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ひとり暮らしで同棲
僕は生物が大好きである。人をはじめ、虫、植物に至るまで、生きとし生けるもの全てを愛おしく思う。
そして、小さい頃から八百万の神の教育をされてきたせいか、物にも親しみや愛情を向けやすい性格である。
そんな、僕が一人暮らしを始めた。一人暮らしを始める時に、ペットを飼うという夢が叶うかもしれないと、期待していた。
しかし、大学生の一人暮らしであることを理由に、動物を飼うことを諦めざるを得なかった。なので、1人で寂しい大学生活を送っていた。
こんなご時世のため、学校に通うのは月に数回。そのため、必然的に人と話す機会が月に数回となっていた。そんな日々の中に僕は小さな楽しみを見出していた。
それは、駅の中にあるガーデニングショップを眺めることである。色鮮やかな花や生き生きとした植物たちが立ち並ぶガーデニングショップを眺めて、ワクワクした気持ちになっていた。
僕のお気に入りはガジュマルという、太い幹と深緑色の葉が特徴の可愛らしい観葉植物である。店頭には、4本のガジュマルが並んでいた。僕はそこを通るたびに、品定めをするかのように、眺めていた。
僕は、右から2番めの、幹の上部から愛嬌のある細い枝が生えており、その枝からぴょんぴょんっと2枚の葉が生えているガジュマルに目星をつけていた。
僕はそのガーデニングショップを通るたびに、あのガジュマルまだあるなぁ、買おうかなぁと思いを巡らせていた。
その度に、観葉植物に1500円かぁ〜と思い買うことを躊躇していた。
しかし、そんな日々が2週間ほど続いたある日、
4回牛丼食べなければ買えるではないか!
と気づき、牛丼と引き換えに、あのガジュマルを家族に迎え入れることを決心した。
月末、ガジュマルのために取っておいた1500円を財布に入れて、今後の同棲生活に胸を躍らせながら、学校に向かった。授業が終わり、軽い足取りで駅中のガーデニングショプに向かった。
駅に着き、ガーデニングショップへ入ると、ガジュマルは3本しか余っていなかった。
しかも、よりによってあのガジュマルが買われていた。
僕は彼女(ガジュマル)との、同棲生活を楽しみに生活してきたため、とても胸が締め付けられるような気持ちになった。彼女と2人で過ごす、爽やかな生活が失われてしまったのである。
僕は、あぁ、無くなってると思った2秒後、その隣にいつも並んでいたガジュマルを購入していた。
その日の僕は、ベットに入り目を閉じるまで、ずっと理由のわからないモヤモヤした気持ちに襲われていた。僕は、恐らくこのモヤモヤは、買いたかったものを買えなかったやるせ無さだろうと思っていた。
しかし、モヤモヤはやるせ無さではなかった。
僕は、目的のものを求めて、その目的のものがなくなってしまった時に、あり合わせのものを即購入してしまったという行動にモヤモヤしていたと気づいた。
僕にとってあのガジュマルは、同棲間近の彼女のような存在になっていた。
彼女はこの部屋のどこが心地よいだろう、食事はどんなタイミングで取るのかなぁ、一緒に日向に出てお昼寝なんて幸せな時間だろうなぁなど、ずっと彼女との同棲に胸を躍らせていた。
なのに、そんな彼女が事故や病気など、なんらかの理由で居なくなってしまった時、僕はその彼女の隣にいる好きでもない女の子を家に持ち帰ってしまうのだろうか?
そんな、恐ろしい思考を持つ人間いるだろうか。
この一連の行動に私は一日中モヤモヤしていたのである。
目を閉じてそんなことを考えていた時、最も重大なことに気付かされた。
それは持ち帰った女の子の気持ちを何一つ考えていないということである!
僕はそのことに気づき、部屋の隅で静かに佇んでいる彼女に少量のお水を飲ませ、
「ごめんなぁ〜、絶対大事にするからなぁ」
と、とても優しく愛情深く、抱いて眠った。
僕たちは、同棲を始めて一年になる。
おやすみなさい。
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