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伝えるとは.質問とは.「きく、かく。讃岐仕事人から学ぶカフェ講座」で学んだこと.

2024年6月14日.職場からのメッセージで,こんなイベントの案内が届きました.聞くと,私が所属する学校の卒業生からの紹介です,ということで,会場も以前丸亀町商店街の組合長さんに案内されて説明を受けた場所でもあるし,自分の仕事上「聞く」と「書く」は重要なウェイトをしめていたりと,いろんな点が繋がって直感ですぐに申し込んだのでした.

会場につくと,男性は僕一人…不安… そのうち,一人ではなくなったので一安心.ワンドリンク制だったので,定時後だからビールを注文.会場の窓から見える街の風景とそこを行き交う人も柔らかい夕暮れ時の光に包まれて良い感じ.

講師の中村光代さんは山口生まれで東京や大阪での仕事を経由して高松市に在住.MBA(経営修士学)を持ちライターとして,ジャーナリストとして,また,企業経営を戦略的に支援するなど,聞く力と書く力,を活用して活動されています.中学生のときからその文章が新聞に掲載されるなど「書く」ことが自分の生業になると幼いころから信じてここまで活動を広げてこられたそうです.

ご自身が note に連載されている  "自分で始めた女たち"  についての紹介もありました ↓

レクチャーの前半はそういったご自身の履歴や経験のお話で,後半は参加型のワークとQ&Aセッションでした.その中で紹介された「ラブレター理論」と「質問されると好きになる」それと「自己紹介ワーク(とその結果に隠された秘密)」が大変面白かったので共有します.

「ラブレター理論」とは?


みなさんはラブレター書いたことがありますか?という問いかけから始まった説明.会場の20名以上(ほぼ女性でした笑)のほぼ全員が手を上げました.「じゃあ,ラブレターをもらったことがある人は?」という質問には半分くらいになっちゃいました.それはさておき「本意でない人からのラブレターをもらった時,捨てちゃいたいラブレターと,こっそりまた読み返したくなって抽斗にしまいたくなるラブレターがあるとします.その決定的な違いは何だと思います?」というのが中村さんからの問いかけであり,このラブレター理論のポイントになります.

ここでみなさんもぜひちょっと考えてみてください.
会場でも,いくつかの意見が出ました.捨てたくなるのは「重いやつ」「好き好き好き」と書かれているけど理由が分からないもの.取っておきたくなるのは「自分のことが褒めてあるやつ」「あったかくなる文章」などなど.さて,答え合わせは...

捨てたくなるラブレターは「主語が”自分(書いた人)”」になっている手紙.自分がいかにあなたを好きか,自分がいかに優れているか,について一方的に書かれたもの,なんだそうです.反対に,取っておきたくなるラブレターは「主語(主題)が”あなた”」になっている手紙.「あなたのこんなところが好き」「あなたの●●に惹かれた」確かに,もしそんなこと言われると,取っておきたくなりますねぇ.

「質問されると好きになる」

そして,相手に質問することが,相手から気に入られるきっかけになるという話も共感しました.中村さんが NY times のこの記事を引き合いに出して説明されました.これは,NY Times の人気コラム「Modern Love」(Amazon PrimeVideo で人気のエピソードがいくつか映像化もされています)で,僕も大好きなコラムです.

↑(恋に落ちるには相手に質問をするだけでいい)

(シリーズ化された映像版はこちら.有名どころも多く出演.シーズン1,2とアムステルダム版,東京版もあります)↓

さてさて,本題に戻りまして.質問というと,とくに職場では「めんどくさいこと」というイメージが強いかもしれません.学生にとっても「質問」はしたくないことのひとつのようです.でもみなさん,社会がどんどん変わって来ていて,仕事をストレスなく進めるためには適切な「質問」が大事だったり,学びの場面では「質問」が他者の理解をより助けたりするという,大変大きな役割を持っていると僕は考えてます.自分の所属する学校でも,どうやって「質問力」を高めていくかがホントに大事だなと思っているところです.海外で話をすると,ビジネスでもレクチャーでもどんどん質問が来ます.この差を埋めたいなぁと日々頭を悩ませているわけです.人に質問をしてもらうのって,意外と難しいんです.

でも,自分から質問すれば,突破口になることもあります.質問が質問を呼ぶ.みたいな.(質問返しというと機嫌を悪くする人がいますけどね,それはまた別の機会に)だから,自分から学生の意見を引き出す質問をよくやります.

これは,僕の職場で言えば高校生などへのガイダンスにも関係するスキルです.つい説明しなければ,と思って私たちは「私たちの学校は」を主語に話しがちです.でも,相手が知りたいのは「自分はここで大丈夫だろうか」ということ.だから,相手の聞きたいことを引き出して,それに答えてあげないと,相手の気持ちには届きません. そのためには,こちらが質問してあげることです.恋に落ちられたらそれはそれで困りますが,相手に学校のことを好きになってもらうには,ラブレター理論と同じように「あなた」に「私たち」の多様な面のなかからフィットしそうなところを切り取って届けてあげないと「腑に落ち」ないのではないかと思います.立場を逆にして考えると想像できますよね,オープンキャンパスに参加してもあなた自身が「知りたいことが分からなかった」となれば「聞いてもらえなかった」という印象と共にフェードアウトしたくなりますよね.ごくごくシンプルな話です.

高校でも「相談会」という名前の「学校説明会」が当たり前のように行われています.僕はいつも疑問に思っています.相談会,だよねぇ?と.「ユーザー目線」は時々役割や仕事の仮面をかぶると途端に見えにくくなってしまいます.心に留めておきたいものです.

「自己紹介ワーク」

参加型のアクティビティのとっかかりのアイスブレイクに「1分間で”私は●●です”にあてはまることを思いついただけたくさん書き出す」というワークをやりました.1分間を「よーいどん」で計って実施します.

5つくらいの人もいれば,10をこえて書く人もいます.そして,隣の人とそれを見せ合って,質問し合う(ここで恋が芽生える可能性もありますね!)という内容です.そして,中村さんが種明かしをします.「書き出せた数は,その人がどれだけ違う視点や見方を持っているか,に関係しています」とのこと.つまり,多く書けた人は,それだけ,多くの視点で人や物事を観察したり考えたりしているのだとか.

皆さんはいくつかけましたか?
多くの視点を持っている人は,ある事柄に対して別の見方でアプローチできる,つまり,多面的に物事を見ることができる,ということだと思います.この能力が,インタビュー記事などを書く際のインタビュアーとしての「人に話を聞く」仕事の大事なところだそうです.うろ覚えですが,喜劇役者チャーリー・チャップリンが「ある一つの物事について3分間は喋り続けることができるよ」と話したというエピソードを思い出しました.どんな球でもキャッチボールが出来るようになると,対話はきっと楽しいものになるでしょうね.

対話の向かう方向を整える

講演会はとてもアットホームな雰囲気に満ちていて,終始和やかなムードで,紹介されてはじめて参加した僕にもたいへん居心地が良いものでした.
そして得られたいろんな気付き.有意義な初夏の週末の夕刻でした.

質問やインタビューと,我々が身近にしている「ガイダンス」という名前の行為に違いはあるのか.あるいは入社や入学の「面接」は英語では「インタビュー」であるという事実.名前が違えば独自の意味を持つのは致し方ないですが,最終的にそこにあるのは「対話」が原点です.問題はその対話が何を目的になされているか,なんだなぁと思います.対話の方向性というかベクトルというか.「面接」が「インタビュー」に比べて険しい表情をしているのは,そこには形式的な儀式としての”ふるいにかける”というプレッシャーがあるからでしょう.でも,ふるいにかけられるのはインタビュイーとは限りませんよね,特に今の時代.そんなことをぼんやり考えながら,対話の基本は「お互いの理解のための対話」でありたいなぁと思った講演会でした.

※この記事内の写真はイベント企画者である久保月さんから提供していただきました,ありがとうございました.


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