新井 清義(あらい すみよし)

大阪大学大学院連合小児発達学研究科博士課程修了。博士(小児発達学)学習障害の認知を広め…

新井 清義(あらい すみよし)

大阪大学大学院連合小児発達学研究科博士課程修了。博士(小児発達学)学習障害の認知を広めるためのクラファンに挑戦し136%達成|Youtube:https://m.youtube.com/channel/UCSgc-wLsrwpYCQunbS8pA-Q

最近の記事

読み書きのLD(学習障害)に対する学習支援のポイント

学習障害が気づかれるのはたいてい小学3年生前後といわれます。「学校の宿題がなかなか進まない。」「テストの点数が上がらない」という問題が起こり、保護者が必死に勉強を教えようとしますが効果が上がらず受診することになります。問題は、学習障害の診断が下される時点で学習の遅れがすでに広がっており、治療が開始されても他の生徒に追いつけないほど学習の困難さを抱えている可能性が高いことです。成績の問題が中心となる学習障害は、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)といった行動

    • 「障害」は社会的障壁によって生まれる

      「障害は個性」「発達障害の子は天才」 こんな言葉を聞くたびに言いようのない違和感を感じてきました。実際、当事者の方が聞くと首を傾げる言葉です。 障害とは何なのか…? 今では 障害とは個人に内包されているものではなく、不利益・困難の原因は「多数派」仕様に作られた社会の作りや仕組みに原因があるという考え方が一般的になりつつあります。 (このような考えを社会モデルといいます。)だからこそ、社会によってそれらを解決しなければいけません。 「障害は個性」「発達障害の子は天才」

      • プロデューサーの長倉顕太さんと、学習障害の認知を広めるためのクラウドファンディングを立ち上げました!ご支援をよろしくお願いいたします!! https://camp-fire.jp/projects/view/399936

        • LDの子どもを取り巻く日本の現状

          学びの機会の喪失  LDの認知度はここ数年で上昇しましたが、障害名が知られるようになっても、その病態について完全に理解されているとはいえません。むしろ誤解も多く存在しているのが現状です。「読み書き」や「計算」は何度も練習すればできるようになる、という誤った認識から、効果の上がらない反復練習をさせられ無力感に陥る事例が存在することは前章で述べました。それに加え、LDは根本的に「気づかれにくい」という問題を抱えています。  LDが気づかれるのはたいてい小学3年生前後です。「学校

        読み書きのLD(学習障害)に対する学習支援のポイント

          LD概説

          「発達障害」とはどんな状態か  学習障害は発達期に始まる「学習に関する特異的発達障害」といわれます。「発達障害」という用語は近年になりよく知られるようになりましたが誤解が多いのも事実です。学習障害の説明の前に、まずは「発達障害とはどんな状態を指すのか」について解説していきます。  発達障害に関する誤解の一つに「親の育て方の問題」「本人の性格のせい」というものがあります。これまでは発達障害が起こる原因がよくわからなかったこともあり、このような誤解が生じていたようです。しかし近

          どこに自分を置くのか〜障害の社会モデルから考える

          今日は環境を選ぶ重要性について。 まずは一見関係ないことのように思える トピックについて取り上げますが、 とても大切なお話です。 ============== 障害の社会モデル ============== 福祉の世界には 「医療モデル」と「社会モデル」 という言葉があります。 医療モデルは 障害や疾病は皮膚の内側に原因がある という考え方。 足が不自由で動きづらい 目が見えづらい 発達障害を持っているため生きづらい など、これらはその人の障害に 問題があるという

          どこに自分を置くのか〜障害の社会モデルから考える

          学習障害の子が学校で困っていること(算数編)

          「算数障害」についてはあまり知られていませんが、学習障害(LD)の医学領域の能力障害の一つです。 以下、LDの子が算数で困っていることを述べます。 ①数字や記号の意味がわからない 「+、−、×、÷」といった計算の記号や「Kg、cm、ml」といった単位を理解するのが苦手です。なかには計算は普通にできても「合わせていくつ?」「3個ずつ分けると1人何個になる?」と聞くとわかはなくなることがあります。 ②数字の位(けた)がわからない けたをそろえる縦の筆算が理解できないケー

          学習障害の子が学校で困っていること(算数編)

          学習障害の子が学校で困っていること(国語編)

          学習障害(LD)においては「読字障害」と「書字障害」が大きな部分を占めています。必然的に国語での困り感が出やすくなります。 国語において具体的にどのような困り感が出るのでしょうか。 ①訓読みと音読みがわからない 漢字には訓読みや音読みなど複数の読み方が存在します。どのように読むか判断するには高度な情報処理能力が求められます。LDの子供たちは訓読みと音読みの判断が難しいことがあります。 ひらがなであれば、「あ」は「a」としか読みません。しかし漢字の場合、一つの漢字でも複

          学習障害の子が学校で困っていること(国語編)

          ディスレクシアの「英語学習」について(2)外国語を学ぶということ

          ディスレクシア独特の英語学習の困難さについて、こんな記事を書きました。 ひらがなとアルファベットは文字と音の関係の仕組みが異なり、第一にひらがなは音の単位のサイズが大きく、アルファベットは小さい。第二に文字と音の対応がひらがなは規則的ですが、アルファベットは不規則。 上記の理由から、ディスレクシアの子にとって英語学習は非常に極めるという内容でした。 もう一つ、英語学習が難しい理由があります。日本人の子にとって英語は母国語ではありません。この「母国語ではない」ということが

          ディスレクシアの「英語学習」について(2)外国語を学ぶということ

          ディスレクシアの「英語学習」について  (1)日本と英語の違い

          ひらがなは読めても英語の学習に困難さを示すディスレクシアの子供たちがいます。つまり、小学生のうちは気づかれず、中学で本格的に英語の学習が始まった段階でディスレクシアが表面化する。こんな事例があるようです。 ディスレクシアの子供もたち特有の英語学習の難しさについて言及します。 まずは日本語と英語の違いについて。 1)ひらがなの「文字」と「音」の関係 まず、言語を問わず、文字は話し言葉の音の単位に基づいて作られています。例えば、「かに」という言葉は「か」と「に」という2つ

          ディスレクシアの「英語学習」について  (1)日本と英語の違い

          読みの困難さを早く発見するために

          読みの困難さを早く発見するために必要なことについて書いていきます。まずエマージェントリテラシー(emergent literacy)について言及します。これは読みの前段階となる文字に対する意識の芽生えを指します。プレリテラシー(preliteracy)と言われることもあります。 通常、子供たちは文字について教えなくても、文字が情報を伝えていることに気づく時期があります。例えば、絵本の読み聞かせをよくしてもらう子は、あたかも自分が文字を読んでいるかのようにページを追ったりする

          読みの困難さを早く発見するために

          ディスレクシアの「読みの困難さ」についての考察

          国際ディスレクシア協会は、ディスレクシアの症状として「正確かつ、あるいは流暢に単語を認識することの困難さ、綴りの稚拙さ、単語を音声に変換(デコーディング)の弱さ」を挙げています。 上記の一節にはディスレクシアの困難さを考察する上で重要なキーワードが列挙されています。ここでは「読む」という行為について考察します。 「読み」というのは様々な行為を意味します。ここでは大きく2つのレベルに分けたいと思います。 まず第一段階のレベルとしては、文字・単語を音に変換するレベルの読み。

          ディスレクシアの「読みの困難さ」についての考察

          「人気のある先生」と「成績を伸ばしてくれる先生」を混同してはいけない

          「やり抜く力 GRIT」で有名なアンジェラ・ダックワースさんが学校の先生や保護者など、教育に携わる方向けに有益な情報を提供してくれています。 ↓↓ Character LAB https://characterlab.org/ 上記のサイトの記事でアンジェラ・ダックワースさんはこんな事を書いていました。 “A great classroom is one in which young people thrive in every sense of the word. Sc

          「人気のある先生」と「成績を伸ばしてくれる先生」を混同してはいけない

          ディスレクシアの定義について

          国際ディスレクシア協会では以下のように定義されています。 ”ディスレクシアは神経学的な原因による特異的な学習障害である。その特徴は正確かつ、あるいは流暢に単語を認識することの困難さ、つづりの稚拙さ、単語を音声に変換する(デコーディングの)弱さにある。こうした困難さは、主に他の認知能力や学校での効果的指導からは予測しえない言語の音韻的な側面に関する弱さが原因である。二次的に読解の問題を引き起こしたり、読みの経験が少なくなったりすることで、語彙や予備知識の発達を阻害することが起

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          大人の思い込みが子供に影響を与える

          ===================== Stereotype Threat(ステレオタイプの脅威) ===================== ステレオタイプとは 固定観念、先入観、レッテルなど、、ですね。 例えば、 ・女子よりも男子の方が数学が得意 ・男子よりも女子の方が国語が得意 ・A型は几帳面 ・家業を継ぐのは長男の役割 など色々なステレオタイプがあります。 当たり前ですが上記のことは、 当てはまる場合もあれば、そうでない場合もある。 勝手なレッテル貼りだ

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          「誰かと一緒」に学ぶことの効果

          時代の変化が激しい時代、 私たち大人も一生学び続けなければいけません。 しかし、「学び方」について 教わることはあまりないように思います。 私たちはどのように学んだらいいのでしょうか。 ================ 「一人で集中して」もいいけれど ================ “学ぶ”というと 「一人で集中して」 「静かな環境で誰にも邪魔されずに」 というのが定番だと思います。 それはもちろん大事ですよね。 集中したいのに話し声が気になって 集中できない

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