中国・ナンバープレートによる車両台数の制限による渋滞対策
はじめに
GEOTRAインターン生の伊藤です。
昨今、各国の大都市が渋滞問題に直面しています。
本記事では、中国の大都市における自動車保有台数及び道路の交通量を制限する取り組みについてご紹介します。
背景
中国国内の大都市では、深刻な渋滞問題と、自動車の排気ガスによる大気汚染を改善するために、図1が示す「自動車用ナンバープレートの所有制限」及び「ナンバープレートの末尾の数字に基づく走行制限」の二つの施策に取り組んでいます。
中国首都北京市内では、個人の自動車保有台数の急増を抑制するために、2011年1月より同市では、ナンバープレートの所有を制限しています。
市政府は、希望者に抽選でナンバープレートを振り分ける施策を導入しました。
車両のナンバープレートが交付されなければ、市民は自動車の購入資格が得られず、2019年時点で待機期間が約40年と統計的に予想されています。
※2023年11月時点では、自動車購入制限の最適化を行うために一部規制緩和をしています。
施策
1. 個人の自動車保有量の制限
概要
個人の新車購入需要を抑制するために、中国の一部の市や省は、ナンバープレートの発行を制限しています。
北京市では、プレートを振り分ける抽選方式を導入しました。
抽選会は、2019年時点で2ヶ月に1回行われ、無料で参加できることから2019年には、発行部数が一年あたり38,000枚であるのに対し、推計334万人が各抽選会に参加するため、同年の当選率は約1.1%となりました。
更に、ナンバープレートの種類をガソリン車とEV車で分け、EV車のナンバープレートの方を多く発行することで、個人のEV車への移行を促進しています。
一方、上海では、ナンバープレートの発行を制限するためにオークション方式を導入しています。
上海市政府は、車両ナンバー数の新規発行数を定め、毎月第三土曜日に、オークション形式で販売しています。
2023年5月に行われたオークションでは、113,722人がナンバープレートの発行部数13,214枚に対して入札し、参加者の内11.6%がナンバープレートを取得しました。
オークションでの最低落札額は、自動車を購入するよりも高い、約179万円となり、年々「ナンバープレートの高騰化」が進んでいます。
ナンバープレートの平均落札額は、約190万円となっており、北京市の抽選会と比較して、オークションに参加する心理的障壁が存在することから、2都市間のナンバープレート獲得倍率が大きく異なると考えられます。
結果
同施策の結果として、図3が示すように、北京市では2010年から2011年にかけて、新規登録車数の大幅な減少及び交通渋滞の緩和が確認されています。
2010年と比較して、新規登録車数は57%減少し、同市内を走行する車両の平均速度は、時速22.6kmから25.3kmに上昇、円滑な道路交通に成功しました。
2. ナンバープレートに基づく交通量の制限
概要
中国の大都市では、自動車の所有を制限するだけでなく、市内の自動車のナンバープレートの数字を用いて、走行制限を行っています。
図4が示すように、ナンバープレートの末尾の数字によって、走行禁止となる日及び曜日があり、奇数/偶数日で分類する「オッド・イーブン(The Odd-And-Even (OAE) Policy)」や週に1度走行が禁止される「ワンデー・ウィーク(One-Day-Per-Week (ODPW) Policy)」などが施策としてあり、各都市は両施策を組み合わせながら、交通渋滞や大気汚染等の問題に取り組んでいます。
OAEは各曜日で、5割の自動車の走行制限を行うことを目的とし、ODPW以上に厳格に規制しています。
効果検証
中国河北省廊坊市では、道路上のセンサーを用いて収集した交通データを用いて同施策の効果が検証されています。廊坊市は北京市と天津市の間に位置する中規模都市で、渋滞問題・大気汚染が深刻化しています。
交通渋滞を緩和するための施策として、ODPWを2015年に採用し、図5の通り、7時から20時まで都市内部の通行を制限しました。
廊坊市では、2015年のODPW導入後も、大気汚染が深刻化したことで、ナンバープレート下一桁が奇数/偶数で、2日に1回通行可能日を制限するOAEを2016年の12月の1ヶ月間導入したのち、2016年以降、再度週1度ずつ交通規制を行うODPWを採用しています。
図6は、2つの施策を採用した後の交通量の減少率を表しています。両施策で、交通量の減少が確認されており、特に2日に1回通行可能日を規制するOAEでの交通量の減少が顕著に現れています。
更に、図6の両施策間の交通量の違いが示すように、ODPWからOAEに施策を移行した際、図7の通り、都市内の各地で自動車の平均速度の大幅な上昇が確認され、停車時の排出ガスの減少の可能性が示唆されています。
一方で、統計的に導き出した予想結果と同等の交通渋滞の緩和及び排出ガスの減少が、現れていないことから、禁止日以外を走行する違反車の取り締まりの強化の必要性を、同検証は示しています。
最後に
ここまでご覧いただきありがとうございました。
本記事では、中国で行われるナンバープレートを用いた交通施策及び同施策の効果検証についてご紹介しました。
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