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テルマエ展@汐留美術館

会期終了の週末だった休日、テルマエ展へ友人たちと行っていた。「お風呂でつながる古代ローマと日本」。
その日本語サブタイトルよりも、英語サブタイトルの方が私には伝わった。「ANCIENT ROME, JAPAN, AND THE JOY OF BATING」。

「テルマエ・ロマエ」という作品があることは知っていた。そのストーリーをメインにした資料展示、という印象を、友人から誘われたときに持っていた。
全く作品を知らないんだけど大丈夫?と思いながら展覧会情報を調べた。

コラボはしているものの、展覧会のメインはストーリーではない。
興味を持ったので行くことにした。

実際にもストーリーに沿った展示になっていたかもしれないが、昔のお風呂文化を楽しむのがメインだった。
ローマの古い時代。日本の昔。
歴史音痴の私には、いろいろと伝わらないところが多く申し訳ないのだが、興味深く楽しんだ。

写真は撮影不可のため見出し画像だけ。展覧会場の出口にあったパネル。

会場ではいきなり、一昨年、家族と母と行ったポンペイ展で見逃した、焦げパンのレプリカがあった。

ポンペイ展に行けば見るものと思っていたが、混雑と母の動きの不規則さに紛れ、焦げパン辺りの展示エリアを完全スルー。そのときの東京国立博物館トーハクには本物が展示されていた。

テルマエ展のレプリカもスルーするところだった。

会場入口すぐの場所にあったのだが、展覧会あるあるで入口は混む。空いているところからどうぞ、という案内の言葉に釣られ、何があるのかも知らないまま通過した。そのまま忘れていたのを友人が止めてくれた。

正しくは焦げパンという名称ではなく「炭化したパン」。いきなりの火山噴火で、リアルに保存されたおしゃれな都市生活。

真っ黒になってしまったパンが美味しいはずはないだろうが、きっと美味しかったんだろうなと思った。柔らかそうにも見えた。

一般的にレプリカというのは…
私自身は、子どもでも騙されないような怪しい物体だったこともある昔を知っている年齢。今のレプリカは、本当に描写が細かくリアルだと感心してしまう。

焦げパンのそばには、おもりが胸像の「秤」があったり。道具なのか飾りなのか悩んだ。決まった重さで作られている胸像より、重いか軽いかだけを判断するための道具ということか。

饗宴に使われた「リブ装飾碗」の、青いガラスのきれいな色を眺めたりもした。剥がれたのか付着したのか、元からではなさそうな白っぽいところも多かったが、古い時代の美しい色を楽しんだ。

ヤギの頭部を模したものか、「動物形リュトン」の水色もきれいだった。やはり白っぽい部分はたくさんあったが。

リュトンはカーブしたコップのようだった。が、細くなる底に小さな穴。

古い時代のリュトンの上から入れたお酒は、リュトンを通ることで神聖なものと思われていた、というような話を後日どこかで見かけた。

会場では友人たちと、飲み終えないと下の小さな穴から零れてしまうとか、何だか強制的に飲ませる道具のような話をしていたような…(※危険な使い方をされませんよう、お願いします)

同じ饗宴のエリアでは、建築で使われるモルタルときっと関係があるに違いない、と思った土器「モルタリウム」も見た。調理用のボウルのようだった。

少し調べると、モルタリウムはラテン語。今のモルタルという言葉に繋がっている様子。混ぜる器それ自体から、混ぜられた物に意味が変化している様子を感じた。モルタルの語源を見てきたらしい。

しばらく会場を行ったり来たりした後。「古代ローマのテルマエ」という動画のお風呂には、ニッチにたくさんの彫刻の像。神像だったのか。ニッチとは言わず「壁龕へきがん」と表現されていた。

調べると、「龕」の一字だけでも、仏像などをおさめておく場所の意味を持つらしい。会場では読み方もわからず何だろうと眺めた。そんな表現の日本語があることを知った。

それは誤字でも何でもなく増えた知識。だが、その付近の動画内では、友人が誤字を発見していた。誤「溶室」正「浴室」だっただろうか。

後半は日本のお風呂の展示。古くからお風呂は楽しまれてきたのだな、と思いながら眺めた。

個人的には…

公衆浴場や宿の温泉など行ったことはあるものの、そこが社交場とまで言わなくても、みんなで楽しく過ごす場所だとか、大きなお風呂だから心地良いとか、そういう感覚はない。
体がきれいになれば満足なので、それを目的に外出することはない。
温泉に行きたいという人の気持ちはわからない。
湯治は理解できる。

家にあるお風呂に関しては、学生時代に「逆サバ読んでるでしょ!?」と、バイト先にいた、田舎が近い母世代のおばちゃんに驚かれたくらい、古い文化を経験している。

自宅ではなく現存しない祖父母宅でのこと。
古い文化を道楽として楽しんでいたようだった。

どれくらい逆サバだったか、というのも会場で感じた。
私が祖父母宅で入っていたことのある五右衛門風呂は、昭和20年代と書かれていたのではなかったか。うろ覚えだが。

私が体験していたのは昭和50年代。
30歳くらい逆サバな学生だったらしいことが判明した。

五右衛門風呂には、熱い場所はどこなのか、どこを触って良いのか確認しながら、木の底板を足で踏んで沈めながら、自分も一人で浸かった。燃料は薪。

五右衛門風呂はその後、焼却炉と化していた。まだ家庭でゴミを燃やすことはよくある時代だった。その前までの焼却炉はドラム缶だった。当然のようにドラム缶よりも丈夫。燃やしてはいけない時代になるまで使われたように思う。

五右衛門風呂の後は、細かく貼られたタイル貼りの浴槽だった。その後は金属。沸かす設備は、金属の浴槽になった頃からと思うが、ガスも燃料に入っていた。

ただ、初めは薪で沸かし、追い焚きはガスが通常という頃には、祖父母宅に住んでいた時期もある。祖父が薪を割る姿も見ていた。バイト先のおばちゃんには「風呂焚き女もしてたの!?」と再び驚かれた話ではある。

自分が子どもの頃のことが、どんどんミュージアムの資料になる時代になっている。

会場の最後「近代以降の入浴文化」エリアでは、どこかで見たことがあるようなグッズも含め、今でも身近なものをレトロに思ったりした。

銭湯で見かけた「入浴の御注意」のホーロー看板。金属にガラス塗料されていることで、湿度の高い場所に使われた素材。
展示されていた2枚の下部には広告。「電球はナショナル」と「テレビはナショナル」だった。

そこで「何でナショナルなんだろう」なんて、トシを誤魔化してはいけません。
会場はパナソニック汐留美術館。
私は、ナショナルブランドがパナソニックにまとめられた当時を知らない年齢ではありません。

うっかりした私は「何で2枚ともナショナルなんだろう」と思ってしまったが、年齢が近い友人たちに、そのまま言うより前には気づいて止めた。

花王のシャンプーや石鹸も見かけた。
シャンプーは固形石鹸のように見えた。
石鹸はベージュで、彫刻のように表面に文字や模様がたくさん。一つ一つがおしゃれな紙に包まれ、木箱に3個入っていた。KWAO SOAPという表記にレトロさが増す感じがした。

その日は、百段階段のレトロな展示も見たので、シャンプーや石鹸、古い化粧品や広告など、関連する展示をたくさん見られた感じだった。

友人の誘いにより、いろいろと面白く楽しんだ展覧会。一人なら焦げパンはスルーだっただろうし、気づかないことはたくさんある。単独行動を好む私でも、一人とは違う楽しさがあることを幸せに思った日。

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