そーだ、猫のおやつを持ち歩こう
僕は一人暮らしを始めて学校以外で友達はできましたか?と聞かれたら
「はい!1匹できました」
と、答えるだろう。
僕の学科は理系の中では、少し美術寄りで、数ヶ月に一度作品の提出がある学科である。
目的を持ち、自分の思いを込めた作品をつくり出して、点数をつけられる課題は、精神が未熟な僕には、なかなかきつい課題である。
作品の制作には何日間もかかり、愛着が湧く、そして、自分の作品が1番いいんじゃないか?と錯覚するようになる。そんな、錯覚に陥っている時に、自分の作品がそれほど優秀でないと採点されると、自分の人格すらも否定されているような気分になる。
本当に、先生方に対して、こいつらマジで…と、何度も思っている。
だから、そんな課題で思ったような成績が取れなかった時、正直本当に悔しくて泣きそうになる。
だって、何回も思い悩んで、何回も徹夜して、何回も手を抜こうとする自分を殺してきたんだもん。
才能や点数は棚に上げて、僕は毎回、作品の制作に一生懸命に取り組んでいると自己評価している。
その日は、毎度のことだが夜中まで課題をやっていた。
小さな部品を切り出して、ちまちま模型を作っていた。
模型作りは、課題の提出間際の作業である。なので、とても不安で頭がおかしくなりそうになりながらの作業である。
この作品は自分の表現したかったことが表現されているのだろうか…
みんなどのくらいの完成度の模型を作っているのだろう…
この作品褒められるかな…
結構かっこいいと思うけどなぁ…
なんて言葉が、常に頭の中をぐるぐるしている。
そんなことを常に考えながらやっているので、恐らく普段よりかなり作業が遅くなり、夜中までの作業になっているのではないかと思う。
まぁ、何はともあれ午前の4時頃に模型が完成した。今から寝たとしても、明日の午前9時には大学に行かなければならないため、寝るほうが遅刻の危険があると判断した僕はコンビニへ夜食を買いに行った。
すると、僕のマンションの自販機のすぐそばで、目がモスグリーンの茶トラ猫が僕をじーっと見ていた。僕はその猫を無視して、自転車でコンビニに向かった。
僕は某コンビニでバターチキンカレーの温めを断って購入した。部屋で熱々のまま、ゆっくり食べたいと思ったからだ。
自宅に着くと、まだ、あの猫が同じ場所にいた。お腹空いてるのかなっと思ったことに加えて、夜中なので変なテンションだったこともあり、Uターンしてコンビニに猫餌を買いに行った。
コンビニで猫餌と、紙皿を買って、さっき断った温めを数分後にお願いするという僕の奇行に店員さんは丁寧に対応してくれた。紙皿を買ったのは、バターチキンカレーを猫にあげようだとか、猫餌を少し分けて貰おうと思ったからではない。缶のタイプの餌しかなかったため、開け口で、猫が舌を怪我することを危惧したからである。
そして、自宅に着くとまだ、その場所にあの猫が佇んでいた。僕は駐輪場で猫餌を開けて、紙皿に盛り付け、警戒されないように猫から少し離れたところに猫餌を置いた。すると、猫が僕に近寄ってきて猫餌を食べ始めた。
僕が恐る恐る近づいても、何も気にすることなく食事に夢中になっていた。相当お腹が空いていたのか、猫にとって僕は気にするほどのことでもない小さい存在だったのだろう。
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