oh!!おでん🍢🍢
ある昼、きしめんを茹でていると電話がかかってきた。
電話のベルが12回鳴って消えた。と言いたいところだが、携帯電話の設定でかバイブ音だけで気づけなかった。
できあがった料理の写真を撮ろうと思い携帯を開いたら、画面には不在着信が二件と留守電が一件。
電話をすると言われていた人だ。
まぁ良い、急ぎではないし。
なにより麺類を熱々で食べること以上に大切な事なんて人生にそう多くない。
固めにきしめんを茹で、仕上げにおでんのツユに沈めてクツクツと炊くわけだ。
アオキという業者の半生麺で、透明感があり歯応えが独特で、うどんより冷麺に近い質感。
これが煮込みはじめて3日目のおでんによく合う。
と言うわけで、今日はおでんの話をしよう。
・鍋とおでんは別ジャンル
寒くなってきたら鍋物をよくする。
鍋という料理は、作ろうと思って作る事と、あり合わせで作る事に2パターンだ。
鶏肉、白菜、大根、なんかは冷蔵庫にかなりの確率でいるし、大抵はある物でなんとかなる。
ただ、おでんは別だ。
明確な意思も必要だがそれ以上に大根が重要なのだ。
たいてい食べたいと思った物はすぐに作るのだが、おでんは1ヶ月ちかく待つことになった。
理由はひとつだけ、良い大根に出会えなかったからだ。
・一日目:出会いと水浸
そして俺にとって100%の大根に会えたのが日曜日のことだ。
すかさず手を伸ばしカゴに入れた。
途中まで考えていたハンバーグのことはすっかり忘れ、つくね用の鶏挽肉を買い、練り物を買い、こんにゃく、厚揚げ、、、そして鰹節を購入。
といってもおでんは直ぐには出来ない。
出汁を引き、下茹でや油抜きをし、煮含め、味を整え、、、と完成するまで長い時間がかかる。
その間、フライングやつまみ食いしたくなる感情をグッと耐え忍び、違う料理を食べるのも含め全てがおでん的快楽に繋がるのだ。
まず一日目は昆布と干し椎茸を水に浸して仕込みは終わりだ。
干し椎茸は冷たい水で戻すと美味くなる。
昆布は水からじっくり出汁を引くのが美味い。
この大根にはそれ相応の対応をしたいから、焦らずジックリと進める。
・二日目:出汁と肉団子
一番最初にやったのは昆布でじっくり出汁を引くこと。
高すぎる温度ではアクがでやすいので、じっくり煮出しある程度で取り出し、結び昆布にして別に保管しておく。
それと同時に鶏団子を仕込む。
鶏ももと鶏ムネのひき肉を1:1合わせ、そこに色々と具を足していく。
今回は荒く叩いたエビの身や、すりおろしたレンコンと長芋、刻んだレンコン、干し椎茸、干し海老の粉、ネギ、生姜、卵、片栗粉、酒、塩、醤油、砂糖などを混ぜ込んだ。
細かい事はこのnoteで。
比率はいい感じ。
柔らかめだが、ギリギリ丸めれるくらい。
混ぜれたら冷蔵庫にいれて出汁の続きをする。
昆布を引き抜き、沸いたところに鰹節をいれ最初は強火で5分ほど煮出しアクを取る。
その後はしばらく弱火でコトコト味を出していく。
その待ち時間に大根を剥き、切りそろえ、米のとぎ汁で下茹でをする。
それでもまだ時間があったのでこんにゃくを切り、塩揉みし下茹でする。
そうこうしてる内に出汁が良い具合になったので漉す。
漉した残りで二番出汁を引き、また漉す。
そうしてできた出汁に酒、塩、みりん、薄口醤油をいれ70%くらい味をつけた所に団子をいれていく。
左手で握力のマシーンを握る様にミンチを押しだし、右手で持った濡れたスプーンでくるっとすくい取り、温かいお出汁にポトポト落とす。
ここで大事なのは、ツユの味を淡くする事と、スプーンを濡らす事と、団子をいれるスープをボコボコ沸かさない事。
鍋いっぱいに出来たら、蓋をして弱火で10分程度火をいれる。
そして、そのまま冷ます。
ここで焦って取り出したらパサパサになるから気をつけなくちゃあならない。
蓋して冷ます間はラジオでも聴いたり、小説でも読んだり、原っぱで日向ぼっこでもするのがいい。
あるいは全部を一緒にやってもいい。
冷めると出汁がスッキリと透き通る。
そうしたら、必要分を取り出し、後は冷凍しちゃう。
冬場、団子のストックはどれだけあっても良い。
団子を取り出せたなら出汁を漉しながら鍋に入れる。
漉し方は人それぞれ、俺はキッチンペーパーの細かいのでやるけど、ネル布でも良いし、細かめのザルでも良い。
ここでは味を80%くらい整えて染み込ませる。
その残りカスとか、微妙な鍋へのこびり付きとかをそのまま味噌汁にしちゃって良い。
そういう味噌汁はグッと美味い。
そんで、鍋には大根、こんにゃく、団子、昆布をいれて一晩置くわけです。
好みによるけど第一陣はこんな感じが良い。
あとは、牛すじ、厚揚げ、茹で卵、なんかも一陣にいれていいかもね。
こういうときの大根は厚く剥くのが美味いんだけど、その皮は漬物や炒め物もいいけど、切り干し大根がオススメです。
大根の皮の切り干しは歯応えも旨味も強くて良い。
はりはり漬けとかにしても良いもんです。
・三日目:練り物と食べ時
こっからは一気に加速する。
ラストスパート、勝負所、クラッチタイム。
おでんは煮込みすぎないほうが良い物も多い.
味が出すぎたり、固くなったり、染みすぎたり、、、ね。
まず、最初にするのは茹で卵、そして厚揚げ。
こいつらをいれてコトコト。
第二陣、ほどほどに染みていて欲しいもんだ。
そして第三陣は練り物。
さつま揚げ、ゴボウ巻き、ちくわ、を油抜きして煮込む。
こいつらを煮たくらいで90%味を整える。
なんつったって練り物は味が濃いからね。
こいつらから出た味が馴染んで完成に近づくのだ。
最後は餅巾着、魚河岸揚げ、はんぺん。
第四陣、最終走者、あるいはアンカー。
餅巾着は煮すぎると餅が崩れるし、魚河岸揚げとはんぺんは染みすぎる。
ただし、油抜きは練り物と一緒にすると楽。忘れちゃあいけねえよ。
そんで最後の最後の味見をして微調整。98%の美味しさに。
ちょっと、本当にちょっと薄いくらいが良い。
なんでって、卓上でコトコトすると蒸発するからね。
・実食、献立。
やっとだ、大根に出会うまでの期間、そして出会ってからの期間、去年最後に食べたおでん、そんな物をあえて思い出さずに食べる。
目の前に集中、それは禅に近い。
おでんの時の副菜は迷うが、黒豆のごはん、ジャガイモの焼いたの、豆腐のサラダにした。
おでんって美味いけどごはんが進まないのよね。。。
良くも悪くも単体で完結してしまう。
さて、第1回目に取ったのはこのメンバー。
不動のキング大根、王道のちくわ、陰のボス昆布、今回のエース鶏団子、若者人気のはんぺん、大人向けのゴボウ巻き、ダークホース厚揚げ。
大事なのは和辛子。
こいつの存在感があってこそのおでん。
寿司にワサビ、唐揚げにレモン、ナポリタンにタバスコ、その系列。
ま、たまには柚子胡椒とか、唐辛子でも良いんだけどね。
いざ、実食。
う~~~~~~~~んまい!!!!!
足をジタバタしたいくらい美味い。
気付けば全種を食べ終えて、2周目、〆に餅巾着を食べて完食!!
と思いきや、数時間後に大根とさつま揚げで第二ラウンドをしてる謎。
なんでかおでんには特殊な魅力がある。
・更に翌日、翌々日。
最初の最初に書いたきしめんをいれて食べる所に帰ってきた。
うどんやきしめん的な麺の種類が合う。それがおでん。
絶妙な麺への絡みが良い。
しっかり茹できらずにツユで炊き上げるのもまたよし。
写ってないけど、奥の大根の上に辛子をちょこっと乗せてます。
最後の最後はリゾットに。
一口大に切って、炒めたキムチ、余ってたレタス、チーズと合わせて食う。
鰹と鶏の濃い出汁が合うのよ。
おでんはツユを飲みきれる濃さにするの大事。
あぁ完食。美味しかった。
次に素敵な大根に会えるのはいつになるかな。
冷凍した鶏団子を食べ尽くす頃だといいな。
おしまい
・おまけ
おでんくんの作者でもあるリリーフランキーのラジオが好きで、毎回聴いている。
先日の放送では、たまたまそこにいた斉藤和義をゲストにする無茶振り。でもそれが良い。
くだらない話ばっかの中にたまにある真面目な話が秀逸。
土曜の夕方にピッタリ。
このMV、全力でふざけた感じで大好き。
再現度の高さに笑っちゃう。
リリーさんがポールってのもいいのよ。
世知辛い世の中、やさしく生きたいもんですね。
今度こそおしまい。
いつもありがとうございます。 どこまでも美味しい料理の為に使わせてもらいます、ありがとう。