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あみやき亭/その決算早期化に思うこと

あみやき亭という企業をご存じでしょうか?
東海地方を中心に飲食チェーン(焼肉店など)を展開する会社ですが、上場企業の経理・会計界隈では、”あまりにも早い決算発表”で有名な企業です。

本日2021/1/4は東証の大発会でしたが、市場が開く前の午前7:30には2020/12期(Q3)決算を発表していました。繰り返しますが2020/12期です、決算日から4日しか経っていません。

あみやき1

これまでは経理屋として「この会社はスゲーな」「どうやったらこんなに決算早く締めれるんだろ」と感嘆ばかりしていましたが、今回はこのコロナ禍においてか、ちょっと違う心境でこの決算発表を見ましたので、記事にしたいと思います。

あみやき亭の凄さ、決算早期化のからくり(一部)

私自身、爆速決算会社「あみやき亭」の存在自体は知っていましたが、その中身については見たことがなかったので、改めて有価証券報告書を見てみました。
飲食業であり、てっきり「セントラルキッチンなし(原価計算なし)」「連結決算なし」だから決算が早いんだとばかり思いこんでいましたが、セントラルキッチンも持ち、連結子会社も持っていました。つまり、おおよそ2労働日の間に、原価投入して、原価計算を回して、単体決算を締めて、さらには連結処理まで完了させている。決算を締めるだけではなく、取締役会などの機関決定をしたうえで(1/3に役会開いた??)東証に決算短信を提出していました。

これにはちょっと驚きでしたので、その裏側について調べてみたいと思います。

過去にあみやき亭の決算早期化に関して記事にしている方がちらほらおられました。公認会計士の武田先生が2017年12月の日経新聞の記事を元にまとめをされていましたが、こちらがわかりやすかったのでリンクを貼ります。

決算早期化をするにあたって大事なことは上の記事を見てもらうとして、(些末な論点ばかりですが)同社の有価証券報告書を読んでみて、決算早期化の端緒がいくつか見えてきましたのでここに記しておくとともに、決算早期化に向けてどんなことをやっているのか、想像してみたいと思います。

①(有報より)子会社の決算日を2月に(あみやき亭は3月決算)
②(有報より)固定資産の減損では将来CF見積なし(全額減損が基本)
③(想像)できることは前倒し!

まず1つ目の子会社の決算日を2月末にしていること(これはちょっとこすいなーという印象)。直近で買収した会社は決算日を変更していたので確信犯でしょう。連結子会社は1カ月かけてじっくり決算が組める。

2つ目はちょっと想像も交じりますが、おそらく固定資産の減損テストをまじめにやってないと思います。飲食業の決算での重要な論点は収益性の低下した店舗の減損テストでしょう。
あみやき亭は日々決算をしているので、決算日を待たず、期中の間に見込みをベースに減損テストをしているはずですが、そこで収益性の低下が認められた場合は、店舗ごとに将来CF(回収可能額)を見積りを行うことなく、全額減損してしまうという手法をとっているはずです。有報の減損注記を見ると、正味売却価額をベースに全額減損していました。

3つ目、あとは完全に私の想像で、私ならどうやって2日で決算組むかなーということを考えてみました。
まず、棚卸は循環だな(そもそも重要性がない)。原価計算も標準原価のままかも。。あと、原価を投入するにあたって、取引先からの請求書を全部待ってない。光熱費やら諸経費は全部過去の実績からの見積もりで計上!引当金も1カ月前に計算して決算日までにロールフォワード!出店日なんかも決算日間近にしないとか調整しているかも。。

何のための決算早期化か

決算を早期化して何を実現したいのか?よく言われるのはこの2点です。

① 企業内部の経営意思決定の迅速化
② 企業外部の関係者への情報提供の充実

(想像ですが)あみやき亭の場合は①だと思います。消去法で。。

↓ これが同社のIRトップページです。IRに力を入れているとは到底思えません(社長の挨拶しかない、、)。法定の決算短信と有価証券報告書はありますが、決算説明資料はありません(あと、飲食業なので、さすがに月次レポートはありました。飲食だとこれがないとお話になりません)。

決算早期化は本当に必要か?

あみやき亭のように1月4日に決算を発表する必要はどこにあるのだろうか?少なくとも既存店の月次数値だけ出していれば投資家的にはOKだろう。
誰も求めていないところに力を注いでいないだろうか、早期発表と引き換えに何かを犠牲にしていないだろうか。私は外から見ているだけなので、中の人がどういう思いで仕事をしているのかはわかりません。そのうえでのコメントになってしまいますが、同社は無理をしているようにしか見えません。内部の経営管理を目的として、決算を早期化することは大事なことで、日々決算を行っていることは経営的には活かされていることだとは思いますが、そこに手間をかけて対外公表までする意味が分かりません。

一方で、あみやき亭の対極にある会社もあったので、紹介しておきます。その会社は「ワークマン」です。

まず、上場企業ながら決算発表を延ばした話を紹介しよう。通常、決算発表は、「決算日から45日以内に行う」というルールがある。近年は決算の早期化という流れもあり、決算発表を延ばすのは異例のことだ。当社は3月決算なので例年4月末に決算発表を行っていた。そのために経理部員の負担は大きく、残業続きになる。そうすると「働き方改革」の柱の一つである「長時間労働の是正」に反してしまう。同時に監査法人も残業する。短期間で監査を終えようとすると仕事の質が落ちる。高額な報酬を払っている監査法人には、厳格に決算数字や内部統制のチェックをしてもらいたい。そこで決算発表日を1週間、延ばすことにした。決算を遅らせたことで投資家から非難を浴び、株価が下がるかもしれない。一刻も早く決算情報がほしいアナリストからは批判されるかもしれない。だが、トレードオフを覚悟した。決算の早期化はいいことだが、それで経理部員が体調を崩したり、監査法人がきちんと監査できなかったりしたら意味がない。本末転倒だ。ゴールデンウィーク明けなら決算日から45日以内ルールに反さない。決算早期化という流れの中で勇気のいる決断だったが、経理部はストレスなく仕事ができたし、監査法人も余裕を持って入念にチェックしてくれた。そして意外にも決算発表を遅らせたことによる株価への影響もまったくなかった。

株価水準は?(おまけ:株探より)

あみやき2

あみやき3

コロナで大打撃を受けていますが、コロナ前からも業績と株価は下降トレンドです。テイクアウトもやっているようですが、あまり流行ってはいないのでしょうか。だって、焼肉はお店で焼きたいもんね!



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