見出し画像

生きる#10 八雲の梅とわたしたち①

今年も梅の収穫の季節がやって来ました。
と言っても、わたしは昔から毎年梅仕事をするような『丁寧な暮らし』をしてきた…というわけではありません。

島根に移住するずっと前、独身時代に思い付きで一度梅酒を漬けたことがあるくらい。
(2007年に漬けたまま放ったらかして10年流しの下に放置してた。美味しかったけど)

そんなわたしが、どうして今梅を収穫したり販売したりしているのか?
自分の記憶の整理のためにも振り返ってみようと思います。

「むらの駅やくも」との出会い

ここ数年は毎年梅林の草刈り収穫、またその梅を加工してみたり…。
梅と密接に関わり出したのは、島根でNPO法人むらの駅やくもさんと出会ってからです。

『八雲を梅の里に』

という思いで、2010年に立ち上がった松江市八雲町のこの団体。
耕作放棄地が広がりつつある八雲町をなんとかしたいと、土壌を整備し、6ヘクタールに2000本を植栽しました。
そのうちの1000本が梅の木で、梅という地域資源を使って特産品開発や交流事業を行うことを主な目的とされています。

わたしが移住したのは2016年で、団体立ち上げ当時のことは知りません。
そして、移住して初めてこの団体とも出会った頃、梅の収穫量は年間500kg程度だったと思います。

「1t 作る目標のはずなのに、本気度が足りない」

当時、外部の誰かがそんなふうに言っていたことが記憶に残っています。
木が育って収穫できるまでに年月がかかることを知らなかったわたしは、
「ふーん、そうなんだ」
とその人の言葉に何の疑問を持ちませんでした。

あれから5年間変わらずコツコツ丁寧に手入れを続け、今年の収穫量は2t近くなりました。

参考 島根県HP

「むらの駅やくも」に潜入

その頃、わたしは地域おこし協力隊のミッションとして特産品販売をテーマに動いていて、
地域の特産品をどうやって売っていくか?
どんなことをお客様にお伝えするか?

そのヒントを探るべく、この団体さんの製造現場に入らせてもらうことになりました。

製造現場に入ってビックリ。
「効率化」「自動化」が当たり前の世の中、
これに対してこの団体の作る商品は
・10種類以上の素材を手でみじん切り
・15個分の玉ねぎみじん切りを手作業で揚げる
・一つ一つ手作業で充填

まあとにかく手間がかかる!
そして、1回あたり200個できたら良い方。
原価率や作業効率を考えると、製造業界では、有り得ないかもしれません。


しかし、数ヶ月に一度、毎回5、6人くらいで集まって行うこの製造現場の雰囲気が、何とも絶妙に居心地が良いのです。
わたしみたいなよそ者でも、作業工程の一部を任してもらえるようになりました。
この団体は、単にモノを作って売ってお金を稼ぐことだけが真の目的ではない…そう考えるようになりました。
自分達の本業とは別に時間を割いてまで、団体の活動を行う原動力は何なのか…?

それを追求すべく、2017年、わたしは協力隊同期3人でむらの駅やくもに正式に入会しました。

生まれて初めての自分たちの商品

むらの駅やくもの会員として、梅の加工だけじゃなく、草刈りや梅の収穫にも参加するようになった頃、未利用の素材がいくつかあることに気付きました。
そこで、それらの素材を使って自分たちの商品を作らせてもらえないかとお願いをしました。

煎り酒という調味料と未利用の梅酢を使ってできた商品です。
県の商品開発サポート事業にも参加し、デザインやネーミングを考え、半年間で何とか販売できる形まで持っていきました。
この時、販売責任は私たち(協力隊同期で作った任意団体)、製造元は製造許可のあるむらの駅やくもの名前で作らせてもらいました。

荒削りでしたが、わたしはここで初めて「自分の責任で」商品を作るというプロセスを経験し、今仕事をしていく上での重要な原体験になりました。
(現在は製造お休み中)

梅の木の成長と地元のパートナー

コツコツと手入れを続けていた結果、2018年くらいから梅の収穫量が一気に増え始めました。
ちょうどその頃、地元新聞に取り上げてもらった記事がきっかけで、市内の酒造メーカーさんから大口の注文をいただけるようになりました。

米田酒造さんの雲州梅酒に使っていただいてます。
芳醇な日本酒「豊の秋」で漬け込んだ、味わい深い梅酒。
自分で漬ける梅酒とは別格!

このあたりから収穫量は1tを超え始め、
米田酒造さんも「地元で作られた梅を使って応援したい」と、毎年購入量を増やしてくださっています。
何より
「米田酒造さんが使ってくれるからがんばらんと!」
と、みんなの作業の励みになっています。
こうして同じ地元の生産者で応援してくださるパートナー(売り先さん)の存在は本当に大きいです。
どうやらこの梅酒は中国で人気なのだと米田酒造さんから聞いて、一同ビックリ。
自分たちが作った梅か形を変えて海を渡っているのだと思うと感慨深いものです。

次のフェーズへ?むらの駅やくもの世代交代

先日、むらの駅やくもの役員改選がありました。
実はわたしは2年前から「理事」という肩書きをいただいていましたが、
今回の改選で、弐百円の共同代表である佐藤(髭)が理事長に就任しました。

ぶっちゃけこれにはわたしも驚きました。笑
(多分佐藤も)

「団体も10年経って若返りが必要。これからはあんたらに頑張ってもらわんと」

前理事長からのご指名に、ふだんはめったに表に出ない佐藤が、少し考えた上で首を縦に振りました。

前理事長も何度となく「若い世代に」とは言っていましたが、いろいろ思うことがあったのだと思います。
一方で、佐藤もこれまで団体を見てきて思うことがあり、快諾したのだと思います。
むらの駅やくもとの5年を振り返り、これから5年後10年後の未来を想うと、このタイミングは必然だったのかもしれません。

とはいえ、梅の生産・加工の現場はまだまだ先輩方のお力を借りないと成り立ちません。
そして、一緒に作業させてもらいながら知識や技術を学び、地域の歴史をしっかり引き継ぎ、またその次の世代に繋ぐという責任を果たしたいと思います。

以上、
思い入れのある方々とのエピソードで、つい長くなってしまいました。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
いつか皆さんにも、この八雲の梅と、頼れる先輩方に会いに来てもらいたいなぁ。

八雲の梅林を守る男達。
わたしの大好きな写真です。

この梅を使ったレシピは、また次の記事に!

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?