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茄子の煮びたし 〜読む料理


お久しぶりです。
皆さんは「おうち時間」何してますか。

あるお母さんは料理をする機会が増え、ある学生は読書をする時間が増えたかもしれない。


今回は私が最近出会った素敵な本のレビューと最近頭の中で考えていることを少し。


『私たちは銀のフォークと薬を手にして』
著 : 島本理生


残業も休日出勤の厭わない仕事熱心なOLの知世。そんな彼女の楽しみは、仕事で出会った年上のエンジニア・椎名さんとの月二のデート。江ノ島の生しらす、雨の日の焼き鳥、御堂筋のホルモン、自宅での蟹鍋.....。おいしいものを一緒に食べるだけの関係だったが、ある日、彼が抱える悩みを打ち明けられる。行方のわからない大人の恋を描いた恋愛小説。
(幻冬社文庫より引用)


この本の中にはそれは美しい世界が広がっている。


それは知世と椎名さんの空気感、30代のオトナの女の繊細な悩み、行く先々の日本の風景。


そして読む者が五感で感じられる料理。


この物語ではとても丁寧に料理が描写される。読者はその料理の色を、香りを、食感を、味を、その場の雰囲気も含めて日本語という文字の羅列を読むだけで楽しめる。

日本語を通じて食べる料理


さて、ここでひとつ皆さんに先ほど書いたことを実際に体験していただきたい。

私が皆さんにお出しする一品は「茄子の煮びたし」


私は別にこれが特別好きな料理というわけではない。100を大好物とするなら精々72点かそこらだろう。ただ茄子の煮びたしを通すとわかりやすいかも、というだけ。


茄子に切り込みを入れる。切った後の白いまな板にはすごく鮮やかな、まるですみれのような紫色の跡がつく。切った茄子を水につけ、灰汁を抜く。用意した煮汁からは日本でしか感じることのできない芳醇な出汁が香り立つ。たぶんこれは鰹節からとった出汁。それに茄子をいれて、くたくたになるまで煮る。
完成した料理を白ベースに藍の模様が入った陶器の皿に入れ、すり下ろした生姜と刻んだ小ネギを散らす。
口に入れると出汁の優しい味がジュワッと広がり、鰹節と生姜の香りがスッと鼻から抜けた。



こんなところだろうか。


まあこれは完全な私のオリジナルなわけで「何言ってっかなんもわかんねえ」という人もいると思うが、この文章に少しでも五感で感じられるものがあったなら万々歳だ。

それにしても、こんなド素人が書いたところで、完璧な表現はできないわけで。

何が言いたいかというと伝わらなかった人はもちろん、ちょっと伝わった人も上の小説のもっと洗練された表現をぜひ読んで欲しいというだけだ。




文章を通して感じる美味しい料理はもしかしたら世界を救うかもしれない、ね。







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