ベルサイユ宮殿のトイレで起きたカオスな話
史上最強の10連休のゴールデンウィークにパリ旅行に挑んだ私たちが一番最初に向かったのはベルサイユ宮殿だった。
Nと2人の海外旅行はこれで4カ国目で、せっかちで無理な予定を詰め込むクセがあった私達は多少成長し、少しずつ余裕を持って旅行が出来る様になっていた。
臨機応変が得意で不機嫌になったりせず、何時間でも喋っていられる私たち2人にとっては余裕だったが、ぶっちゃけ思っていた50倍くらいベルサイユ宮殿は混んでいた。ていうか入り口が見えない、どこ?これは何の列デスカ??
↑見渡す限り人。
(一応午前中)
それはそれは長蛇の列で、結果から言うと宮殿に入るまでに3時間半以上並んだ。大きい観光地だけど、ここまで並ぶとは思っていなかった。
ベルサイユ宮殿を観終わったらあそこに行って、次は…と考えていた私たちだったが、その列を見て今日のほとんどをベルサイユ宮殿に費やす作戦に変更せざるを得なかった。
それでもパリに着いて1日目、最高の天気に止まらないワクワク!!
この宮殿に入ることが出来るなら、何時間でも待てる!!!
ということで、この待ち時間の間にトイレに行ったNは1時間帰ってこなかった。
Wi-Fiは2人で1台しか持っておらず、この環境の中つながるフリーWi-Fiなど無いので、Nとは連絡が取れなかった。
しかもこんなに人だらけ、この列を抜けて探しに行くわけにもいかないし、Nは私のことを探し出せるのだろうか…
不安が止まらなくなった時に「いたいたー!」と帰ってきたNは「トイレめーーっちゃヤバイ!今行ってきた方が良いよ!」と言うので何がヤバいのか分からないけど私も行くことにした。
トイレらしき目印も無いが、明らかに扉から女性たちがはみ出ているゾーンがあったので、
そこにいた白人のお姉さんに尋ねると「トイレっぽいよ」と教えてくれた。
とりあえず並んでみる。というかちゃんと列になってなかったので紛れながら合間を進んでいく。トイレっぽいものは見えない。
なんか暇だし、一応宮殿内に足を踏み入れたということで写真を撮ったりしてみた。
合わせ鏡の間を進む。つもりが全然進まない。
回転率が悪い…??トイレほんとにある…?
さっきトイレっぽいと教えてくれた白人は私のかなり後ろにいた。通勤ラッシュに慣れている日本人の私はこのトイレ待ちの人ゴミをガンガン前に進んでいたらしい。
だけどもうこれ以上は進めない。
前には中国人団体ツアー客らしきおばさんたち。とても声が大きい。存在感も大きい。
その中国人の1人が私にめちゃくちゃ話しかけてきた、中国語で。さっぱり聞き取れずアタフタしていると、隣にいたらしい日本人の綺麗な女性が助けてくれた。
「ティッシュ持ってるか聞いてるみたいですよ」と、とてもスマートで優しかった。
私はというと中国語のティッシュのティの字も聞き取れなかった。ついでにティッシュも最後の一枚だったのであげることは出来なかった。
時間の無駄だし、情けない。
後ろを見るとさっきの白人のお姉さんはお母さんらしきおばさんと、娘なのか4歳くらいの女の子と話していた。どうやら家族旅行らしい。そしてこの家族はどうやらアメリカ人のようだ。
ようやく綺麗な列になってきたところでなかなか進まない。既に30分はここにいる。少しずつ、ほんの少しずつ列は進み、ようやく分かったのはこの人ゴミに対してここにはトイレがひとつしかないということだった。トイレは日本でいう多目的トイレのようなものだった。
そりゃ進まない。足が疲れてきた。尿意も無かったのにもはやトイレに行きたい。
本当に列が進まなくなった。
1人の女性がなかなか出てこなかったのだ。
女というのは何故こんなにトイレが長いんだろう。海外でも同じだったのか。
私と同じ思いを抱えた周りの女性たちが徐々に声を上げ始めた。
中国人たちはドアをガンガン叩き「何してんの?!早く!!!」みたいなことをしているし
アメリカ人のおばさんは「何分ここにいればいいの、もうウンザリだわ!」と言っている。
ようやくトイレに立て篭もった中国人の女性が悪びれもなく出てくると、待っていた中国人とアメリカ人のおばさんが各々の母国語で会話し始めた。通じ合わないはずなのに通じ合っていてなんかすごい。
ア「いい加減にして!急いでよ!」
中「わかってる!急いでるけど一個しかないのよ!」
ア「子供よ!我慢も限界があるの」
中「子供!?急ぐからもう少し頑張って!」
4歳の女の子はというと、もじもじしながら、でも騒いだりはせずにお母さんの顔を伺いながら待っている。むしろ女の子の方が落ち着いている。
そして進まない列。飛び交う英語と中国語の会話。まさにカオス。
「これ以上待てないわ!!この子がかわいそうよ!どうにかならない?!」
アメリカ人のお母さんがどんどんヒステリックになっていく。でも親子の前にはあと20人はいる。そのほとんどが中国人団体ツアーのグループなのだ。
ここで突然列がグングン進む。
トイレの方を見ると、トイレのドアはあけっぱなしで10秒刻みくらいの速さで中国人おばさんたちが1人ずつ出ては入っていく。
1人が用を足している間に1人が手を洗い、1人はズボンを脱いで待っている。まさかの3人同時スタイル。私も知らない中国人に見られながら用を足さなきゃいけないのだろうか、嫌過ぎる。
チラッと日本人の女性を見ると同じこと考えてるんだろうな、みたいな顔をしていた。
ここまでして回転が良くなっても、お母さんのヒステリックはどんどん酷くなっていく。
当たり前だ、4歳の娘がトイレを1時間以上待つなんて。もし私が4歳で最初から尿意があったとしたらもう既に限界突破している。
「どうしたらいいの、もうこれ以上は、、!!」とお母さん。
残り10人切ったあたりで、人ゴミをすり抜けながらズボンを下ろした4歳の女の子が先頭までやってきた。限界だったのだろう。
一緒にお母さんも先頭までやってきた。
まさかのお母さんもズボンを下ろしていた。
ついでにお前もかよ?!とは思った。
「お願いよ…この子を先にトイレに入れてあげて…お願い…」
ヒステリックを超えてeveryone…please…と言いながらお母さんは泣いていた。(ズボンを下ろしている)(子供は冷静)
2人を見た中国人ツアー客たちは行け行けと譲り、親子はトイレに消えていった。
2人がトイレに入っている間の待列はまるで、病院で大掛かりな手術が終わるのを待っている親族のような、そんな空気でとても静かだった。
水が流れる音がする。
鍵があいた。
「みんな本当にありがとう…!!間に合った、間に合ったわ!!ありがとう!感謝してる…」
お母さんは涙ぐみながら何度もお礼を言った。
女の子もthank youと言いながら中国人たちに手を振る。
中国人たちをはじめ、拍手が起きる。私も美人な日本人のお姉さんもつられて拍手をする。
thank you、thank youと言いながら親子は消えていった。嵐のような時間だった。
なぜかこんなところで、仲の悪いアメリカ人と中国人の人間味溢れるドラマを見てしまった。
拍手がおさまり、待ち列は再び進み出す。
人は優しい。国籍なんて関係ない。公共の場では気遣いが必要だ。例えば3人で同時にトイレに入ったりすることだって、誰かの為になる気遣いのひとつだ。
そう思いながら1人でトイレに入り、鍵をかけた。私は1人でトイレに入りたいので。
そして宮殿へ。
トイレ待った甲斐はありました。
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