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確率の色々な定義

こんにちは。Mai.です。今回は「確率の定義」についてお話しします。

まず「確率の定義って種類があるの?」と思ったことでしょう。

どの定義でも当てはまることがありますが、定義には様々な流儀や種類があります。今回はそれらを紹介します。それぞれを端的に言えば、「計算しやすい」「直感的でわかりやすい」「厳密性がある」でしょう。

古典的確率

まずは、古典的確率と呼ばれる確率の定義からご紹介します。この確率の定義は、中学・高校で学ぶ確率の定義のことです。つまり、全事象Uに対して、ある事象Aが起こり得る確率P(A)を次で定義します:

P(A)=N(A)÷N(U)

ここで、N(A)やN(U)はそれぞれA,Uが起こる場合の数です。例を見ましょう。1~6まである六面サイコロを一回投げるとき、偶数の目が出る事象をAとします。確率P(A)を計算してみましょう。全事象Uは6通りです。また、偶数は2,4,6の3通りです。よって、Aが起こる確率P(A)は次のように計算されます。

P(A)=3÷6=0.5

学生以来ずっと行っている確率の計算ですね。わかりやすく、なじみ深くて有難い限りです。

古典的確率の定義の良いところは非常に計算が行いやすく、直感的にも理解に難しくないところです。

しかし、難点があります。それは、事象が起こる場合の数が無限通りある場合は非常に厄介です。

例えば「時計の短針をランダムに回して、0時から3時の間を指す確率は?」と言われたら計算ができなくなります。

そもそも全事象が無限通り(もっと言うと非可算無限通り)あるのです。針は角度によりどこを向くのが決まってきますから、角度と言うのは任意の数の値をとりえますね。直感的には0.25と答えたくなりますが古典的確率の定義を用いて確率を0.25と計算することは不可能だとわかります。

統計的確率

次の確率の定義は統計的確率です。これは非常に直感的で、日常でも良く使われる確率の定義です。

ある事象Aが起こる確率を計算したいとします。このとき、N回行ったうち、事象Aが起こった回数をx回としたときの比率x/Nをその事象が起こる確率と定義するものです。

例えば、コインを投げたときに表が出る確率を計算したいとします。コインを1000回投げて表が560回出たときに、表が出る確率を560/1000=0.56とする。これが統計的確率です。コインを10000回、1000000回と増やしていけば、表が出る確率は0.5に収束します。

これは大数の法則と呼ばれています。統計的確率は、非常に直感的で日常でも活用しやすいのが利点です。

しかし、数学的(厳密)に確率として定義できません。また、上記のような簡単な例であれば確率が収束することが言えますが、一般的な事象に対してその確率に収束するかという議論はかなり難易度が高くなります。つまり、確率が収束するかどうかも実際のところは不明というわけです。極限(無限を扱う分野)という概念は、収束するかどうかわからないものに対して議論しにくいのです。

公理的確率

上記2つの確率は、日常で使うには便利であるが、どこか欠点と呼ばれそうなところがありました。それを克服し、完全(?)に定式化されたものが公理的確率です。

詳しくこの定義を書こうとすると、数学科の大学3年生で学ぶ測度論というものを出してこなければなりませんので、簡単に述べることにして雰囲気だけでもつかんでもらおうと思います。

公理的確率とは「どのような集合(事象)に対して確率が定義可能か」というところから出発します。もっと言うと「集合を測るとは何か」から始めることで、確率を完全に定式化します。そのような、集合を測ることが可能な空間を可測空間などと呼ばれます。この可測空間に確率を定義します。さて、私たちが思う確率とは、最低限どのような性質を持つべきでしょうか。それは次の3つです:

1.全事象の確率は1

2.確率の値は0以上を取る

3.互いに交わらない事象の和集合の確率は、各事象の確率の総和に等しい

この条件を備えた可測空間と確率関数(ある事象から、0以上の実数に対応をつけるもの)をまとめて、確率空間と呼びます。

以上の3つの公理(誰もが"そうであろう"と証明なしに認めるもの)があれば、余事象の確率や和事象の確率などもすべて導かれます。

上記の2つの定義では扱えなかった無限についても扱えます。なぜなら、可測空間の中にある集合は無限に要素を含む集合でも構わないからです。

公理的確率はやはり、ほぼ完璧に確率を定義し、数学的に非常に扱いやすく、厳密性を欠かさずに議論できる大きな利点があります。現代の確率論はすべてこの定義を用いて理論が作られているそうです。

しかし、この定義は初学者にはあまりにも意味が不明というところです。そもそも「集合を測るとは何か」と言われた時点で頭の中に「?」がたくさん浮かんでいることでしょう…。詳しく知りたくなった方は、「測度論」「ルベーグ積分論」「面積不確定集合」「確率空間」などで検索するとよいでしょう。

数学のような抽象化された世界を理解するというものは、非常に難しいものです。私もこの測度論と呼ばれる分野の理解には非常に苦労しました(今はほとんど理解できないと言っても過言ではない)。

まとめ

上記で紹介した確率の定義はどれも間違っているというわけではありません。それぞれの定義には一長一短があるのです。使いどころは重要になってきますが、良い所も悪い所も理解した上で使えるようになるといいですね。それは確率の定義だけにならず、色々なことでもそうだと思います。人間関係においても、相手の良い所と悪い所を理解し、お互いがメリットとなる関係に発展させられたらいいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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