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思わず声に出てしまう人

G.W.中のある日、新幹線での出来事。

地方から都心へ向かう上り線に始発駅から
乗車し、自由席車両の最後方部の座席窓側へ
座る、独りで。
周りには大きなスーツケースや
お土産袋を携えた家族連れもチラホラ。

(あぁ、そんな季節なんだなぁ)と
ぼんやりしながら揺られていると

2つめの駅でカップルが乗り込んできた。

スーツケースが1つ、手持ちのリュック2つ
周りを見渡すが空いている席は少ない。
荷物の感じからして、おそらく終点まで行くのだろう。長い距離をいくのでなるべく落ち着いた席を探している。
3人掛け席はほとんど埋まっている。
私も3人掛け席に
独り。

チラッ

見たね、いま、こっちを確認したね?
私を見て何を思ったのか分からないが
カップルは私の前の席、3人掛けに決めた。

女性は窓側で、男性は通路側。
真ん中はリュックを置くためにあけたのだろう。
隣に座らないのをみて、二人の関係性を何となく想像した。
付き合い始めてすぐの恋人同士ならばおそらく隣に座る。帰りなのか行きなのか移動中であっても二人の会話は止まらないであろう。離れたくない、周りが許せばなんなら始まってしまう可能性も否めない。いやそこは否めよ。でもそういう時期は誰にでもあるふむふむ。

しかし、彼らは違う。
長旅であることを十分に理解し、お互いのパーソナルスペースを確保している。1人が荷物を棚に上げている間に、1人は手荷物を整理して飲み物やケータイなどを確認し始める。分担作業が何も言わずとも出来上がっているこれはあれだ玄人だ。うん。お互いのことを気遣いながら、さらに周囲にも注意を払い、後ろの席でふんぞり返っている謎の男を一瞥し、パートナーに危険が及ぶようなら「いや、ワンチャン勝てそう」というところまで判断している。
席に着いた彼女は「xxxxxxx。」と何か呟き背もたれを
申し訳程度に倒した。
次に彼の方が「倒しまッス」と控えめな声で断りを入れてから控え目に背もたれを倒した。そうか彼女はそう言っていたのか。
今時、席を倒すのに断りを入れるとは珍しい...
と思ったが、よく考えたら「........倒します。」
だったのだろうか


「アンタが何者だろうと、コイツ守るためなら俺、倒します」という宣戦布告だったのではないか。これはマズい、普段から危機意識などなくカピパラ風にぼんやりと日々を過ごしている私にとって、突如降りかかってくる激闘新幹線ハイスピードバトルは勝てる気がしない。
(いやぁ若さには勝てん)
という言い訳を脳内で繰り返している最中に、大事なことを思いだした。

私の座る席は車両の中で一番後ろの席。
後ろを気にすることなく、いくらでも
リクライニングできるさらに、座席に備え付けられたテーブルをガチャガチャされることもない、長旅には最適な席。さらに私はこの移動手段をレジャーではなく、通勤で使用しているのだ。リアルで3駅目で降りる。

意を決して、彼に話しかけてみる。

「あのー、良かったら替わります?次で降りますので」
(やだ間近で見たらちょっとイケメン兄さん、爽やかすぎる白Tがまぶしッッ)

最も友好的かつ安全性が確保できる手段で戦闘を回避。

当然、二人は快諾し席を交換。お互い無事である。


1点だけ気になったのは、席を代わろうとお互いが立ち上がって
通路ですれ違う瞬間、彼がボソッと呟いたこと。


それは彼女にも聞こえない、周りの人にも聞こえない、
私も聞き逃すくらいの声でつぶやいたのだ。


「あーいいひとだ」


漏れたのは彼の心の声か、私の声か。
ちょっとまて、もしかして
第一印象悪すぎたんじゃない?

日々の自分の態度を改めて見直すきっかけとなりました。
ありがとうG.W.
ありがとう白シャツイケメン男子
ありがとう連休中に仕事している私


ぐぬぅ




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