鳥取大山登山旅行記~妖怪もちょっとだけ~その5
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「僕も山頂ムリだ。膝が笑ってる」
アブをまくために速度を上げたのが足の負担になったらしく、太ももが震えている。
「助けてくれてありがとう」
「いやいや」
しかしアブがこんなにしつこく一人を狙ってくるものとは知らなかった。後で調べてみたところ、アブは温度が高く、二酸化炭素を多く排出するものに近付く習性があるという。他の登山者よりオーバーヒートして、ハァハァしっぱなしだったのが、狙われた原因かもしれない。
アブ除けにはハッカ油が効くという。次に山へ入る時には忘れないようにしよう。
アブ・いも虫事件を抜きにしても、登りは本当に辛かった。ヨレヨレのフラフラになってどうにか5合目を過ぎ、行者谷別れで今度は急な階段を降りてゆくことになる。ルパン三世のように駆け抜けたらラクそうに見えるが、実際にやったら大ケガだ。
転落しないよう慎重に進む。息は登りほど苦しくない。鳥や虫の声を楽しむ余裕も出てきた。
ふと視界が開けた。白い石が敷き詰められた、木のない場所に出た。河原に似ているが、川はないようだ。
ここでホテルにお願いした登山弁当を食べることにした。時刻は1:00過ぎ。3時間ほど歩いていたのか。
「あっ、ほら!」
「大きい!!」
黒くて太いトンボが飛び回っている。おそらくオニヤンマだろう。これほど力強く美しいトンボを見るのは初めてだ。
「アブをやっつけてくれないだろうか……」
白い石の谷を抜けると、またひたすら下り階段が続く。1時間ほど歩いたところで、寺か神社のような古い建物が見えた。
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