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読書記録

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友達に紹介するような文章を目指しています。 小説、実用書、歌集、雑誌。 好きそうな本があったら教えてください。
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#辻村深月

読書記録「名前探しの放課後」

タイトルが既に謎っぽい、気になる言葉「名前探しの放課後」。
文庫本で上下巻なので、かなり長い小説だけど、
読後の充実感がやっぱり他では味わえない。
やっぱり辻村深月さんの小説が大好きだ〜。

主人公は三ヶ月前の世界に戻ってきた高校生・いつか。
年が明けたはずだったのに、昨年に戻っていることに気づく。
いつかが覚えているのは、昨年末に同級生が自殺したこと。
自分が三ヶ月前に戻ってきたのは、その同級生

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読書記録「太陽の坐る場所」

読書記録「太陽の坐る場所」

主人公たちと同じ年齢だった。だから、この年齢だからこその苦しい部分が刺さる。
この小説は、日本の田舎出身28歳ならみんな刺さっちゃうんじゃない……。

舞台は卒業してから十年後、地方の県立高校の同窓会。28歳になった元クラスメイトたち。そんなクラスメイトの中に女優として活躍しているキョウコがいない。
自然と話題はキョウコのことに。キョウコを同窓会へ呼ぼうとするが、彼女と連絡を取った元クラスメイトと

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読書記録「オーダーメイド殺人クラブ」

読書記録「オーダーメイド殺人クラブ」

厨二病感あるタイトルからは想像できないほど、刺さった。

クラスで「リア充」なグループにいる主人公・小林アンは猟奇的なものに惹かれる自分と同級生たちとのズレを感じていた。
ある日の河辺で、昆虫系だと下に見ていたクラスメイトの徳川の足元に、血まみれのビニール袋があった。その中身は徳川が殺したネズミの死骸だという。
「私の少年Aになってほしい」
小林アンは徳川に自分自身の殺害を依頼する。ただの殺害では

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読書記録「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」

読書記録「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」

女性同士の鬱屈とした駆け引きがねっとりと書かれている。
アラサーになったこの年齢で読めて良かったなと思う。
学生の頃ではこのリアル感が掴めなかったと思う。

これは初期の作品にあたるのかな?
辻村先生の過去作品は、ねっとりとした女性のやり取りが多い印象がある。特に主人公たちが女性だと。
不穏な空気感の中に伏線が張られ、最後の方にようやく回収されるイメージ。
学生の頃に読んだ「子どもたちは夜と遊ぶ」

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読書記録「嚙みあわない会話と、ある過去について」

読書記録「嚙みあわない会話と、ある過去について」

胸がイタイ……。とにかく胸がイタくなる作品だった。
学生時代の青い頃の過去がガジガジかじりついてくる。

タイトルの通りの短編が詰め込まれた短編集。
タイトルを最初に見た時はどういう意味だろうと思った。
読んでみると、タイトルの通りだった。
当事者同士が当時を思い返しながらする会話が嚙み合わないことに焦点置いた短編集である。
例えば、私はあなたのことを尊重していたはずなのに、相手は自分を軽んじられ

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