見出し画像

悪魔の仕業か神業か

宇宿允人(うすきまさと)のライヴDVDを観た。曲はベートーヴェンの四番と五番。いやあ、これ買っといてよかったですよ。

四番冒頭から五番ラストまで、指揮、オーケストラ共に尋常でない緊張感と集中力が込められた演奏。聴いててこちらも引きずりこまれて、自分という主体はもはや消え失せ、音楽だけがそこで鳴っている。聴き終えて我に返ると、端的にいってぐったりと疲れていた。エネルギーの渦に飲み込み、緊張感や集中力を聴衆にまで強いてしまう。そこが何かに似ていると思ったら、あれだ、チェリビダッケをとっくり聴いている状態に近い。とにかくただでは済まない。

特筆するに、四番にここまでのポテンシャルがあったのかと。宇宿の力や研究によってか、楽譜から引きずり出されたこの鬼のような演奏はちょっと他では聴けない。完璧以上の何かで、魔法とか神がかりに類するもの。いったい俺はいままで四番の何を聴いていたのか。

振り返り、もうこれ音楽じゃねーよ、神降ろしの儀式だよ、とさえ思えた。生で聴いてみたかったものだが、宇宿はかなり前に鬼籍に入っている。惜しい。せめてボックスを待とう。バラでもいいが、30枚をフルプライスではつらい。

サポートありがとうございます!助かります。