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ディスレクシアの「読みの困難さ」についての考察

国際ディスレクシア協会は、ディスレクシアの症状として「正確かつ、あるいは流暢に単語を認識することの困難さ、綴りの稚拙さ、単語を音声に変換(デコーディング)の弱さ」を挙げています。

上記の一節にはディスレクシアの困難さを考察する上で重要なキーワードが列挙されています。ここでは「読む」という行為について考察します。

「読み」というのは様々な行為を意味します。ここでは大きく2つのレベルに分けたいと思います。

まず第一段階のレベルとしては、文字・単語を音に変換するレベルの読み。幼少の学び始めた子供たちについて「文字の読み書きができる」「ひらがなの読み書きを覚えた」というのはこのレベルの事を言いますね。

第二段階のレベルとしては、読んだものを理解するレベル、つまり読解です。第一段階の読みができなければ当然、第二段階のレベルの読みは不可能です。しかし、第一レベルができたとしても読解できるとは限りません。土塊には単語の意味、文法の力、段落と段落の関係性の理解など様々な能力が必要になります。

ここで言うと、ディスレクシアは第一段階の「文字・単語を音に変換するレベルの読み」の困難をいいます。ディスレクシアを考える上で大事なのは、読みの2つのレベルをしっかり区別しなければならないという点です。

「正確かつ、あるいは流暢に単語を認識する」というのは、単語を見たらすぐに読めて意味がわかるということです。単語の1文字1文字を読むのに時間がかかっていては単語の全体を捉えることはできません。

「綴りの稚拙さ」とは、文字の形の悪さ、「字が汚い」「下手」とは異なる、という点に注意が必要です。綴りが不正確だということです。英単語の綴りを考えるとわかりやすいかもしれません。同じaが、hatとmakeでは異なる音を表します。また、yachtのように、この綴りと音の結びつきがよくわからないものもあります。英語は文字と音の対応が不規則で例外的なものが多く、ディスレクシアの人にとっては、正しい綴りを覚えることは極めて難しいことなのです。

「単語を音声に変換(デコーディング)する」というのは、先の第一レベルの読みのことです。つまり、文字・単語を音に換えることをいいます。ディスレクシアの人の人は、文字や単語を見て、それが表す音がわからない。あるいは音を思い出すのに時間がかかるのです。

以上のディスレクシアの症状の原因として、国際ディスレクシア協会の定義では「言語の音韻的な側面に関する弱さ」を挙げています。(これは多くの研究でも有力視されている考え方です。)

文字は話し言葉を目に見える形で記録するためのものです。そのためには、話し言葉の音をはっきり捉えることが必要です。音韻的側面とはそのことに関する能力のことです。

ディスレクシアは「特異的な学習障害」であって、全般的な学習の遅れ、困難とは異なります。しかし、読むことは全ての科目の学習に関わることです。それだけ支援が必要なものです。

また、読みの問題は学業に影響するだけでなく、語彙や知識の習得にも影響します。どんな書物の中にも、私たちが日常会話では用いない語彙が多く使われています。読書が好きな子供は本を読む事を通して豊富な語彙を習得し、書かれている内容から広い知識を得ることができます。しかし、読むことに困難さがあると、文字を通した学びが妨げられ、一般的な語彙や知識の拡大が阻害されてしまいます。

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