好きなことをずっと続けられるのは奇跡。

すこし前にこの本を読んだ。

そして今日、amazonプライムで映画版をみた。

こちらは、幼いころから音楽という才能に恵まれて育ってきたピアニストたちのお話。

お門違いなのはわかっているのだが、この作品に触れると、とても羨ましい気持ちが湧き上がり、すこし切なくなる。

才能があって、それを支えるバックグラウンドが合って、音楽を続けられるひとがとてもうらやましい。
純粋に、そう思う。

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天職だったドレススタイリストをやめる直前の2018年頃。
当時勤めていたホテルが浦和にあった。
通勤で毎日通っていた蔦屋書店に、当時大々的にこちらの本が並んでいた。

ずっと読みたいと思っていたものの、読むタイミングがなかったこの本。
最近、いつものように図書館へ行ったとき、ふとこの本と目が合って借りてきた。

話題になっていたのは覚えていた。
なんとなく印象的な題名だったけれど、どんな内容か全く知らなかったので、電車に乗って読み始めて驚いた。
まさか、ピアノ調律師の話だったなんて。

この日、電車に乗るのは久しぶりだった。
今わたしは休職しているし、コロナも世間をにぎわせている。
できたらそんなに電車に乗りたくはなかったのだが、それでもこの日はどうしても乗らなければならなかった。

なぜなら、わたしのフルートを、新宿のムラマツまで行って調整に出さなければならなかったから。

フルートのタンポ(指で押さえるキーの裏側の部分)の皮の端が、すこし破れてしまっていたし、前回調整に出してから、ちょうど一年がたっていたので、そういうタイミングだったから。

フルートの調整とは、まさにピアノの調律のようなものだ。

一年ぶりにフルートを調整しに行く電車の中で、たまたまピアノ調律師の話を読むなんて、こんな奇跡のタイミングあるかな。

やっぱりわたしはどうにかフルートとつながっていたい、という気もちが強いのだろうか。
やっぱり運命?
う~ん。ただ都合よくそう思いたいだけなのかもしれない。

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わたしは中高6年間、吹奏楽部でフルートを吹いていた。
大学では、オケのレベルが低すぎて、所属することをやめた。
すこし市民団体に所属していたのだが、それ以来13~4年、フルートに触っていなかった。

でも2019年、素敵な先生と出会ったことがきっかけで、フルートを再開することにした。
今も細々と練習を続けていて、今後なにかに投稿でもできたらいいなと思ったりしている。

以前この記事で、すこしフルートについて触れている。

そんなわたしの一生の思い出の曲は、フォーレのファンタジー。

これは、高校一年生の時、フルートのソロコンクールで演奏した曲。
このとき、わたしはこの曲で千葉県で一位となった。
わたしのフルート歴の中で獲得した、最も良い賞だ。

そのころのわたしはフルートを吹くことに熱中していた。
ほぼすべての時間をフルートに捧げていた。
フルートを長く続けるってどうなのだろう。
音楽大学にはいったら、フルートをさらに極めることができるのだろうか。
とても興味があるな。
頑張れば、わたしも入れるのだろうか。

と、当時はなにか漠然としたふわふわとした夢のかけらのようなものが見えていたのだろうと思う。

県で一位を取ったコンクール。
あのときは毎日死ぬほど吹いていたけれど、全然苦しくなかった。
一日10時間くらい吹いていた日もあったし、休みなんてほぼなかった。
けれど、思い返すと、毎日自分の音と向き合うことがただただ楽しくて、熱中していた。
わたしの大切な思い出の時間のひとつ。

わたしの人生で、あそこまで一つのことに熱中することは、あれ以降なかったと思う。

あれがもう、20年以上も前のことになってしまうのか。
なんて感慨深い、というか遠い昔のことになってしまったのだろう。
あれをそのまま続けることが出来ていたら、この胸のちりちりした痛みはなかったのだろうか。

いや、今に至るまでのすべてが今の自分を形づくっているのだから、わたしの選択に間違いなんてないのだけれど。
今の幸せがあるんだから、後ろを振り返る必要なんてないのだけれど。

『あのときに音大を目指さなかったこと』が今のわたしを作っていることは確かなことなのだけれど。

ただ。
もしあのとき両親がわたしの音大行きをバックアップしてくれていたら。
もしかして違った未来があったのかもしれない。
そんな気持ちがないわけではない。
現にあれ以来、あそこまで熱中するものに出会えていないのだから。

当時は、音大に行くなんて人は周りには見当たらなかった。
だから、音大ってどんなものなのかわかっていなかった。

今なら、『とにかく莫大なお金がかかる割に将来が保証されるわけではない、なかなかのいばらの道』ということが何となくわかるのだが、当時のわたしにはわかっていなかった。

とりあえず両親には、『美明ちゃんが行きたいなら応援する』って言ってもらったけれど、とてもお金がかかるみたい、と言われてしり込みしてしまった。
わが家は中流家庭でお金が潤沢にあるわけではなかったし、音大に進めたとして、将来の道がどうなってしまうのか不安があった。

だから、自分で自分に色々言い訳して、言い聞かせて、普通の大学に進むことを自分で決めた。

でも。
心のどこかに『わたしはフルートを諦めたのだ』という気もちがくすぶって消えずに今も残っている。

なんとなく、音楽を生業にしているひとをみると羨ましくて胸が苦しくなるときがある。

どんな形であれ、音楽を仕事にできていたら?とよぎることが今でもまだあるのだ。

だからこそ、今後娘たちがもしこういう状況になったときは、全力で背中を押せる母でありたい。

わたしはなんとか親になれたわけだし、娘たちが『自分がやりたい方向に突っ走れるようにサポートする』ことを徹底したいのだ。

人生において、そこまで熱中できるなにかに出会えることは奇跡だから。

わたしの娘たちはどんなことを見つけるのだろう。
絶対、大事なものを見つけられると思う。

彼女たちの成長を見守ること、応援できることは、わたしの人生の楽しみでもある。

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