20歳の独立日記〜29日目〜

6月8日(金曜日)

結局、人だと思う。

「バクマン。」という漫画がある。2人の高校生が、脚本と作画に分かれて漫画を作る話。いわば、漫画家の漫画。

友情・努力・勝利の要素が全て詰め込まれた大好きな漫画。

漫画という舞台設定場、肉体を交えたバトルは存在しない。漫画の面白い方が勝利だ。

七峰透という漫画家が登場する。

七峰は50人のネットユーザー、漫画好きな一般の人達と団体で一緒に漫画を作る。編集者の意見は無視し、自分が面白いと思う作品を、漫画有識者の意見を聞きながらひたすら作っていく。

大衆にウケるもの、売れるものだけを求めて漫画を描き続ける。編集社の人間に漫画を描かせてみろ、あいつらは何もできない。僕にアドバイスをするな。

そして作られたのが「シンジツの教室」という作品。授業中に突然、校内放送がかかる。「今から2人一組のペアを作ってください」2人一組になれなくて、1人で残っている者は、殺された。

その後も教室では命令が繰り返され…

という話。

デスノートやバトルロワイヤルが好きな僕は、この漫画をとても面白いと思った。

だが、主人公は七峰に言う。

「そんな寄せ集めの継はぎマンガに負けるわけがない。皆、自分で責任を持ち時には頭をかかえて苦労し作り上げてるんだ。追い込まれ、逃げ出したい気持ちをおさえて、それこそ精神と体力の限界ギリギリで生み出されたものが、何の覚悟もなく他人にアイディアを生み出させてる魂のこもってない作品に、負けるはずがない!」

七峰はネットユーザーの意見を参考にしながら漫画を作っていく。

だが、七峰の言動や人を見下した態度に嫌気が刺した者たちは次第に漫画制作から離れていく。

読者アンケートの結果もどんどん下がる、主人公たちは地道に順位を上げていく。それに焦った七峰は周りに不満をぶつける。

七峰は連載打ち切りになり、主人公たちに惨敗した。

愛されるバンド、愛される芸人、愛されるデザイナー、愛される企業。

どれだけ良い曲を作ってもその人自体が良い人じゃないと、続かない。ボロが出るというか。何となくわかる。

デザイナーもそう。実力主義だけど、実力主義じゃない。結局のところ、この人と仕事したいと思ってもらえないとスタートラインにも立てない。

人と人の関係を大事にしていきたい。
お金なんて後から付いてくる。

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今日は専門学校の先生とご飯を食べに行った。

自分の仕事を通じた、デザイナーとしてのあり方、将来像、悩んでいること。色んな話をしてくれた。

原研哉さん、佐藤可士和さん、水野学さんの話もたくさんした。なぜ、佐藤可士和のデザインが世の中に受け入れられるのかという話もアツく語ってくれた。

その先生はデザインに対する情熱が人一倍強い。名刺に最適な文字組を探すために、2日かけて作るなど妥協を一切許さない。


ある地方のパンフレットを頼まれたことがあったらしい。

先生は「パンフレット作っても、一過性のもので終わってしまう。問題はもっと深いところにあるんじゃないですか?」

役所の偉いさんは、その提案を断った。それから仕事の連絡はないらしい。その地方のためになることをしっかり伝えたのにも関わらず、それは受け入れられなかった。

目先のお金じゃなくて、自分の信念でデザインをする。今の僕にはできない。20万の仕事だったら、言いなりになって受けてしまうと思う。いつかそのフェーズまで行きたいと思う。デザイナーとは?の問いに自分の言葉で答えられるようになりたい。

今はできなくても、今から強く思っていれば出来る気がする。

Hakubiというバンドがいる。売れようとしているとても勢いのあるバンド。YouTubeの再生回数は60万回を超え、波に乗るバンドだ。

そのバンドのお仕事をさせてもらうことになった。もともとファンだったから、その話が来た時とても嬉しかった。

作ったのはツアー告知画像。主にSNSで使用される。

依頼はTwitterとInstagramだけだった。でも何か爪あとを残したかった。

「スマホのロック画面のサイズで、ツアーの告知画像を作ったらどうですか?」

面白い!ということで、見事に採用となった。気をてらったわけではなく、しっかり理由があった。

スマホのロック画面を現代人、しかも学生は何回目にするんだろう。そこにツアーの日程が書かれた画像があったら、Hakubiの親近感もわくだろうし、友達同士の会話に繋がると考えた。

会話の繋がるデザインをもっと作っていきたい。

先生はデザインを、問題解決のための手段だと教えてくれた。良いビジュアルだけじゃなくて、仕組みを作れるデザイナーになっていく。

今日もいい日だった。






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