力も入らない。だから多少のデフォルメがあったにせよ、実体験のバックボーンがないと信憑性が生まれない。その点、ガーシー記事は、今風評価の百点満点、特に熱心なSNSメディアは、ことのほか力が入っている、ように見えます。(さて、当局ガサ入れは仮想通貨マネロンに手が延びるか)

古事記「八咫の鏡」 神楽「八咫宝鏡」

『古事記』では、高天原の八百万の神々が天の安河に集まって、川上の堅石(かたしは)を金敷にして、金山の鉄を用いて作らせた」と記されている。(■その高天原は、大國さまとして親しまれる祭神「大国主命」として神話「因幡の白兎」でも知られている二千年来の古刹である。また岩見銀山採掘場として古くより多種鉱材が産出した。特に猛毒砒素など採掘していたという記録があり、また毒素公害問題の発祥地としても全国に知られた)


一般に「八咫(やた)」は「八十萬神」「八尋大熊鰐」「八咫烏」等と同様、単に大きい・多いという形容であり具体的な数値ではない、とされているが、咫(あた)を円周の単位と考えて径1尺の円の円周を4咫(0.8尺×4)として「八咫鏡は直径2尺(46センチメートル (cm) 前後)、円周約147cmの円鏡を意味する」という説も存在する。

後漢の学者・許慎の『説文解字』には、咫、中婦人手長八寸謂之咫、周尺也 (咫、ふつうの婦人の手の長さ八寸で、これを咫という、周尺なり)とあり、戦国~後漢初期の尺では一寸2.31cm×8寸×8咫=約147cmとなる。

平原遺跡出土の「大型内行花文鏡(内行花文八葉鏡)」は直径46.5cm、円周は46.5×3.14 = 146.01cmであり、弥生時代後期から晩期にこのサイズの鏡が存在したことは確かとなった(考古遺物の節を参照)が、現存する桶代(御神体の入れ物)の大きさから推察される神器の鏡はもっと小さい。
いずれにせよ、その特大の大きさから、後に三種の神器の一つである鏡を指す固有名詞になったと考えられている。
伊勢神宮の八咫鏡天照大御神の「御神体」としての「八咫鏡」は神宮の内宮に奉安されている。
神道五部書や類聚神祗本源等によれば、この「八咫鏡」の見分記録には「八頭花崎八葉形也」、「八葉中有方円五位象、是天照大神御霊鏡座也」とある。この「八咫鏡」は、明治初年に明治天皇が天覧した後、あらためて内宮の奥深くに奉納安置されたことになっている。

この「神宮の八咫鏡」の「最初の姿と大きさ」は、考古学者原田大六によれば、福岡県糸島市にある「平原遺跡出土の大型内行花文鏡(内行花文八葉鏡)と、同じ形状で同じ大きさのものではなかったか」と考察して、それを著書に記している。これは『延喜式』伊勢大神宮式、『皇太神宮儀式帳』において、鏡を入れる桶代の内径が「一尺六寸三分」(約49cm)としており、46.5cmの大型内行花文鏡を納めるにはちょうど良い大きさであることから。
原田によれば「御鎮座伝記を読み解いてみると、約三回ほど内宮の火災があり、このいずれかに焼失してしまい(一度だけとは限らないかも、とも)、その時に新たに作り直された八咫鏡は、現在に残る桶代(御神体の入れ物)の大きさから推定して、直径46.5cmの大きさではなくなっている」という。

また、「図象も実際に見て模写するべくもないであろうから、これも変化しているだろう」という。
宮中賢所の八咫鏡皇居の八咫鏡は、賢所に奉置されていたことから、その鏡を指して賢所(かしこどころ)ともいう。そのため、あえて賢所のことをいう場合にはこれを「けんしょ」と呼ぶか、またはその通称である「内侍所」といって、これを言い分けたという。しかし後世になると内侍所も神鏡のことを指す言葉となった。

内侍所の神鏡は天徳4年(960年)、天元3年(980年)[4]、寛弘2年(1005年)に起こった内裏の火災により焼損している。天元の際に半ばが焼失し、鏡の形をとどめないものとなった。寛弘の際には、ほとんど灰になってしまい、やむなく灰の状態のまま保管した。このため直後から鏡を改鋳する議論が持ち上がり、諸道に勘文を提出させた。翌寛弘3年7月には一条天皇御前で公卿会議が行われ、左大臣藤原道長が改鋳を支持したものの、公卿の大半が反対したため改鋳は行われなかった。

平安時代末期、平家の都落ちとともに西遷し、寿永4年3月24日(1185年4月25日)、壇ノ浦の戦いの際に安徳天皇とともに海中に沈み、それを源義経が八尺瓊勾玉とともに回収したものが今日も賢所に置かれている。

室町時代の嘉吉3年9月23日(1443年10月16日)に起こった禁闕の変で、後南朝勢力が宮中を襲撃した際、三種の神器をのうち宝剣と神璽は奪われたが、神鏡のみは難を逃れ、翌日近衛殿に移された。
宗像大社邊津宮の八咫鏡筑前国風土記は現存しないが、逸文に明確に記述される。古代の記録では八咫鏡を依代とするのは、神社では伊勢神宮と宗像大社邊津宮だけであるとされる。
神話記紀神話によれば、天照大御神の岩戸隠れの際に天津麻羅と伊斯許理度売命が作ったとされ、『日本書紀』には天照大神を象って作られたことや、試しに日像鏡や日矛を鋳造したことが伝わる。天宇受売命が踊り狂い、神々が大笑いすることを不審に思った天照大御神が岩戸を細めに開けた時、この鏡で天照大御神自身を映して、興味を持たせ、天手力男神によって外に引き出した。そして再び高天原と葦原中国は明るくなった、という。

天孫降臨の際、天照大御神から邇邇芸命に授けられ、この鏡を天照大御神自身だと思って祀るようにとの神勅(宝鏡奉斎の神勅)が下された、という。
考古遺物福岡県糸島市にある遺跡「平原遺跡」において出土した国宝に指定されている直径46.5cmの大型内行花文鏡(内行花文八葉鏡)4面(後に5面に修正)は原田大六によると八咫鏡そのものという。
この「大型内行花文鏡」は、図象のみの大型の青銅鏡である。つまり、文字や神獣などの図柄は無い。 また、『御鎮座伝記』に「八咫鏡」の形は「八頭花崎八葉形也」とあり、この「八頭花崎八葉形也」の図象を持つ考古遺物は現在のところ、この「大型内行花文鏡」のみである。

この鏡のうち4面は伊都国歴史博物館で、また1面は九州国立博物館で常時展示されており、実物を見ることができる。

千葉一宮上総国 玉前神社伝 
鎌倉幕府を創建して老中職にあった時、一宮の玉前神社へ頼朝の武運 永禄五年八月里見義頼は、 八咫宝鏡(やたほうきと呼ぶ) ... 装束=赤毛に角形の半天白毛に白の伴天. 等。玉前神社神楽 長生郡一宮町宮台(玉前神社)

上総神楽保存会 玉前神社の神楽奉納の記録は、天保九年(一八三八)成立の「社用録」に、宝永七年(一七一〇)に神楽殿で土師(はじ)流の御神楽が奉納されたとあるのが最初である。

神楽は代々五軒の社家を中心に伝授され、現在では氏子十三名が、上総神楽保存会を組織し継承しています。 神楽は、神社の春・秋の例大祭を含め年七回演じられます。
明治期の記録では、三十六の演目から成っていた ようですが、今は次の十六座を伝えています。「加茂明神概(かもみょうじん)」「天狐乱舞(てんこらんぶ)」「八咫宝鏡(やたほうき)」「種蒔(たねまき)」「両神和合(りょうじんわごう)」「龍神舞楽(りゅうじんぶがく」「悪魔降伏(あくまこうふく)」「磐戸少開(いわとしょうかい)」「蛭子(ひるこ)」「猿田彦舞(さるたひこまい)」「剣玉(けんぎょく)」「神剣貢(しんけんのみつぎ)」「風神安鎮(ふうじんあんちん)」「戸隠(とがくし)」「千能里(ちのり)」「大山祇神」です。春季祭では「種蒔」が、
秋季祭では「猿田彦舞」が必ず最初の演目となっており、平素は「八咫宝鏡」に始まり、「大山祇神(おおやまずみ)」で終えます。面は総数二十三面あり、装束・楽器は氏子らの奉納によって伝えられています。
「房総の祭りと技」 千葉県文化財保護協会発行
平成六年四月二十八日 記事

画像 玉前神社 神楽「八咫宝鏡」


自画FILE



玉前神社神楽


船橋 二宮神社


玉前神社 神楽


昭和17年9月 コロンビア記録


2023年06月10日記事

誰が買うのか 絵本が売れている?

少子化なのに「絵本」市場は拡大の知られざる裏側
大人を意識した絵本も登場 「新規参入も続々」
吉田 理栄子 : ライター/エディター 東洋経済 2023/06/09 5:00

出版不況と言われて久しいが、絵本が売れている。
コロナ禍の影響で、学習参考書など子ども関連書籍の売れ行きが好調となったのは想像にかたくないが、それはすでに落ち着きを見せ、もはや過去の話となった。
一方で、コロナ特需が終わっても「絵本」の人気は衰えていないという。書店を訪れてみると、児童書や絵本コーナーは充実していて、活気を感じるほどだ。

子ども4人を東大理三に合格させた佐藤ママが「3歳までに1万冊読み聞かせた」という話に象徴されるように、近年、読み聞かせは幼児教育でもより重要視される傾向にあり、知育の文脈で語られることが増えた。

絵本人気が続く理由はどこにあるのか? その背景を探った。

出版業界は右肩下がりでも絵本はじわり拡大

出版業界の売り上げは1996年をピークに右肩下がりとなっている。書籍に限ってみても、推定販売金額は1996年の1兆0931億円から2022年には6497億円(『季刊 出版指標2023年春号』)まで減少している。

しかし、そんな市場下においてこの10年、じわじわ市場が拡大しているのが児童書だ。

2013年に770億円(うち絵本は294億円)だった児童書の売り上げは、このコロナ禍前後の2019年が880億円(うち絵本は312億円)、2020年が930億円(同330億円)、2021年が967億円(同353億円)と増加傾向で(『出版指標 年報2022年版』)。なかでも、絵本はコロナ特需終了後も堅調さを保っているという。

出版不況、少子化にもかかわらず、絵本コーナーを拡大する書店が増えている。写真は代官山 蔦屋書店(撮影:佐々木仁)

出版流通を担う取次会社トーハンの書籍部アシスタントマネージャー河上昌司さんによると、

「当社お取引書店のPOS売り上げでは児童書全体の売上はコロナ前の2019年(4~3月)と比べ、2020年は99.1%、2021年は102.8%、2022年はコロナ禍の反動もあってか95.2%とやや減少傾向だが、児童書のなかでも創作絵本はこの3年間ずっと2019年比100%を超えており、2022年は115.8%を記録している」

子どもの出生数は、2016年に初めて100万人を割り込み、2022年はついに80万人を下回った。少子化に歯止めはかかっていないにもかかわらず、絵本が好調な理由はどこにあるのだろうか?

絵本はもともと既刊の占有率が高いジャンルだ。

トーハンのデータによると、新作ではない既刊本のPOS売り上げの割合は文芸系37.4%、生活系65.9%、趣味実用60.2%だが、2022年の児童書の既刊本は78%、絵本だけに限ると83.3%とほかのジャンルに比べて既刊本の割合が格段に高い。

しかし、「実は10年前の児童書は既刊の占有率が92%、新刊は8%程度だった。それがこの10年で新刊本の割合が大きく伸びている」と河上さん。

点数自体は若干増えているものの、ほぼ横ばいという状況下において、「ヒット作が生まれ、ロングセラー作品も引き続き売れている。この10年で児童書に参入する出版社も増え、書店では店舗リニューアル時に棚を広げて注力しているところも多い」(河上さん)と言う。

100万部以上売れた絵本

トーハンでは2006年から、累計100万部以上売れた絵本を「ミリオンぶっく」としてまとめ、広く発信する取り組みを行っているが、735万部と日本で最も売れている絵本『いない いない ばあ』(文・松谷みよ子、絵・瀬川康男/童心社/1967年刊)を筆頭に、今年で誕生60周年を迎え、シリーズ合計2150万部を超える『ぐりとぐら』(551万部/文・なかがわりえこ、絵・おおむらゆりこ/福音館書店/1967年刊)。

(注)発行部数は2022年12月末時点。対象年齢は目安

(出所)「ミリオンぶっく2023」を基に東洋経済作成

発売から47年を経てミリオンを達成した『おばけのてんぷら』(作・絵・せなけいこ/ポプラ社/1976年)など100万部以上を売り上げる130点が、絵本の売り上げの10%超を占めている。それほど、ロングセラー作品の底力は大きい。そして「基本的に、絵本は読者と購入者が違う」ということも、他のジャンルの本との大きな違いだ。読み手は子どもだが、購入するのは親などの大人たち。たとえ子どもが欲しがった本だとしても、最終的に購入に至るかどうか判断するのは多くの場合子ども本人ではない。

その点は出版社も理解しており、近年は大人も意識した絵本も増えている。それが出版不況下でも新たなヒット作を生み出す背景にもなっているのだ。

例えば、2023年上半期ベストセラー児童書ジャンルの1位の『大ピンチずかん』(小学館)や、3位に一挙4作品ランクインした『パンどろぼう』シリーズ(KADOKAWA)などは、オチがしっかりしていて、大人が読んでも納得感がある。

2022年最大のヒット作『大ピンチずかん』。子どもが日常で出合う大ピンチをユーモアいっぱいに描いている。大人も「あるある」と思わず笑ってしまう納得の1冊(撮影:佐々木仁)

「絵本の内容が世相に合っていて、コミカルで、本離れした人にも読みやすい。『パンどろぼう』シリーズは、大人も子どもも楽しんでおり、グッズも売れている。出版社もシリーズ化、続編投入のスパンを短くして、店頭でのプロモーション展開など広げている印象がある。また、1冊1冊に時間をかけてつくる出版社もある。そこが絵本のおもしろさであり、奥深さだろう」(河上さん)

店内の雑誌や書籍の選書、取り扱い雑貨、企画イベントなど、書店の存在そのものが情報感度の高い大人たちの情報発信基地のようなイメージが強い代官山 蔦屋書店でも絵本の売り上げは好調だ。

そもそも代官山 蔦屋書店がオープンした2011年当初は、「キッズ」というジャンルはなかった。それが顧客の声を受け、フロアをどんどん拡大。オープン時は人文ジャンルの1コーナーにすぎなかった絵本コーナーが、今では1号館の2階スペースの半分以上を占めるほどになった。

代官山 蔦屋書店の絵本コーナーは1号館の2階の半分以上のスペースを占める。担当者の目利きと思いの詰まった選書や企画フェアなどの棚は、見ているだけで楽しい(撮影:佐々木仁)

大人向け、子ども向けの絵本イベントも随時行っており、2022年秋には「えほん博」を大々的に開催。絵本作家らによるサイン会や新日本フィルハーモニー交響楽団メンバーとアナウンサー堀井美香さんによる朗読演奏会、絵本作家 五味太郎さんのトークイベントなど、まさに”絵本のお祭り”で、イベントはすべて満席と大盛況だったという。

えほん博の担当者で、代官山 蔦屋書店キッズコンシェルジュの瀬野尾真紀さんは、絵本そのものの特性をこう説明する。

「ほかのジャンルに比べ、絵本の売り上げが下がりにくいのは、紙である必要性があるから。絵本はページをめくる動作自体が意外に大事。大人の本はめくる時にそれまでの文章を覚えていて次のページに進んでいくが、絵本は文章も切れて、絵も変わる。めくることで場面転換が起こるプロダクト。これらは電子書籍では賄いきれない」

作り手の裾野も広がる

その絵本の魅力は、読者だけではなく作り手の裾野も広げている。

「絵本は、色、形、紙の質など表現の幅が広く、決まった表現がないため、クリエーターにとって魅力的なジャンル。この10年くらいでさまざまな分野のクリエーターたちが絵本を出すようになった。そういう人たちが絵本を出すことで、読者層も広がっている」(瀬野尾さん)

作り手がターゲットを子どもに絞っていなかったり、内容も子ども向きの単純明快なものではなかったりすることもあり、大人にも受けている。その代表格が画家junaidaさんの絵本だ。

緻密で圧倒的な画力の美しい絵と、想像力を掻き立てる展開は、何度も目を凝らして読み返したくなる。三越クリスマスのメインビジュアルや「ほぼ日手帳」にも作品を提供し、ボローニャ国際絵本原画展で入選した実力派だ。

実際「大人絵本」と冠をつけて売った書店もあるようだが、いざ販売してみたら、大人も子どもも関係なくファンがついた。もはや絵本は、対象年齢は問わずファンを開拓しているのだ。

絵本コーナーの一角にあるjunaidaさんのコーナー。大人も子どもも、性別も、関係なく楽しめる世界観で新しい絵本の需要を切り拓いた(撮影:佐々木仁)

ほかにも、写真家の若木信吾さんが立ち上げた若芽舎からは有名クリエーターたちの絵本を出版。代官山 蔦屋書店で2月に最も売れた赤ちゃん絵本『やぎさんのさんぽ』『どこどこ?ねどこ』は刺繍作家junoさんによるもの。出版社は老舗の福音館書店だ。7月には葉っぱ切り絵アーティストのリトさん初の絵本『まねっこカメレオン』(講談社)が出る。

また、専門書や参考書を発行する化学同人も絵本ジャンルに参入していたり、新潮社も今年6月にNHK Eテレの人気番組の絵本を発売。同社としては約70年ぶりの絵本出版となるなど、出版社や作者もバラエティ豊かになっている。

代官山 蔦屋書店ではjunoさんの刺繍絵本とともに、刺繍をあしらった作品も販売し、大人気企画となった(すでに会期は終了)(撮影:佐々木仁)

絵本業界の活況の裏には、各出版社が新たなクリエーターを発掘する絶え間ない努力をし、絵本作家のデビューの間口を広げる絵本賞などが増えたことも起因しているようだ。

このような絵本の好循環を作っているのは、出版社側の取り組みだけではない。

全国出版協会出版科学研究所常務理事、出版科学研究所所長の加藤真由美さんによると、「自治体とコラボして2000年から始まった『ブックスタート』が根付いてきたことも大きい」と言う。
以下割愛




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