勇者又は勇者のパーティーになれと王様に命令されたが 超絶面倒臭いので断りました 4話
奴隷少女セシル
この世界に来て一週間が過ぎた、輝はまだ転送された森の中で生活している。近くに川があったのでそこを拠点とし、魚と獣肉で食い繋いでいた。
大分力をコントロール出来る様になり、魔法も完璧ではないが仕組みは理解する事が出来た。後は防御力、猪みたいな奴の牙如きで出血している様ではこの先思いやられる、力はチートでも防御力は貧弱な事に対策を急いだ。
今日は二日前に山の麓で見付けた洞窟に入る事にした、辿り着くまではとても険しく正に秘境と言ってもいいぐらいだ。輝は洞窟の前に立つと魔法で松明に火を点け、何か防御力でも上げられる装備品があれば儲けものだと中へ入って行く。
中は意外と涼しかったが湿気がある、転生のお決まりモンスターであるスライムやゴブリンが出て来たが、初めて戦った大型猪よりも弱かった。
輝「秘境っぽい割には敵が弱過ぎるな」
輝はブツブツ言いながら更に奥を目指す、2時間位進んだだろうか、敵はスライム、ゴブリン、恐らくホブゴブリン、コウモリっぽいのを大きくしたやつ、どれも強いとは言えない、ここはハズレだったか?そう思いながら進んでいると、どうやら行き止まりに着いたらしい。
辺りを照らす為に松明を高く掲げてみる、すると奥の方に何やら小さな台座らしきものを見付けた。その台座に近付くと何やら白い物が置かれてある。
輝「おいおいこれって俺の腕に付いているブレスレットと同じじゃないか」
拾い上げ右腕に当ててみるが反応しない、壊れているのか?そう思いながら左腕に当ててみるとカシャッと音を立てて装着する事が出来た、輝は良く見なければ分からない窪みを探してそれを押してみた。
輝「ん?······収納ボックス?···それに能力エクストラアップって何だ?」
初めから持っていたブレスレットの窪みを押してステータスを確認してみると、全てのパラメーターがXXXXになっている、真逆···とは思ったが、それを試すかの様に入口からここまで入って来た時には居なかった色黒のオークが現れた。
するとブレスレットからレジェンドオークと表示されている。
輝『成程相手のデータを表記出来る様になったのか』
初めは一切攻撃をせずにレジェンドオークの攻撃を受ける事にした、矢張り輝の思った通り一切のダメージを受けない、痛覚無効とかそう言う感じでは無く薄い膜に覆われている感覚だった。
輝「これで完全にチートになったって事か···でも俺がこの洞窟に入らなかったらこのブレスレットはどうなってたんだ?」
レジェンドオークの攻撃を受けているのも忘れブレスレットの操作を確認していた。
輝「あ、ごめんそう言やお前居たんだったっけ、ありがとな?お前もういいよ」
そう言ってレジェンドオークが振り下ろした棍棒を左で受け止めると、少し力を入れた右ストレートを溝落に食らわせた、「ウゴォー」と鈍い声を上げたレジェンドオークの腹部は吹き飛び絶命した。
チートを望んでいた筈なのに、何故か大きな溜め息を付き洞窟を後にした。
輝は今数人の兵士達と対峙している。
遡る事数分前洞窟を出てから拠点に戻る時だった、女の悲鳴が聞こえ急いで駆け付けると数人の兵士に追い掛けられている少女に出会した。どうやら悲鳴の正体は彼女だったらしい、兵士の中に一人だけ身形が違う者が居た、輝が少女を庇う形で兵士達の前に出ると、その男が話し掛けて来た。
「何者だ貴様は、この私を準男爵のサミュリット様と知っての行いか?」
当然輝はそんな事は知らない、話しを聞く限りこの少女はサミュリットの所有物だと言う、良く見ればゴツい首輪がしてあった、何故所有物を追い回すのか聞くと、どうやら休憩の時に少女がサミュリットに水を渡す際誤って服に溢してしまったらしい。「そんな下らない事で」輝のその一言がサミュレットの機嫌を損ねたらしく戦う事になってしまったのだ。
輝『さて、今までモンスターは斃して来たが気分的には何も変化は無かった、だが人を殺るのは初めてだ、果たして俺はテンプレ通りになるのか?』
相手の力量も知らずに人数の差だけで調子に乗るのはお決まりらしい、息巻いた兵士達が一斉に襲い掛かって来た。
「ガハハハハ馬鹿な奴だ、この私を敵に回した所為で邪神国切っての衛兵達に殺されるのだからな!!」
輝『成程邪神国と言う国があるのか、新しい情報を助かる』
そして輝が拳を握った瞬間全てが終わった、サミュレットが見る先にはバラバラに飛び散った兵士達の死骸、そして輝が一歩ずつ歩み寄って来る。
「き、貴様一体何を」
輝「何って速すぎて見えなかったのか?この拳でぶん殴ってやっただけだ」
殴っただけで人間の身体が砕け散る筈がない、と恐れ慌てているが、まぁ普通の人間ならばそうなのだろう、だが輝はチーター一切の常識が通じない。尻餅を付き失禁したサミュレットを見た輝は大きな溜め息をつき、握った拳を和らげて少女の所に戻った。
見ると少女も可也り怯えている、当然か···そう思いながらも少女に声を掛けてみた。
輝「え、えっと、私、悪い違う、あなた、危害、加えない、分かりますか?」
『何故片言なんだ』······身振り手振りの慌て振りの輝に少女は目をパチクリさせるが、悪意が無い事が分かったらしく表情を和らげた。安心した輝はブレスレットで少女の首輪を照らすと隷属の首輪と表示され、その下に説明が書かれている。所有者に逆らうと首輪から強烈な電流が流れる、また首輪を外そうとすると輪が元の大きさまで縮むと書いてある。要は一生所有者からは逃げられず、外す行為は死を意味すると言う事なのだ。
輝『奴隷が存在する世界なのか···腐ってやがる、所有者は······あの男か、まぁスキルを使えばこんな首輪なんて外せるが、本人の意思に委ねるか』
輝「なぁアンタ、若し今直ぐあの男から開放され自由を手に入れられるとしたらどうする?」
輝の有り得ない質問に困惑する表情を見せるが、輝の真剣な顔を見てか細い声で答えた。
「自分の意志で生きたい」
輝は笑顔を見せると隷属の首輪をスキルで破壊した「これで自由だ」そう少女に告げて拠点へと歩き始める、追い駆けて来る足音に振り向きもせずに。
少女の名はセシル、折角自由を与えてやったのに一人で生きて行く術を持ち合わせていない、と言う理由から輝に付いて来てしまった。
セシルは戦争孤児で幼少の頃に奴隷商に売られたらしい、セシルは色々と話してくれた、この世界には幾つかの国があり、王国•共和国•帝国•聖教会の4つの大きな国が大半を締めている、他には亜人国•獣魔国•エルフ国•魔国•そしてサミュレットの国の邪神国、邪神国は聖教会から離反して出来た国で、頻繁に聖教会と小規模な戦争を起こしているらしい。
楽しげに話すセシルを見ながら輝は思った。
輝『セシルが特別なのか?顔はメッチャ可愛い、それにスタイルも悪く無い、胸も可也大きいな·······容姿端麗とはこの子の事を言うのだろう、そう言えばサミュレット達も顔だけは悪く無かったな?若しこれがこの世界の平均だったら実に俺に優しくない世界だ』
助けた手前近くの村に行くまでは面倒を見る事にし、それまでにセシルから情報を聞き出す事にした。
『奴隷か······ヤッパ少し不快だ』
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