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読みの困難さを早く発見するために

読みの困難さを早く発見するために必要なことについて書いていきます。まずエマージェントリテラシー(emergent literacy)について言及します。これは読みの前段階となる文字に対する意識の芽生えを指します。プレリテラシー(preliteracy)と言われることもあります。

通常、子供たちは文字について教えなくても、文字が情報を伝えていることに気づく時期があります。例えば、絵本の読み聞かせをよくしてもらう子は、あたかも自分が文字を読んでいるかのようにページを追ったりすることが見られます。文字が逆さまになっていても気づかない時期は、絵とは異なる「文字」という記号の認識はしていても、その文字の形までは理解していません。しかし、文字が何らかの情報伝達手段であることは理解していると考えられます。

このように目で見て文字と絵を区別し、文字が何らかの情報伝達手段であるということを理解する様子はたいていの場合、3歳から4歳にかけての時期に見られるようです。これは視覚的処理の能力の発達ということができ、その後の文字習得に向けての第一歩を踏み出した状態といえます。

一方で耳で聞いた音を処理する面で重要な力は音韻意識といいます。音韻意識とは話し言葉という耳で聞く一連の音の連続を、「どんな音がどんな順序で並んでいるかという構造を把握して、一つひとつの音を分解して捉える力」のことです。

音韻意識については過去に以下のような記事を書きました。

連続した音声を分解することは普段は意識することがありませんが、子供たちはしりとり遊びや反対言葉遊びをすることで、一つ一つの音を分けて捉えることを知らずのうちに練習しているのです。例えばしりとりで「ねこ」→「こいぬ」と続く時、「ねこ」という音が「ね」と「こ」に分解され、「こ」だけを取り出してしりとりをしています。続く「こいぬ」は「こ」「い」「ぬ」に分解され、はじめの「こ」だけを抽出して「こ」がつく言葉として認識されるのです。また「れいぞうこ」の反対は?と聞かれて「こうぞいれ」と答えることができる子は一つ一つの音の分解ができているといえるのです。このように音を分解できる能力は文字の習得の際に一つ一つの文字に一つの音を結びつけるという能力の基盤となります。

就学前の子供の様子について、保護者は小学校入学後にひらがなの学習でつまずいて初めて「そういえば絵本に興味がなかった」「文字に興味がなかった」などと振り返ることが多いといいます。確かに視覚的な文字の認識と音韻意識の苦手さに幼児期から気づくことはなかなか難しいことです。たいていの場合、「本は好きではないようだ。」「文字は学校にあがったら習うから大丈夫」と思われてしまいがちだからです。しかし、上述したようなエマージェントリテラシーの芽生えの様子を観察することはスクリーニングとしても大変有効です。日頃から文字に対する興味や行動について観察することはとても大切です。

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