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おすすめ短編小説・三島由紀夫「剣」
こんにちは。にかです。
先日、フランクフルトで日本の映画がたくさん上映されるというイベントがありました。
そこの屋台で唐揚げカレーを食べたのですが、どうもそれから体調が著しく悪く、一時は高熱になり、吐き気がおさまらず、頭痛腹痛が夜中中続き、全く寝られない日が二日三日続きました。なんとかおさまってきましたが、以前として一口物を食べるだけで激しい腹痛に襲われます。
多分じゃがいもの芽が入っていて、それを食べてしまったような気がします。真相はわかりませんが...。
しかし、こんなことで数日間も寝込み、バイトも一週間休んでしまった自分が非常に情けなく思えてきます。
また、授業も休まざるを得なくなってしまいました。中でも特に最近ハマっている、剣道の授業を2回も休んでしまいました。
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剣道で思い出しましたが、剣道に関する短編でとても美しいものがあります。
今回はそれを紹介します。
剣
「剣」という非常に簡潔なタイトルの短篇小説があります。まあ察しの良い方ならお気づきかもしれませんが、作者は三島由紀夫です。
この作品、まさに「剣道」の話です。非常に静寂な剣道の物語です。やはり美しい描写が多いのですが、なんと言っても書き出しが非常に優れていると感じます。以下、そのまま引用です。
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(腿は「もも」)
物語は、高校生の国分次郎が剣道の練習をしているところから始まります。
二葉竜胆(ふたばりんどう)とは、家紋のことらしいです。
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「刺子」という言葉も初めて知りました.
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僕は剣道の経験は今まで全くありませんが、この冒頭部を丁寧に読むだけで、国分次郎の剣道をする様がまざまざと浮かんでくるような気がします。
Wikipediaは見ないでください。結末までネタバレされます。
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あらすじ(ネタバレなし)
3年生の国分次郎はとても強いらしく、剣道部の主将を務めています。
そんな国分次郎を尊敬しているのが、一年生の壬生(みぶ)。
国分次郎と同級生だが、技術的には少し劣る賀川(かがわ)。
物語は主にこの3人でまわります。
あらすじと言いましたが、この短編は全7章構成であり、それぞれの章で何か大きな出来事が起こるわけでもありません。起承転結がないのです。
ですから、特にこれと言って書くようなあらすじもありません。
まあざっくりした話の流れはこんな感じです。ネタバレなし↓
剣道部のみんなは練習を頑張っていた。主将の国分次郎はとても厳しい人だ。彼の人柄を窺わせるようなエピソードがいくつも語られる。ある時、剣道部は合宿を行った。その合宿はいつものような合宿とはいかず...。
まあ、この物語は国分次郎の真っ直ぐな生き方の描写がただただ美しく、三島由紀夫くんの男性像もよく現れています。
とにかく一瞬一瞬の描写が素晴らしいこの作品、物語というよりかはその文章を読むことを目的に読んで見ても楽しめると思います。
以下では、いくつかのシーンを取り上げてみたいと思います。第一章、第二章の引用です。ラストにつながるようなネタバレはないのでご安心ください。
壬生と賀川の剣道
では、本作の中から僕のお気に入りのシーンを見てみましょう。
まずは、壬生と賀川が剣道の練習をしているシーン。
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「壬生の切ない力にみちた剣尖(けんさき)が宙に泳ぐ。...その面金に当たる西日が赫(かく)と光る。」何てら安らかな文章なのでしょうか。激しいはずの剣道なのに、静けさが感じられる文です。と思えば、次の瞬間には賀川の面はあちらへ出る。こちらへ出る。のです。なんて躍動感のある表現なのでしょう!そんな彼の面は、あるときは日を負うて暗み、あるときは又光に爛れている。そして確かに撃ち込んだところに、しかしそれは消えている。。。「静寂」での締めくくり。素晴らしすぎます。
ハトをいじめる悪者たちと国分次郎
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剣道の練習後、別に何を待っていたわけでもなく、ただなんとなく歩いて帰ろうとしていたら、なんだか壮麗な瞬間の近づくのを感じた国分次郎。三島先生は、国分の心をあまりにきめ細やかに描いたその様子を、見事に昔の剣客の「殺気」に収束させてしまいます。
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バァン!銃声が耳元をかすめます。バァン!なんて書いてませんけど。というか余談ですが、三島由紀夫は擬音語を極端に嫌っており、作中でほとんど擬音語を使わない人でした(擬態語はたくさん使います)。なので三島先生は、バァンと銃声が耳元をかすめた、なんて間違っても書きません。
すると国分次郎の近くにはハト🐦が落ちてきました。
かわいそうに、学校の伝書鳩部のハトでした。国分次郎はハトを助けようとします。
すると、、悪者が乱入してきます。どうやら彼らが撃ったようです。
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国分次郎が言い返すと、銃を突きつけられてしまいます
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するとまたもや静かな剣道が現れます。「自然体のまま、音もなく前へ進んで、銃口を足で踏んだ」国分次郎。この動作もまた、どこか剣道を彷彿とさせます。
無事に悪者たちを追い払った国分次郎。ハトの様子が克明に描かれます。
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長いですが、とにかくハトは苦しそうです。そんなハトを見た国分次郎は、、、最後の文に注目してください。国分次郎はハトの首を絞めようとしたのです。助けたハトを。なぜ?その答えは明言されません。しかし、ここに国分次郎の重要な死生観が隠されていると考えます。
しかし、その瞬間、老小使(ろうこづかい、ここではおそらく学校の事務員とかそんな感じのおじいちゃん)が現れたため、ハトの殺害を断念します。
傷ついたハトの血が、国分次郎の顔についていました。それを老小使がとってあげようとするシーンです。
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ハンカチなどを持っていなかった老小使でしたが、白百合の花びらを見つけ、それで国分次郎の顔についた返り血を拭います。美しい白百合はなにを象徴しているのでしょうか。白百合はしめやかに血を吸って、白い敏感な肌があらわに示した血管のように、脈の形に血の赤を織り込んでしまいます。このシーンもまた静かで、白百合も相まって美しいです。
その後老小使は立ち去ります。これは第二章ですが、第二章はこんな一文で締め括られます。
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かずかずの詩の罠の中を、悠々と通り抜けた。。。なんとも伏線めいた終わり方です。
終わりに
その後の国分次郎に何が起きるのか...国分次郎の生き方に賛成する人、反対する人、理解できない人、称賛する人、いろいろいると思いますが、まあ、とにかく合宿で何が起きたのか気になる方は読んでみてください。
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今本屋さんで売っている版には載ってなさそうです。
図書館で全集を見てみてください。普通は決定版の全集があると思うので、三島由紀夫全集第20巻をチェック!
ここまで読んでくださってありがとうございました!
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