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4/23 漫画の連載長期化問題について

物語が佳境に迫っている(と思われる)「鬼滅の刃」。現在202話、単行本にして19巻(5月に最新20巻が発売予定)

個人的にはもうちょっと続いて欲しいと思っているのだが、世間では漫画に対して連載の長期化問題というのが指摘されているようだ。

読書環境?読みやすさ?飽き?

全て個人的な考えなので悪しからずです。
どちらも漫画ではないけど「Walking Dead」や「Game of Thrones」のような海外発の長編ドラマが日本でも当たり前のように視聴されるようになっているし、ハリーポッターだって第1作「賢者の石」が公開されたのが1999年、完結編の「死の秘宝」が発売されたのが2008年(いずれも日本語版単行本)と、ゆうに8年掛かりで結末を迎えているが途中で脱落して完結篇を観ていないという例は少ない。今では遡って観るというのはごく当たり前に行われている。

たとえば、永井豪の『デビルマン』は、全5巻(講談社コミックス版)であれほどの壮大な物語を展開させることができた。また、同じく壮大な手塚治虫の『火の鳥』の各編にいたっては、(『乱世編』と『太陽編』を除いて)基本的に本1冊分でまとめられる長さだ。それを思えば、50巻だの100巻だのと続いていていまだに終わっていない漫画については、鳥嶋ならずとも「それで完結しない話って何なの?」といいたくもなる。(記事本文より)

「それで完結しない話って何なの?」と思う人も確かに一定数存在するだろうが、そんなに”結末を待てない”性急な読者ばかりなのだろうか?

長編マンガをネガティブに捉える要素として、「物語のマンネリ化」を指摘する読者も多いだろう。それに「新陳代謝が進まず、新しい作家が生まれにくい」といった意見もあるだろう。しかし、その点はシステムで補完しているのではないか。週刊少年ジャンプでいえば読者アンケートシステムによって”面白き作品が残り、そうでない作品は誌面から退場していく”という淘汰によって新陳代謝を促している。そもそもアンケートシステムが正常に機能していないというのなら問題だが、正しく機能しているのであれば読者層の意見を(完全ではないにしろ)反映していると言っていいだろう。

一方でスマホやタブレットが浸透した現代の読書環境をネガティブに捉えているライター氏だが、私にはむしろ追い風になっているように私には思える。

デジタルデータであれば長編マンガも保管場所に困らない、シナリオが簡潔にまとめられたサイト(動画もある)がむしろ乱立しているから途中からでも参入しやすく、読者間で感想や考察を言い合うコミュニケーションも活発だし、何より漫画家がTwitterやInstagramを通じて読者と直接コミュニケーションを取る環境というのは読者を継続的に惹きつける要因にはならないだろうか?ましてや、週刊誌で連載しているマンガと「100日後に死ぬワニ」のようなSNSで連載(連続投稿?)されたものを横並びで比較することに意味があるかは少々疑問が残る。

一方で「あのマンガはあそこで終えるべきだった」というような意見があることも理解している。例えば、ドラゴンボールは「フリーザ篇」で終わるのが良かったのに無駄に延命されて可哀想とはよく言われたものだ。しかし、それは個人の嗜好によりけりなのでなんとも言えない。私は「セル篇」だって面白かったと思うし。一方で、「スラムダンク(井上雄彦)」は山王戦後も読みたかった。

そもそもの問題は、漫画に代わるコンテンツが膨大にある現代において、漫画の魅力が相対的に低下しているというのが本質だ。有料サブスクのNetflixもあれば、無料で観られるYouTubeもある。あとは友人や恋人とInstagramやLINEでやり取りすることにも負けている。”長編”に読者が辟易していると捉えると、やはり何か大きなものを見失ってしまう気がする。競合としてLINEマンガが挙げられているがまさに玉石混交、あの作品数の中から各個人の嗜好に合ったマンガを探すことの方がユーザーに嫌がられるように思う。

現在連載真っ只中の「鬼滅の刃」「呪術廻戦」「チェンソーマン」など、これまでに無かったような新しい領域を開拓するような漫画が生まれておりネット上では話題に事欠かない。これらがどこまで物語を展開するかは未知だが、「やっぱりジャンプ!」という空気感を個人的には感じている。

「伝説のジャンプ編集者」と呼ばれる鳥嶋和彦という人物がいる。

「正直いって(今の連載作品は)どれもおもしろくない。マンガが下手になっている」。白泉社の会長でありながら、会長室の本棚に今もジャンプを並べる鳥嶋。愛情の裏返しだろうか、古巣に厳しい目を向けた。(日経記事より引用)

集英社のジャンプ編集部に所属する現役編集の方々からしたらOBからの耳の痛いお叱りになるんだろうが、外野にいる我々からしたら「十分面白いもの創ってますよ」とだけお伝えしたい。

時代が変われば読者が求める漫画の質も異なるだろう。しかしだからと言って漫画誌がその役割を終え、全てLINE漫画のような新興スマホ勢力に取って代わられるかというとそうは思わない。だって、全く目指してる世界が違うと思いませんか?私はまだまだ漫画誌に期待しているし、楽しみにしています。


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