小さい世界の大きな出来事

 
 そいつは突然やってきた。6ー1前のろう下にやってきた。自分の体よりも大きいほどの、ホコリをたくさん巻きつけて。
 そいつの名前は「クワガタ虫」。平べったい体をしているから、おそらくヒラタクワガタだろう。体長は小指程度だが、足をわさわさ激しく動かし、自分を大きく見せようとしているようだった。
 どこからともなくやってきて、ホコリまみれになりながらも、必死に体を動かす姿を見て、先生は思った。
 「もしかしたら、このクワガタ虫は、何かから逃げてきたのかもしれない。」
 そこから想像はどんどんふくらみ、先生は一つの仮説にたどり着いた。
 「このクワガタ虫は、クワガタ族に伝わる大事な秘密を一族にたくされ、それを狙う何者か(おそらくカブトムシ族)から、必死の思いで逃げてきたのではないだろうか。」
 そんなことを考えていると、クワガタ虫と目が合った。クワガタ虫の、何かをうったえているような、つぶらな瞳を見ていると、ますますそう思えてきた。
 その後クワガタ虫は、6年1組のみんなの手によって、ホコリを取られ、バックネット横の木の幹に避難させられた。きっと元気に飛んで行ったことだろう。
 もしかしたらこの日、僕たち6年1組は、クワガタ族の歴史に残る、大きなことをしたのかもしれない。

画像1

           *

    もうすぐ夏休み。夏休みと言ったら・・・そう!読書感想文です!(?)
 今日学校で子ども達に「作文書くの好きな人ー!」と聞くと、41人中28人が「嫌い」と答えました。
 力不足を反省しつつ、今から少しでも書くことを好きになってほしいと考え、「ライティング・ワークショップ(作家の時間)」に取り組みました。
 「作家の時間」を簡単に説明すると、年間を通じて、書きたいものを書いていく時間。毎回短時間のミニレッスンをした後で、題材集め→下書き→修正→校正→出版→・・・という書きのサイクルを回していきます。
 「みんなで本を出版していくよ!」「何でも好きなことを書いていいんだよ!」という私の言葉に、「おぉー‼︎」と湧き上がる子ども達。1時間もくもくと書き続ける子がいる一方、鉛筆が動かない子も。アイデアが浮かんでこない事に焦って、「作家の時間」まで嫌にならないように、声をかけながら見守りました。
 とても嬉しかったのは、今日の日記に「文を書くのがこんなに楽しいなんて‼︎教えてくれてありがとうございます‼︎」って書いてくれている子がいたこと。他の子も、全員が前向きな振り返りを書いてくれていてホッとしました。
 私自身も「作家の時間」について学びつつ、子ども達に書くことの魅力を感じてもらえるよう、続けていきたいと思います。

 ※初めの文は、「子ども達が書いているのに、教師である自分が書いていないのでは駄目だ!」と思い、今日あった出来事を書いてみました。笑



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?