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2023年の記事の振り返り〜「システム思考」で考える「交通渋滞」〜


はじめに

GEOTRAインターン生の伊藤です。

2023年は、GEOTRAの記事を読んでいただきましてありがとうございました。
本記事では、「システム思考」を用いて、これまで投稿した記事を「交通渋滞」という観点から要約してご紹介します。

背景:システム思考とは

システム思考とは、複雑な問題の大局的な流れや全体像を捉え、異なる要素とのつながりを把握した上で、物事の相互関係を分析する問題解決のアプローチです。

システム...互いに関係性を持っている複数の項目から構成されるある一つのまとまり

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システム思考を可視化するツールの一つが、「因果ループ図」です。
因果ループ図は、システム中の重要な要素を因果関係で結び、複雑な問題構造を可視化するツールです。

図1は、交通渋滞を引き起こす要素の相互関係を表した全体の因果ループ図を示しており、図中の矢印は要素間の因果関係及び関係性の方向を示します。

図1: 交通渋滞に関するシステム思考の「ループ図」
出典:Systems approach, systems thinking, system solutions

更に、図2が示すように、各都市及び企業は、「道路」というリソースの供給量と需要量の間のバランスの最適化を行うことで渋滞緩和に取り組んでおり、図1中の各要素に対して作用する施策を行っています。

図2:渋滞対策の施策の概観、当社作成

以下では、当社noteでご紹介した当社事業及び海外事例と、図1中の各要素との関係を詳細にご紹介いたします。

交通渋滞の要因と具体的対策事例

1.道路建設ループ

図3は、道路容量の不足が原因で生じる交通渋滞を引き起こすループ図を示しています。

図3が示すように、同ループ内では、人々の「渋滞解消の圧力」の増加は、高規格の「道路建設」の増加、及び「道路容量」の増加を促進します。
「道路容量」が増加すると、交通の流れがスムーズになり、自動車の平均走行速度が上昇し、「移動時間」は減少します。
一方で、「移動時間」が増加すると、「渋滞解消の圧力」は再度増加し、各要素はループのように関係しています。

図3:道路建設ループに対応する施策の具体例、当社作成

具体的対策事例

GEOTRAユースケース:鳥取県・広域交通流の分析

概要
交通渋滞を緩和し、移動を短時間で行うために、道路ネットワーク改変シミュレーションを行い、道路整備による道路容量の最適化を実証しました。
GEOTRAが提供するビッグデータ及びシミュレーション技術を用いた渋滞要因の分析評価や、観光地開発及び道路整備による交通流の変化を予測しています。

使用データ
-携帯位置情報等の交通データ
-道路ネットワークデータ

オーストラリア・メルボルン州の事例:センサーデータに基づく道路敷設

概要
データを活用して、渋滞解消の圧力に対応し、道路を建設し、道路容量の増加を促進する施策です。
都市内のセンサーデータを分析し、渋滞要因を特定し、渋滞の頻度が高い道路付近での新たな道路の敷設及びリアルタイムでの信号制御を行っています。

使用データ
-都市内部に設置されたセンサーデータ
-道路ネットワークデータ

2.交通量増大のループ

図4は、交通量が増加することで生じる交通渋滞を引き起こすループ図を示しています。

図4が示すように、同ループ内では、人々の「自動車の相対的魅力」の増加は、「自動車利用頻度」の増加を引き起こします。
更に、「自動車利用頻度」及び「地域内の車両総数」の増加は、地域内での「交通量」の増加を引き起こし、「移動の長時間化」に繋がります。
「移動の長時間化」は「自動車の相対的魅力」を低下させる一方で、渋滞解消の圧力を強めます。
同状況のように、各要素は、交通量増大という点でループのように関係しています。

図4:交通量増大ループに対応する具体例、当社作成

具体的対策事例

海外事例:ロードプライシング

概要
自動車利用頻度の減少を促進し、交通量の減少に取り組む施策です。
自動車に通行料を課すことで、交通渋滞を緩和します。
リアルタイム交通データを活用して混雑状況に合わせたダイナミックプライシングを用いて、走行する自動車に課金を行います。
同施策を通じて、各都市は通勤時等での自動車利用頻度の減少を促進しています。
使用データ
-都市内部に設置されたセンサーデータ
-リアルタイム交通データ

関連:中国、ナンバープレートを用いた走行制限(詳しくはこちらから)

中国の事例:ナンバープレートの発行・所有制限

概要
都市の交通量を地域内の車両総数を制限することで、抑制しています。新規購入台数の増加を抑制するために、走行に必要なナンバープレートの制限を市政府が、抽選やオークション形式を用いて制限しています。

使用データ
-交通量調査
-自動車保有者数データ

3.公共交通機関離れループ

図5は、公共交通機関を利用する人々が減少して、自動車の利用が増加することで生じる交通渋滞を引き起こすループ図を示しています。

「自動車利用の相対的魅力」が高まることで、「公共交通の利用者数」が減少します。
「公共交通の利用者数」が減少した場合、「公共交通機関の財政赤字」は増大化し、「公共交通利用の相対的魅力」が減少し、自動車の利用が増加します。
同状況のように、各要素は、公共交通機関離れという点でループのように関係しています。

図5:公共交通機関離れループに対応する具体例、当社作成

具体的対策事例

以下の二つの施策は、公共交通の利用を促進し、公共交通離れを抑制するために行われています。

アメリカ、ワシントン州の事例:インセンティブの伴う交通アプリを用いた公共交通への移動手段の移行

概要
自動車に対する公共交通の相対的魅力を高めることで、自動車利用の相対的魅力を低下させ、交通渋滞を緩和する施策です。
ナビアプリを地域住民に提供し、アプリを用いた自家用車以外の「環境に良い」移動に対して、金銭的・心理的インセンティブを提供することで、公共交通の利用を促進して、交通渋滞を緩和する取り組みです。

使用データ
-携帯位置情報等の交通データ
-CO2排出データ

関連
-イスラエルの事例:インセンティブを伴う移動時の「買い物」サービス (詳しくはこちらから)
-中国の事例:ダイナミックプライシングを用いた空港向けシャトルバスのオンデマンド交通(詳しくはこちらから)

スウェーデンの事例:電動キックボードの安全な利用環境

概要
電動キックボードの安全性を高めることで、公共交通の一部となった都市内のレンタル電動キックボードの利用者数の増加を促進し、自動車利用頻度を抑制する施策です。

使用データ
-電動キックボードの走行データ
-道路ネットワークデータ
-保険会社の事故情報データ

関連:
-オーストラリア、メルボルン州の事例:20分生活圏(詳しくはこちらから)
-スペイン、バルセロナ市の事例:歩行者空間を拡大するスーパーブロック(詳しくはこちらから)

最後に

本記事では、2023年にご紹介した海外事例を中心に、交通渋滞を引き起こす要因に対する施策をシステム思考を用いて要約し、ご紹介しました。

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