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アメリカや香港に学ぶ

2007年NPO法人地域精神保健機構コンボが、家族学習会企画委員会を立ち上げ、精神疾患をもつ人の家族が同じ家族に伝える教育プログラムの立ち上げを検討し始めました。


当初、参加していたのは、精神科医、大学教員、保健師など専門職の方々でしたが、家族が実施するものということで、関東近辺の神奈川、埼玉、千葉、東京の家族会から家族が参加することになりました。

参加したばかりの頃には、検討すべき内容を理解することができませんでした。なぜならば、そのような経験もなく、見たことも聞いたこともなかったので、「家族が家族に伝える教育プログラム」というものをイメージできなかったのです。


ただ、家族会活動に取り組む中で、個々の家族が体験したことや研修会などで学んだことなどを、新しい家族に効果的に提供できる方法がないだろうかと考え始めていたので、そのようなことにつながるものができればと考えました。


以前、ある家族から、「しなければ良かった負の体験も、人の役に立てれば財産になる」という言葉を聞いたことがありました。
家族会活動には、それを実現できる可能性も力もあると感じていましたが、その力を発揮するためにも、活動の柱になるような何かを求めていたのだと思います。


そのような家族の思いを、会議のメンバーである専門職の方々は、しっかりと受け止め、真剣に考えてくれました。


共通の課題は「発症間もない方の家族を何とか助けたい」でした。そこで検討資料とされたのは、米国(Family-to-Family)や香港(Family-link)のプログラムでした。


それらのプログラムの資料を翻訳して研究することも始まりました。その資料は数センチの厚さがあり、なかなか大変な作業になることが予想されました。また、それぞれのプログラムの学習の期間が10~12日間と長く、とても日本の家族会で取り組めるとは考えられません。


数回の会議の中で、行き詰まりを感じ始めた頃には、参加する家族会も少なくなっていました。そして、家族は家族でやり方を考えてみたいと思い始め、専門職の方々も家族に任せてみれば・・・と考え始めていたようです。
私たち家族は無謀にも、自分たちでテキストを作ることに挑戦を始めました。


その土台となったのが、「じょうずな対処~今日から明日へ~」★1 でした。真夏の暑い日に何度も集まって、家族学習会のためのテキストを検討しましたが、結局、家族の意見を反映させる形でそのテキストの改訂版がつくられることになったのです。


テキストが5章立てになっているので、学習プログラムは5回、テキストを読み進めながら体験を語り合う進め方は、家族ゼミナール(★2)を参考に検討しました。


「学習会」という名称ですが、テキストを読み合いながら、正しい知識を得ると共に、大切にしているのは体験の「語り合い」です。その詳しい内容については、次回からお伝えしたいと思います。

★1 家族心理教育用テキスト。現在は、全改訂版としてコンボから発刊されている。
★2全国精神障害者家族会連合会から発信された家族相互の学習プログラム。

みんなねっと2019年4月号より転載(この記事は、みんなねっとに帰属しますので、無断での転載・掲載はお控えください。必要な際は事務局にご相談ください。)

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