サムネ

【第66回】ハニートラップin外灘。(上海旅行記 Vol.6)

この記事は【第61回】謎の言葉「イツマッ」を解き明かせ(上海旅行記 Vol.1)から始まる上海旅行記の6回目です。1回目から読むことをおすすめします。


人生初の海外旅行で中国の大都市上海に出かけた僕。

2日目の夕方。2泊3日の弾丸旅行で観光だけを楽しむことができるのは、この日だけであり、その時間もそろそろ終わりを告げようとしていた。

その旅の最後として対岸から浦東を眺める上海を代表する景色の夜景を見に外灘へと戻ってきたのだった。

絶対に忘れない浦東の夜景

外灘には黄浦江に面した岸に広場がある。

そこに僕は豫園から古城公園を経て、ここまで戻ってきた。

ちょうどそこあった手すりの縁に腰掛け、数時間前に登った東方明珠電視塔を始めとする高層ビル群を眺める。

既に日は傾き、夕日がビルに反射してキラキラ光り昼と違った印象を見せていた。

昼にも人で賑わっていたけれども、ぞくぞくと昼以上の人が集まってきた。

ここにいる人は皆、夜景を見に来たのだろう。

上海と言えば、この場所から見た景色を想像する人も多いはずである。ネットで「上海」と検索して一番最初に出てくる画像は、ここから見た景色なのだ。

少しずつ日が落ちてきた。ここまで日没を待ったのは生まれて初めてかもしれない。

そして──。

ビルに明かりが灯った。

人々が一斉にカメラを向ける。心なしか場の雰囲気も変わったような気さえしてしまう。

この時、僕は「ああ、綺麗だ…」という素直な感嘆と共に「俺は本当に上海に来たんだな」という実感が急に胸に押し寄せていた。

上海に飛行機に乗ってやってきたときも、ホテルに泊まったときも、観光をしているときも、割とあっさりしていて、現実感がどこか欠けていて、地に足がついていなかったのだけれども、やっとこの時に実感が湧いたのである。

そう思うと感じていた「名残惜しさ」が「帰りたくない」という気持ちに変わる。そもそも日本にいたときに、いろいろと問題を抱えていて逃げるように上海にやってきたのだ。

そのことを思い出すと帰りたくない気持ちが、ますます強くなる。

けれども、それを乗り越えるために一時の逃避行してここまでやってきたのだ。これは逃げじゃない一時の休息。

今日の思い出を糧に今後もがんばろう。そのためには、この景色を瞼に焼き付けておかなければならない。

絶対に忘れないようにしようと夜景だけではなく周りの景色も含めて記憶しようと辺りを見回してみた。

改めて見てみるとカップルが多い。今回は1人で来たけれども、もし次来る機会があれば、誰か僕の隣にいたらいいんだけれども。

そんな感傷に浸っていると、僕の背後からいきなり声がした。

驚いて振り向くと2人の若い女性が立っていたのだ。

なんか言えよ

「○▼※△☆▲※◎★●・・・?!」

2人の女性のうち片方が僕に話しかけてくるが何を言っているのかさっぱりわからない。恐らく中国語だろう。

ああ、またかと思う。実はこういったことが、この上海旅行中に何度もあったのだ。

これは僕の個人的な感想なのだけれども中国人は割とフレンドリーだ。道で立ち止まっていたりすると、たまに話しかけられる。

もちろん、こちらが外国人と分かった上での行動ではない。白人にはアジア人の見分けがつかないというが、実際町の中にいたらアジア人同士でも見分けがつきにくい節があるのだろう。気さくに中国語で話しかけれくれる。

けれども中国語が全くわからない僕は、ごめんねと言うしか無い。今なら、もう少しコミュニケーションを取ろうとするような気がするけれども、初めての海外でかなり緊張していた僕には、こういった手段しか取れなかったのだ。

「Sorry, I can't speak Chinese.(ごめんね、中国語は話せないんだ。)」

だから彼女たちにもこう答えるしかない。本当にごめん。こう答え申し訳無さそうな顔をすれば、これまでの人は去っていった。

しかし、彼女らは違ったのだ。僕の返答を聞くとは僕のことじーっと見つめてきた。

「モシカシテ、ニホンジン…?」

え、日本語?

「う、うん…。そうだよ」

突然のこと過ぎてパニックになっていたのと、年が近そうというのもあって、ついタメ口になってしまった。

そんなことはどうでもいい。英語ですら、ほとんどコミュニケーションが取れなかった上海で日本語で会話ができるとは。

つい嬉しくなってしまう。

「ソウナンダ。私、ダイガクで日本語勉強してるンダ」

カタコト日本語だけれども十分日本語で会話できそうだ。つい嬉しくなってしまう。

「シンセキが今、日本にリュウガクしてルんだヨ」

「へぇー、そうなんだ」

それから僕らはたわいもない会話をした。正直現地の人とコミュニケーションを取れて嬉しい。日本のことも好いてくれているようだし。

「お兄さんカッコいいネ」

ふと、彼女が僕にそう言ってきた。

──え?どうして?急に?

「よかっタら、これからお茶しナイ?」

──おかしい。これは絶対におかしい。

「おイしいお店知っテるヨ」

ふと胸の中をもたげる不信感。なんでいきなり彼女は僕の容姿を褒めたのだろう。

お世辞にもカッコいい顔はしてないと自負している。それに、この時の僕は旅の恥は掻き捨てと言わんばかりに無精髭を生やしていて、清潔感も全くなかったのだ。

自分で書いてて悲しくなるけれども、いきなり同い年くらいの若い女性が容姿を褒めてくるなんて絶対おかしい。

そう思った時、脳裏に日本にいた時に読んだ記事がよぎった。

その記事は「上海では言葉巧みにお茶に誘い、体験料や茶っ葉代で高額な請求をする詐欺がある」という内容だったと思う。

「ごめんね、ホテルに帰らなくちゃ、ハハハ…」

そう言って僕は静止する声も振り切ってその場から逃げ出していた。

ふー、助かった。あのまま行ったらただでさえ金がない上にぼったくられるところだった。危ない危ない。

ハニートラップ回避成功。ネットでの事前の情報収集は大事だと実感した瞬間だった。

ただ一つ今になっても疑問なのはもう一人いた女性が一言も発さなかったことである。

なんか言えよ。騙したいんだったらさ。

帰り道も堪能する

もう帰ろう。

詐欺にあいかけて、その場に居続けるだけの精神力は僕になかった。

幸い当初のプランも完全に終えることができたし、撮りたいと思っていた夜景も撮れた。

欲張らなくていい。むしろ少しくらい未練を残しておいた方がいい。また来ようと思ってがんばれるに違いない。

もう一度船に揺られ浦東へと戻った僕は最後の観光として最初に降りた陸家嘴駅ではなく一駅行った先にある東昌路駅まで歩いて、そこから地下鉄に乗り込みホテルに帰ることにした。

別に何をしなくてもいい。すべてが新鮮で街を歩いているだけで楽しかったのだ。

道頓堀と書かれた日本料理屋。
絶対にお好み焼き以外にもあるに違いない。
結構、日本料理屋がいっぱいあった。

上海を代表する高層ビル達。
左から上海中心、上海環球金融中心、金茂大厦。
近くに寄るとマジで、でかい。

上海のドミノ・ピザは自転車で宅配するようだ。
電話番号なっげ。

水滴を模したキャラクターが気持ち悪い。

日本料理屋が結構あるな。上海中心って近くに来るとめちゃめちゃでっけぇな。上海にもドミノ・ピザはあって自転車で配達してるんだ。中国の電話番号桁すごい多いじゃん、さすが世界一の人口を抱える国は違うな。うわ、水を大切にしようと訴える啓発ポスターに書かれた水滴を模したキャラクター気持ち悪っ…。原宿ファッションデザインと書かれた美容院がある….。

こうして街歩きを堪能した僕はホテルに帰り上海旅行2日目を終えた。

ちなみに夕飯も食べたはずなのだけれども、何を食べたかすっかり忘れてしまった。写真に収めておけばよかった…。

最後に

いよいよトラブルだらけの上海旅行も最終日を迎える。

しかし、まだまだトラブルは終わっていなくて…?

続きます。


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