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2020年の代表的マザーズIPOを振り返る

TAKA(@Murakami_Japan)です。今日は2020年の代表的マザーズIPOについて振り返って見たいと思います。先日以下のようなnoteを書きました。

どういう観点で企業を選定するかですが、起業家が創業し、VCが資金提供し、その後マザーズに上場し、今後も急成長が期待されるような企業から代表的な会社を選んでみたい思います。今回は2020年にマザーズ に上場した企業から以下の3社について振り返って見たいと思います。

プレイド
Sun Asterisk
ヤプリ

3社のIPOの比較①:時価総額と株価

マザーズIPOらしく、3社とも初値騰落率は50%を超えています。一方で2020年はコロナの影響もあり、マザーズ市場全体のIPOにおける初値騰落率の平均値が100%を超えていた(130%ぐらい)と思いますので、大型IPOの3社は平均値を下回っています。

最も公開価格と上場後で株価の変動が大きな会社がSun Asterisk、最も変動が小さい会社がヤプリとなります。そのヤプリですら、公開価格の倍以上の株価をつけたタイミングがありました。Sun Asteriskに至っては7倍近い高値をつけたタイミングがありました。

3社のIPOの比較②:上場時の財務数値

Sun Asteriskのみが直前期で黒字化して上場をしています。プレイドとヤプリ はSaaS企業らしく直前期も上場期(申請期)ともに赤字、いわゆる赤字上場であることがわかります。

成長率については、Sun Asteriskが直前期に大きく成長し、申請期では成長率が大きく低下しています。SaaS企業の2社は上場期でも40%近い成長率を維持しています。

もう一点、注目すべきは上場タイミングと目論見書記載の財務数値です。Sun Asteriskは1Q四半期の決算数値が出たタイミング、直前期の数値+1Qの数値でマーケティングをしています。上場期に売上成長が鈍化することからも、このタイミングを狙ったと想定されます。

ヤプリについては、上場期も赤字です。純粋に売上高の進捗を見せ、黒字化のタイミングを対話しやすいタイミングを選定したと想定されます。なお、今期FY12/2021の売上高予想は3,175-3,230百万円、営業利益が▲939-884百万円となっております。売上高成長率は30%以上を継続できていますが、先行投資を継続し、赤字が続くという説明をしています。

プレイドは、直前期がFY9/2019となっていますが、実際はFY9/2020の数字をほぼ見据えたタイミングで上場しています。投資家はFY9/2021の数字をより注目するタイミングになっています。FY9/2021の売上高は5,211百万円、営業利益は25百万円と黒字化のタイミングが見えたタイミングで上場していると言えるでしょう。

先行して赤字上場を実現したマネーフォワード同様に赤字継続のメッセージで上場したヤプリと、黒字化を見せて上場するプレイドに違いを感じます。

3社のIPOの比較③:オファリングストラクチャー

オファリングストラクチャーを見て見ましょう。上場前の資本政策の結果として、株主構成には各社に大きな違いが出ています。

株主構成
Sun Asteriskは創業者(+経営陣)で大半の株式を保有している状況です。ビジネスモデル上資金ニーズが小さいこともあり、最小限の外部株主の構成でIPOを迎えています。

一方で先行投資が必要となるSaaSモデルで成長を実現してきたプレイドとヤプリ は創業者(複数名)の持分が50%を下回っています。金融投資家が1/3を上回っており、この点を考慮したオファリングストラクチャーの設計が必要になっています。

プレイドとヤプリの従業員持分を見て見ましょう。プレイドが11.6%と新株予約権を中心に多く従業員に配分しています。ヤプリは3.8%と比較的絞った風に見えていますが、その他に5.98%の信託SO(原田氏が受託者)含まれているので、実質的には9.8%程度になります。

オファリングストラクチャー
ポイントが多すぎるので具体的には上の表を見てください。ポイントは以下の通りです。

1)単独主幹事or共同主幹事
2)販売形態(グローバルor臨報or国内)
3)オファリングレシオ
4)国内/海外の配分比率
5)ロックアップ
6)親引け

特にハイライトしたいのは、プレイドが500億円レベルのIPOで144Aグローバルオファリングを採用した点です。旺盛な海外機関投資家からの需要を背景に当初60%の配分比率を78%まで引き上げて、海外機関投資家中心のIPOを実現している点です。

プレイドの上場前〜IPOに向けての資本政策

以下の2つの記事がよく纏まっているので、こちらをご参照ください。1つ目の記事は事業の概要やIPOについて。

2つ目の記事は未上場時の資本政策にポイントが置かれています。Eight Roadsというフィデリティ系のVCからシリーズAで出資を受けている点、シリーズCでGoogleから出資を受けている点、上場直前に上場株に投資するグローバルな著名機関投資家であるT.Rowe Priceから出資を受けている点が特徴として挙げられます。

Sun Asteriskの上場前〜IPOに向けての資本政策

以下の2つの記事がよく纏まっているので、こちらをご参照ください。1つ目の記事は事業の概要やIPOについて。

2つ目の記事は未上場時の資本政策にポイントが置かれています。直前まで自己資金で成長を実現していたところ、上場直前に農林中金をリードとして外部資金の活用方針に舵を切った点、経営陣で株式の異動を行い、複数経営陣での株式の持ち合いを構成している点が特徴です。

ヤプリの上場前〜IPOに向けての資本政策

下記の記事は事業の概要やIPOについてまとまってます。

上場前の資本政策について纏まった記事はありませんが、初期投資家としてYJC(ヤフー系VC)を中心とした事業シナジーが期待される投資家から支援を受けて成長を遂げてきた点、その後独立系の海外系VCであるEight Roadsから大型の調達をしIPOを目指しています。

最後に

2021年3月18日(木)にIVSでこのリストにも登場する、プレイド、Sun Asterisk、ヤプリ のCFOの方々と登壇することになりました。上場前から上場後を見据えた資本政策という感じのテーマです。お時間ある方はぜひ聞いてみてください。

追伸)カバー写真はコロナ前にどこかでみた桜です。先日の写真とちょっとだけ構図が違いますw

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