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海外事例研究| 中国、北京:北京首都国際空港、空港シャトルバスにおけるオンデマンド交通とダイナミックプライシングの最新研究 第一弾


はじめに

GEOTRAインターン生の伊藤です。
現在、日本国内の各地の空港では、AIを活用した相乗りスマートシャトルサービスの展開が進み始めています。

本記事では、中国の北京首都国際空港における空港シャトルバスのオンデマンド交通のダイナミックプライシングの導入による最適化に関する北京交通大学による先行研究について、2回の記事に分けてご紹介します。

第1弾 北京首都国際空港における、データを活用したオンデマンド交通の初期運行計画の策定
第2弾 ダイナミックプライシングを活用した、空港シャトルバスの運営の最適化

背景

都市から離れた場所に位置する空港にアクセスするために、シャトルバス等の公共交通の利便性向上が必要です。

現在、日本国内の各地の空港で、「目的地までドアtoドア」を実現するAIを活用した相乗りスマートシャトルのサービスをNearMeが展開しています。
各国で同様のサービスが展開されており、サービスの最適化や応用を行うために学術研究が進んでいます。

本記事では、北京北側に位置する「回天地域」から北京首都国際空港に向かう空港シャトルバスの運行及び運賃の最適化を目的にダイナミックプライシングを取り入れたオンデマンド交通の実用例及び分析についてご紹介します。

図1:回天地域及び北京首都国際空港の地図
出典:Improving the performance of airport shuttle through demand-responsive service with dynamic fare strategy considering mixed demandを基に自社で作成

研究の概要

北京交通大学の総合交通ビッグデータ活用技術研究の研究チームは、空港シャトルバスをより効率的かつ効果的なものにするために、乗客と利用客の双方のニーズを考慮した、乗合サービスを提供するオンデマンド交通の最適化を行う方法の研究を行いました。

中国、北京市の「回天地域」における北京首都国際空港に向かうオンデマンド交通の利用状況やデータの分析結果について、実用例として示しています。

オンデマンド交通とは

オンデマンド交通とは、利用者のリアルタイムの要求や予約に応じて運行される乗合の公共交通です。以下の図2は、個人用タクシーと相乗りのオンデマンド交通の違いを示しています。

更に、オンデマンド交通の運行形態は、以下の四種類に分類され、用途に応じて、様々な運行形態が採用されています。

日本で、空港向け相乗りスマートシャトルサービスを提供するNearMeは、目的地のみ固定し、ドアtoドアのサービスを提供する図2中のSemi-Dynamicの運行形態を提供しています。

一方で、人口減少が進む地方の中山間部でオンデマンド交通が用いられる場合は、高齢者の買い物支援を行うために、高齢者の居住地と複数施設の移動を想定した図2中のDynamicの運行形態が主流となっています。

図2:オンデマンド交通の説明
出典:DRTの運行特性と適用範囲の考え方について及びIncentive-driven transition to high ride-sharing adoptionより改変

実用例

北京首都国際空港が運行する空港シャトルバスは、図3が示すように図2中のFixed (路線・経路固定型)及びRoute Deviation(ルート変更あり、路線・経路固定型)の2種類を採用して運行しています。

同研究チームは、以下の二段階で空港シャトルバスのオンデマンド交通のシステムの構築及び導入を行っています。

1. 初期運行ルートの設定

利用客の移動時間コストを最小化し、シャトルバスの営業利益を最大化することを目的としています。
以下の情報を考慮に入れて、運行計画を設定しています。

  • 利用者の移動情報(出発地、予約時間、空港までの交通手段の移行回数)

  • 航空機の運航情報

  • 運行区域内の道路ネットワーク

2. リアルタイムの予約システムと連動したダイナミックルートの策定

初期ルートの設定後、リアルタイムの需要と連動した「ドアtoドア」のダイナミック・ルートを設計するために、初期ルートの調整を行います。

迂回による空港シャトルの遅れを回避しながら、リアルタイムで予約を車両に送信し、運行ルートを柔軟に調整するシステムを構築しました。

図3:オンデマンド交通の初期運行計画の策定方法
出典:Improving the performance of airport shuttle through demand-responsive service with dynamic fare strategy considering mixed demand より引用

運行計画の策定

同サービスの利用者の移動時間及びサービス運営に関わるコストを考慮して、図4が示すように、初期運行計画の運行数及び運行ルートが策定されました。

5つの経路をシャトルバスは運行しており、各ルートで、大体同じ数のバス停に停車します。図4が示すように、図3中の利用者割合が特に多い地区では3つの路線が運行し、需要が集中するエリアに効果的に同サービスを提供しています。

初期運行計画中の運行ルート及びスケジュールは、区域内の各地点のリアルタイムのシャトルバス利用予約頻度等を考慮し、あらかじめ運行スケジュールは時間の余裕を持って設定されており、柔軟なリアルタイム予約への対応及び、シャトルバスの運行スケジュールの遅延の減少を可能にしています。

同サービスの利用者には、利用時にリアルタイムで、予約時に用いた携帯電話のアプリ上に路線及び到着時間の通知が送られます。

図4:初期運行計画の策定結果
出典:Improving the performance of airport shuttle through demand-responsive service with dynamic fare strategy considering mixed demand より引用

結果

同サービスの運営効率化によって、全ての運行バスで、シャトルバス内の乗客充足率80%以上に達しており、同サービスの運営利益の向上を促進しています。

最後に

ここまでご覧いただきありがとうございました。

本記事では、中国、北京首都国際空港におけるオンデマンド交通の運営効率化に関する研究を紹介する記事の第一弾として、データを活用した空港向けシャトルバスサービスの初期運行計画の策定について、ご紹介しました。

第二弾では、ダイナミックプライシングの活用方法及び最終的なオンデマンド交通の効果についてご紹介します。

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