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梅.1 九州豪雨の一夜、排水口で耐えた命(前編)

2020年 6月末から現在(7月14日)迄、延々と続く大雨。

特に九州地方は、連日、河川の氾濫が多発するほどの豪雨、まるで水の中で生活しているようだった。

実際、自宅のある大村市では川が決壊して、日頃往来している馴染みの国道に濁流が流れ込み、立ち往生していた車が10台程浮かぶ、ショッキングな映像が全国放送に流れるほど、緊迫した日々が続いていた。


7月9日 木曜日、この日は福岡県大川市にて開催された家具の展示会に出張していた。

この展示会は例年、1月、3月、7月、10月と年4回開催されるが、今年は、イベント自粛の影響により 3月は中止、そして今回 7月も河川氾濫や土砂災害により開催が危ぶまれていたが、前日、梅雨前線が南下して、久しぶりの青空が観られた。

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この日も午後には大雨をもたらす雨雲迫っており、午前中のみ見学で切り上げ、お昼過ぎには早々に会場を後にした。

長崎道に乗った途端、時速 80キロの速度規制、また、その速度ですら危険を感じるほどの豪雨中のドライブとなった。

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無事、自宅には 4時頃到着出来たが疲れてしまい、夕食も取らずに寝てしまった。

気付くと 21時、近所のスーパーはまだ営業時間している。

幸い雨も一時的に止んでいたので、食料調達で外に出た。

家を出ると、対面4車線の国道の歩道をしばらく歩く。

すると、対面の歩道あたりから、仔猫の必死な鳴き声が続いている事に気が付いた。

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道路を渡り、最初は宅地側の茂みに探した。

猫は、人の気配を感じると鳴くのを止める。

こちらも気配を消し、しばし佇む。

数十秒後、また鳴き声が聴こえて来たが、その方向に困惑した。

鳴き声は、宅地側ではなく、猛スピードで車列が通過している道路側から聞こえていたのだ。

最初、何が起こっているのかイメージできず頭が混乱した。

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冷静に考えれば、アスファルトの下から声が聴こえてくる訳が無い。
考えられるのは排水口だ。
車の通行が途絶える間隙を定め、歩道側から身を屈め iPhoneのカメラを排水口に向けて撮影した。
その写真には、信じられ無い光景が写っていた。

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この 15年あまり、10匹ほどの仔猫と出会い、保護した経験はある。

◯ 当家の猫の家系図(アイシスとジェリー以外は,保護後、里親募集)

それ故、この状況を見れば、直ぐに助けられるのか絶望的なのかは、概ね判断できる。

その時点では、あまり良い状況とは思えず、また切迫して厄介な状況に直面したと鳥肌が立った。

まず、iPhoneの降雨レーダーアプリで次の雨雲の到来時刻をチェック。

一晩中、豪雨をもたらす降水帯が 30分後に迫っていた。

急ぎ、自宅に舞い戻り、奥さんに状況を告げ、怪我の防護のため、長袖Tシャツに着替え、軍手、ペットキャリー、そして、キャットフードを一掴みして現場に戻った。

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排水溝の口にキャットフードを投げ込み、数分、仔猫の反応を観たが、疲労困憊しているのか、出て来る気配は無かった。

野良猫を救出する際に、動けなくなっているか、または警戒心が無く寄ってくる場合以外は、地元の動物救済のボランティアさんを探して捕獲器を貸していただき、じっくり時間を掛け捕獲すると言うのが通常の方法。

手で掴むと言う選択は、人にとっても、猫にとっても大変危険であり、通常は選択しない。

警戒している仔猫にとって人の手は、命を狙い襲ってくるカラスの口ばしや犬の牙等と同じであり、決死の覚悟で戦ってくる。

左は、15年前、初めて仔猫を素手で捕獲しようとして取り逃がした際の傷。

右は、今回、軍手をはめていても受けてしまったダメージ。

馬鹿でも、痛い目に合えば学習し、その経験は今回も生きた。

野良猫は爪を切ることが無いので、仔猫であっても鋭利な刃物だ。

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より強力な工場作業用の皮手袋も用意していたのだが、やはり固く柔軟に手を動かす事が難しいため、今回は軍手を選択した。

豪雨が迫っており時間が無い。

しょうがないと軍手をはめ、勝負を掛ける決断をした。

深夜の国道、帰宅を急ぐ車は、皆 60キロ以上で絶え間なく向かってくるが、300メートル程離れた地点の信号が赤になれば、数十秒車列が途絶える。

その間隙を縫い、道路にしゃがみ込み手を伸ばした。

しかし、案の定、穴の奥から「シャー」と言う勇ましい威嚇の声を出し逃げるため捕まえる事が出来ない。

信号が青になり、次の車列が迫るため、一旦歩道に退避。

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そこで、ふと気になったのが、この排水溝の構造だ。

先程、肘まで手を突っ込んだ。しかしながら、まだ奥まで続いている事を感じた。つまり、排水溝は横穴で、自分が立っている歩道の下には濁流流れる下水溝がある。

無暗に手を突っ込み続ければ、この子は排水溝の奥に逃げ、その果てに下水溝に落ちてしまう可能性がる。

逆にこちらに向かってきた場合、最悪、車線に飛び出し車に引かれる可能性もある。

そう考えているうちに、ポツポツ雨が降り出した。

この暗闇、激しい交通量、そして豪雨、その中で救出出来る自信が無かった。

今夜も膨大な量の雨が降る、引っ切り無しに通過する車たちは、容赦なく汚水を排水溝側に放つ

下水溝に流されはしないか、体温が下がり死んでしまわないか?

果たしてこの子は、一晩、この過酷な状況に耐えてくれるだろうか?

不安を胸に、この日は帰宅する選択しか無かった。

後編)に続く。

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保護猫の食費・治療費に使用させていただきます。