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「コールセンターもしもし日記」を読みました

「コールセンターもしもし日記」吉川 徹著 
文字通りコールセンターのオペレーターの方が書かれた本です。
たまたまネットのタイムラインで見かけてちょっと読んでみたら、まあ面白い。
自分も同じような仕事をしているので、答え合わせのような気持ちもありました。私の苦労なんて甘いのかしら、もっと苦労している人がいるのかしら、とか。
あるいは、うんうんわかる!と共感して自分も頑張ろうって思えるんじゃないかしら、とか。
でも、読後の私の感想はちょっと違ってました。

もちろん業界の裏話的な内容は盛り沢山。
私とは扱う商品が違うので新鮮に読めました。
そして登場するクレーマーたちは、まあ、私にも覚えがあるような人ばかり。
欲しかった共感は得られたわけです。
でも、読後私の心に残ったのは、著者の人生の捉え方というか、生き様というか、著者の人となりそのものだったのです。

この本にもあるけれど、コールセンターという職についている方の多くは派遣社員など非正規の方が多い。
私も一応企業の社員ではあるけれど、準社員みたいなヘンテコであやふやな立場。
かろうじて各種保険には加入しているものの、時間給だし退職金もないし。
ボーナスなんて雀の涙、毎月の給料の赤字分の補填みたいなもんだし。
ほんとに食べていくだけで精一杯。
そしてこの著者も多くの登場人物もそんな立場で仕事をされている。

業務の内容に加えて赤裸々にご自身の過去や経歴が記されていて、決して順風満帆ではないこれまでの人生が伝わってきます。
でも、なぜか清々しい。
読んだ後、私の気持ちはとっても晴れ晴れしていました。
それは、著者が自分の人生をきちんと受け入れて、自らの意思で丁寧に生きているからではないでしょうか。
多くを望むのではなく自分にとって大切なものだけを大切にして生きている、そんな潔さを感じます。

さて、自分はできているでしょうか。
良いことも悪いこともきちんと受け入れて、自分の力で人生を全うしようと決意できているか。
この本はそんな問いかけを与えてくれました。

著者の子供さんが大人になって、ひと段落ついたところでのこの本。
私自身も子供が成人し、なんとか自分で歩いていけそうだと確信したところ。
私も著者を見習って、きちんと自分の人生に向き合い、楽しんで丁寧に、そしていつも新たなことに期待して、歩んでいきたいと思います。

吉川さん、大事な体験を本にしてくださってありがとうございました。


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