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【孫からのカミングアウト~祖父母世代はどう受け止めるのか~】ふむふむインタビュー#02

みなさん、こんにちは。
"ちがい"をたのしむ「ふむふむ」です^^

ふむふむインタビューシリーズは、人と人との”ちがい”にまつわる体験をお持ちの方に、ふむふむスタッフが直接お話を伺い、記事としてまとめたものです。

ふむふむインタビュー#01に引き続き、今回もLGBTQIA+の当事者を「支える側」の方にインタビューさせていただきました。
(ふむふむインタビュー#01はこちら↓↓↓)

今回お話を伺ったのは、女性の身体で生まれ、性自認が男性という「T(トランスジェンダー)」のお孫さんがいらっしゃる”おばあちゃん”【メアリー】さんです。

【メアリー】さんは昭和12年生まれ。
もちろん、「LGBTQIA+」という単語はまだありませんでした。
平成の半ば、まだまだ多様性の理解が進んでいなかった頃に、お孫さんが「男の子だ」と聞かされた【メアリー】さん。

果たして、おじいちゃん・おばあちゃん世代はどう受け止めるのか?

それではインタビュースタートです!
※インタビュアー【Yuko】、ゲスト【メアリー】


実は「男の子」だった?突然のカミングアウトに”おばあちゃん”は…?

【Yuko】
改めまして、よろしくお願いします。

【メアリー】
よろしくお願いします。

【Yuko】
いきなりですが、お孫さんが実は「男の子」だという話はいつ知りましたか?

【メアリー】
孫が高校3年生のときか、高校を卒業したぐらいのタイミングで知りました。

【Yuko】
どなたから話を聞きましたか?

【メアリー】
孫の母親(メアリーさんの長女)から聞きました。

【Yuko】
お孫さんから直接ではなく、お孫さんのお母さんから聞かれたのですね。
お話を聞かれたとき、率直にどのように感じましたか?

【メアリー】
ただただびっくりしましたね。
例えば病気だったら「原因は何か?」「何が悪かったのか?」など考えることもあると思いますが、この件に関しては理由を考えるようなことでもないし、遺伝性のものでもないし…
本当に、ただもう驚いたというのが正直なところです。

【Yuko】
お話を聞かれた当時、トランスジェンダーに関する知識はありましたか?

【メアリー】
なかったですね。

【Yuko】
例えば、カルーセル麻紀さん(昭和17年生まれ)はご存じでしたか?

【メアリー】
その方は知っていました。

【Yuko】
そういう方と”同じ”という感覚でしたか?

【メアリー】
そうでもなかったですね。
もう本当に、ただただ驚いたというだけでした。

【Yuko】
そうでしたか。それはそれは大変な驚きだったのですね。
その話を聞いてから、お孫さんにはどのくらい後で会いましたか?

【メアリー】
それほど期間は空いていなかったように思う…。
最長でも半年以内には会ったと記憶しています。

【Yuko】
実際にお孫さんに会ったときの接し方などに変化はありましたか?

【メアリー】
結構割り切っていたと思います。
誰のせいでもないし、誰かを恨むような話でもない。
それはそれとして、ただ本人がしたいようにするのが一番だと思っていました。
神様がそのように作られたのだから、私たちがとやかくうことでもない。
本人の思うとおりに、人生を切り拓いてほしいと思ったし、幸せに生涯を送ってくれたら良いと思っていました。

【Yuko】
メアリーさんのご友人やお知り合いにお孫さんの話をすることはありましたか?

【メアリー】
いや、なかったですね。

【Yuko】
同世代の方々からの心配のお声などはありませんでしたか?

【メアリー】
類は友を呼ぶので、基本的に同じような考えや価値観を持っている人たちと懇意にしていました。
実際に周囲の人に孫の話をしたかは覚えていませんが、仮に話をしたとしても、やはり「本人さえよければ…」という話になっていたのではないかと思います。

【Yuko】
では、おじいちゃん(メアリーさんの夫)はお孫さんのことをいつ知りましたか?

【メアリー】
私が聞いた少し後に孫の母親から聞いていました。
そのとき、孫が買ったという「性同一性障害」に関する入門書を一緒に渡されていました。
おじいちゃんはその本を読んでいましたが、リアクションとしては私と同じような感覚だったと思います。

【Yuko】
おじいちゃんとお孫さんの性別に関する話をしたことはありますか?

【メアリー】
それはないですね。

【Yuko】
メアリーさんにとっても、おじいちゃんにとっても驚きはしたものの、特に抵抗のようなものはなく、自然に受け止めていらっしゃったという感じなのですね。


診断書、ホルモン注射…変わりゆく孫への想い

【Yuko】
お孫さんが「性同一性障害」の診断を受けて、ホルモン注射をはじめて、…というように少しずつ見た目にも変化が表れてきたと思いますが、その過程でメアリーさんの中で何か変化が起きたり、お孫さんへの接し方で変わったことなどはありますか?

【メアリー】
特になかったですね。
病院には孫の母親と叔母(母親の妹、メアリーさんの次女)が付き添っていたので、心配はしなかったし、私もおじいちゃんもありのままの現実を受け入れるタイプの人でした。
孫は数か月に一度病院に行っていたようですが、病院の行き帰りによく会っていました。一緒に食事をすることも多く、孫からいろいろな話を聞いていたので、それが良かったのかもしれません。定期的に会っていたからこそ、接し方で戸惑いが出てくるようなこともありませんでしたね。

【Yuko】
お孫さんが治療をはじめたことによる、見た目の変化に驚きはなかったですか?

【メアリー】
驚きはなかったです。
治療をしているのだから当然だなくらいで(笑)
確かに、孫は小さい頃から何となく男の子に憧れている感じもあったので。
女の子用ではなく、戦闘機やお城が作れるようなレゴを欲しがったり、おじいちゃんが新聞紙で作った兜をかぶりたがったりしていましたね。

【Yuko】
お孫さんが「ホルモン治療をはじめたい」と言ったとき、母親に止められたそうですね。その際、メアリーさんも止めたというお話を伺ったのですが、止めたことは覚えていらっしゃいますか?

【メアリー】
覚えています。

【Yuko】
それまではさまざまなことを受け入れておられたのに、なぜホルモン治療については止められたのですか?

【メアリー】
詳しいことまでは覚えていませんが、当時の孫は年齢的にも突っ走ってしまう時期でした。
先走りすぎるのはよくないし、後々になって後悔してほしくないという思いがあって止めたのではないかなと思います。
少し考える時間があっても大きな影響はない、一度初めてしまうと後戻りできないので、慌てずにしっかり考えてからで良いのではないか?というような意味で言ったと思います。

【Yuko】
今振り返ってみても、やはり同じ思いですか?

【メアリー】
そう思っている期間の長短は別として、誰でもいったんはそう思うのではないかなと思います。

【Yuko】
では、お孫さんが胸を取りたいと言ったときはいかがでしたか?

【メアリー】
そこまできたら、もう自分の思うようにしてほしいと思いましたね。
私たちが横から口をはさむようなことではないと思っていました。

【Yuko】
では、ホルモン治療を始めて、胸を取って、見た目にも大きく変化が見られた後でも接し方などで困ったことはなかったのですか?

【メアリー】
そうですね。まったくありませんでした。


【メアリー】さん流”子育て論”

【Yuko】
先ほど、お孫さんは小さい頃から誕生日に”男の子っぽい”おもちゃをねだり、ズボンを好んではいていたというお話がありましたが、その時点で疑問に思うことはありませんでしたか?

【メアリー】
(孫からみて)伯父(メアリーさんの長男)は小さい頃、女の子とばかり遊んでいました。ままごとがとても器用にできる子でしたね。
あと、(孫からみて)母親はクリスマスのとき、サンタさんに『刀』のプレゼントを頼んでいました。
そういうこともあったので、孫に対してもあまり違和感はありませんでした。

【Yuko】
メアリーさんから見て、お子さんの段階で違和感はありませんでしたか?

【メアリー】
昔、(孫からみて)伯父が友だちに手をあげて泣かしたことがあるんです。そのとき、当時のママ友は「○○くん(伯父の名前)、手を挙げて泣かしていたよ。やっぱり男の子だね~。」とニコニコしてくれていました。
当時、子どもたちは男女分け隔てなく仲良くなっていましたし、お誕生日会にも普段からあまり遊んでいない子供たちも含めて、男女分け隔てなく招待していたということもありますし、やはりあまり違和感はなかったですね。

【Yuko】
性別の差が出てくるような年齢になった段階でも、お孫さんにいわゆる”女の子らしさ”がなくても違和感はなかったですか?

【メアリー】
何もなかったですね。
本人が楽しく遊ぶことができていれば、それで良いと思っていました。

【Yuko】
では、お孫さんが名前を変えられたとき、どのように感じましたか?

【メアリー】
もうちょっとおしゃれな名前にすれば良いのにと思いました(笑)

【Yuko】
お孫さんが彼女を連れて来られたときはどうでしたか?

【メアリー】
友だちを連れてきたという感じでしたね(笑)

【Yuko】
奥さんを連れてきたときはいかがでしたか?

【メアリー】
もうだいぶ”おっさん”だし、「良いんじゃない?」と思いました。
何よりも、孫が幸せそうで良かったなと思いましたね。

【Yuko】
今とは随分時代背景や人々の考え方も異なっていたところもあると思いますが、一貫してメアリーさんは柔軟にお孫さんのことを受け止めておられて素晴らしいなと思いました。
あくまでメアリーさんの場合ということですが、こんなにも柔軟で自然体なお考えをお持ちのおじいちゃん・おばあちゃん世代の方がいらっしゃることに正直驚きましたし、感動しました!


「支える側」、「当事者」へ~”おばあちゃん”世代からのアドバイス

【Yuko】
そんな柔軟なお考えをお持ちのメアリーさんにお聞きしたいのですが、もし誰かがLGBTQIA+の当事者にカミングアウトされると仮定したとき、どのように当事者から言われたら聞き入れやすいと思われますか?
また、家族や身内に性別違和を感じている人がいると仮定したとき、それを理解する、あるいは受け入れるコツみたいなものはありますか?

【メアリー】
まず言えることは、こだわってみたところで仕方がないということ。ひとまず事実は事実として受け入れる必要があるかと思います。反対したからといって、生物学的な性別になれるわけでもないですし…。
今はだんだん社会も変化してきつつあるので、本人がそれなりにやっていけるのであればそれで良いんじゃないかと思います。もちろん、本人にまだ迷いがあるようであれば話は別ですが。本人の気持ちが固まっているのであれば、背中を押してあげたら良いのではないかと思いますね。
だから、どのように言われるかというよりも、まずはどっしり受け止めるということですかね。

【Yuko】
では、カミングアウトする際にどう伝えるべきか迷っているLGBTQIA+の当事者がいるとすれば、どのようにアドバイスをされますか?

【メアリー】
カミングアウトする時期を延ばしてみたところでふんぎりがつくわけでもなし、「伝えるべきだ」と思うのであれば、思い切って早く言った方が良い
ということですかね。
何よりも自分自身が落ち着かないだろうし、ストレスを長引かせるだけなので。

【Yuko】
メアリーさんのとても柔軟なお考えを聞かせていただき、ありがとうございました。 本日は貴重なお時間をいただき、また貴重な胸の内やお考えをお聞かせいただき、本当にありがとうございました。

【メアリー】
ありがとうございました。



いかがでしたでしょうか?

ある医大の先生がおっしゃっていました。
予備知識がない世代は、反対をする前に『混乱してしまう』と。
情報に触れる機会がない世代のため、「それって何?」「どういうこと?」が先行してしまうのだそうです。

ただし、メアリーさんのように、予備知識がなくても柔軟に事実を受け止め、自然体に当事者を「一人のひと」として認められる方もいらっしゃいます。

本来はそうあるべきなのかもしれません。
どんな人であれ、まずは「その人そのもの」を受け入れる。知識よりも何よりも、「目の前にいる人をしっかり見る」ことがだいじですよね。
カテゴリーの枠にこだわらず、LGBTQIA+という単語がなくても、一人ひとりを認められる人間でありたいと思いますし、一刻も早くそういう社会になるよう願いつつ、できることを実施していきたいと思います。

メアリーさんにお会いして、”おじいちゃん・おばあちゃん世代”には受け入れるのが難しい面もあるのではないか?と、思っている自分がいたことに気がつきました。
良い意味での驚きや学びが多い時間となりました。

今回メアリーさんにお話しいただいたことは、あくまでもひとつのケースです。

この記事をご覧になった方が、「こうあるべきだ」などと、とらわれないようにしていただけると良いなと思います。


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