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読書記録「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」
女性同士の鬱屈とした駆け引きがねっとりと書かれている。
アラサーになったこの年齢で読めて良かったなと思う。
学生の頃ではこのリアル感が掴めなかったと思う。
これは初期の作品にあたるのかな?
辻村先生の過去作品は、ねっとりとした女性のやり取りが多い印象がある。特に主人公たちが女性だと。
不穏な空気感の中に伏線が張られ、最後の方にようやく回収されるイメージ。
学生の頃に読んだ「子どもたちは夜と遊ぶ」の月子と紫乃のことをずっと覚えている。マスカラがダマになっているなんて人に指摘すんなよ、っていまだに思う。
この小説では、主人公・みずほが行方不明となったチエミの行方を追っていく。
みずほとチエミは家族ぐるみの付き合いがあるほどの幼馴染だった。
ただチエミは何歳になっても母親にべったりだった。大人になっても手を繋いで買い物をするような。
そんなチエミが母親を殺して行方不明になっているという。チエミはなぜ母親を殺して行方不明になったのか。
序盤に提示されていた疑問点がクライマックスで効いてくる。
謎が解ける時、その行動の意味が変わってくる。
ここでタイトル回収されるのか、と読みながらドキドキした。
この小説で書かれているチエミのような子は本当にいる。
チエミは短大卒で契約社員として切られないことを大事に仕事をしていて、向上心がない。文句や不満は言うけど改善策は出さない。その子がいない時、少し見下されたような悪口を言われちゃうような子。
登場人物の過去については深く掘り下げられていくが、容姿についての情報が少ない。
これは、読者が属するコミュニティの中で登場人物に近い友達を想像させるためらしい。
ふわっとしたチエミに、誰からも嫌われたくない果歩、仲間たちの中心にいる政美。
私もチエミは小中学生の時に仲が良かったあの子を思い浮かべながら読んでいた。
主人公・みずほとチエミのような幼馴染ではないし、会いたいとは思わないけど元気でいてほしいと思う。
この小説は、単行本が2009年に刊行されている。
それから10年ちょっとたった今。
女性の生き方が変わってきているはずの今。
だけど、この小説が書かれた頃から、女性の縮図って全然変わらないんだなと思った。
チエミとその母親の関係に対して、主人公・みずほとその母親の物語も書かれている。
母親だから分かることと、母親だからこそ分かり合えないこと。
幼い頃にコーラを飲ませてもらえなかったみずほに対する母親の仕打ちが印象に残った。しばらく忘れられない。
親が私を産んだ年齢に、私自身が近づいてきて、親も親で必死だったんだろうな。
理解と納得は違うけど、とも思う。
「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」はアラサーになった今の私の友達関係や親との関係があるからこそ、ツンとするくらいのリアリティがあった。
その小説を読むのに適した年齢があるんだな、と実感した。
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