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「チーズの惑星」

あけましておめでとうございます。
2020年最初の1枚は
子年→ネズミといえばチーズ!ということで、ある英語のフレーズから着想を得たこちら。

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「月はチーズで出来ている」
"The Moon is made of green cheese"

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英語の言い回しで「ばかげた信念」というかんじでしょうか。
要するに「月がチーズでできているわけがない」ということですね。
幼い子供への伝承として浸透しており、創作物語にもよく使われるモチーフのようです。
(green cheeseとは「熟成されていないチーズ」のこと)


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ネタ出しの段階はこんなかんじ。
チーズを積み上げたりくり抜いたりしてできた部屋を作りたいな〜と思いながら、かわいい家具や建造物の資料を集めつつゆるスケッチ。
お仕事のときもこんならくがきから始めたりしますが、粗すぎるので先方には見せません。
「こんなふうにも描いてみたいな〜」という 案が複数出たので、あとで別の絵に再利用するかもしれません。

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「月はチーズで出来ている」──
この言葉を知ったきっかけはイギリスのクレイムービー

ウォレスとグルミットシリーズ
『チーズ・ホリデー(A Grand Day Out)』

とぼけた発明家のウォレスとその忠犬にして親友グルミットが、おいしいチーズを求めて手作りロケットで月へと向かうお話。
レトロかわいいロケットや、どこか寂しい月の風景がいい味出てます。

「ひつじのショーン」と同じくアードマン・アニメーションズ制作。
ストップモーション大好き!


このお部屋は月にある設定なので、窓から見えるのは地球です。

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部屋の向こうをオレンジにするか青にするかとても迷った…まだ迷っている…
青の方がミステリアスなかんじ。
のちのちこれをミニポートフォリオの表紙にするつもりですがどうしようかな〜いつ完成するかな〜〜〜

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こんな絵を描いておいてなんですが、「ネズミはチーズが好き」というのも迷信のようですね。
(基本的には雑食ながら穀物や果実、肉や魚のほうが好きらしい)
ネズミ=チーズ好き、というイメージの起源には諸説ありますが…
げっ歯類やウサギには前歯が一生伸び続ける性質があり(放っておくと歯が伸び続けてエサを食べられなくなり死んでしまうことも)、歯を削るために食べ物以外のものをかじります。
チーズはものによってはとても固いので、ネズミにとっては木材や電気コードと同じく「かじり木」のような存在なのかも、という説。
また、穴あきチーズとして有名なエメンタルチーズ。この穴は発酵の段階でできた気泡なのですが、これを「ネズミがかじったもの」と間違えたからという説。など。

なので私の絵の中のチーズは食べ物ではなく家具扱いです。笑


「ネズミはチーズが好き」なイメージの入り口は人によってさまざまでしょうが(トムとジェリーあたりが有名なのかな?)、私の場合は国語の教科書にも載っていたこちら↓

『ねずみのとうさんアナトール』

ネズミのアナトールがチーズ工場でこっそり味見役として活躍するお話。
形も色もさまざまなチーズひとつひとつに「さいこうにおいしい」「うまくない。ミルクが足りない」「まずい。捨てなさい!」…と、メモを残していくのが楽しい。
イラストもおしゃれでかわいいかんじです。フランス!


せっかくなのでここで私のおすすめネズミ物語をふたつご紹介。

『ねずみの騎士デスペローの物語』

音楽と読書が好きで、人間のお姫様に恋をしたハツカネズミ・デスペロー
地下牢で生まれ、光を愛憎するドブネズミ・ロスキューロ
虐待されて育ちながら、いつかお姫様になりたいと願う女の子・ミグ
さまざまなキャラクターの人生(ネズミ生?)が交錯する、絶望と希望の物語。ひどい悲劇がサラッと頻発しますが「物語は光だ」という言葉が祈りのように響きます。

Timothy Basil Eringのイラストもとても素敵なのでぜひぜひ。
http://timbasilering.com/index.php/illustrated-only-titles/

私が持っているのはA5判ハードカバーですが、今手に入るのはB6変型判なのかな。同じ著者の『愛をみつけたうさぎ エドワード・テュレインの奇跡の旅』もおすすめです。


『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』

「地下で暮らすネズミの世界」と「地上で暮らすクマの世界」。
その境界を超えて絆を結んだ、クマのアーネストおじさんとネズミの少女セレスティーヌのお話。
昔のジブリが好きな方はとても楽しめると思います。
やさしい水彩画のような絵が生き生きと動くさま、大変素晴らしい!
セレスティーヌが「絵を描くことが好きで、得意で、それを生きる糧にしている」ところも「アニメーション」とメタ的にマッチしていてよいです。
また「ネズミはその自慢の前歯で地下の岩を削り開拓し、大都市を築いている。その大切な前歯が失われた際の差し歯の原料として、地上からクマの歯を盗んでいる」というユニークな世界観設定、開拓シーンの絵面もおもしろくて好きです。

今なら吹き替え版がアマプラで無料視聴できます。
ただし主人公ふたりが「禁忌とされている異種族交流」はともかく「窃盗などの犯罪を犯す」ことにまったく抵抗がなさげ(特にアーネストがやばい)のは気になりますが…^^;
「孤児の少女と社会になじめないおじさんのふたりぐらし」というのもかなりセンシティブな関係ですし。映像は文句なしに素晴らしかったので、次回作はこういうところもスッキリ整えてくれたら個人的に嬉しい。

このアニメの原作はガブリエル・バンサンの絵本「くまのアーネストおじさん」シリーズ
アニメの最後で、その中の『セレスティーヌのおいたち』という一冊について触れられます。
アニメでは「ぼくらの出会いを少し脚色して物語にしよう」「こうしてできたのがあの絵本です」…みたいな流れで終わるのですが、実際に絵本を読んでみるとアニメよりずっとシリアスで厳しい生い立ち話。
どちらかというと、絵本世界のふたりが「こんなだったらいいな」と空想した物語こそがこのアニメーション…と解釈した方がしっくりきました。
そう考えるとアニメのツッコミどころもなんとなく飲み込めるかも??
原作で読んでみたのはこの1冊だけなのでシリーズを通して読むとまた印象が変わるかもしれませんが、とても丁寧で真摯な物語でしたのでこの絵本コミでおすすめです。

こちら絶版ぽい…?ですが図書館にはきっと置いているはず…


2020年もこんなかんじで素敵な作品に触れつつ、おもしろいと感じたことを描きつつ、
いろんなお仕事をさせていただけたら・自分が世の作品に楽しませてもらったように誰かを楽しませることができたら嬉しいなぁと思います。
どうぞよろしくお願い申し上げます。


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