なんてことない4日前の部屋だった。毎日いたはずなのに、知らない部屋のように殺風景で、色も温度も感じられなかった。息が詰まるほど陽気な音とともに友達から送られてきた「もう春だね」という連絡に、春は嫌い、と送信して少しだけ後悔したけれど、すぐにどうでもよくなった。

寝転がったベッドも変わらずシングルサイズなのに、どうしてか狭く感じて何度か寝返りを打って大きさを確かめてみる。けれど、右にも左にも暖かさはないので、仕方なく君みたいに毛布とふとんを一緒に抱きしめた。やっぱり春は嫌いだ。この春も、あの「春」も。誰かのせいにしたって仕方ないのに、今日も誰かのせいにしたくて仕方なくて、必死にその誰かを探すのだけれど結局見つかることはなかった。

西日本は朝から雨が降っているらしく、東日本も夕方から雨になる予定だった。同じ日本なのに天気が違ってしまうほど距離が離れているんだなあと、どこまでも続いていそうな白い雲を眺めながら歩く。この道、どこで曲がるんだっけって考えながら全然知らない土地を勘で歩いてみたんだけど、やっぱり迷ってしまったみたい。あれ、ここどこだろう。

そういえば、目を開くとさっきまで耳元にあった声がもうない。どこに置いてきたんだっけ。わからないなあ。わからない、わからない。よーく考えてみてもわからない。結局それが答えで、だからこそどうしようもない。本当はあれもこれも全て言ってしまいたい。言ってしまいたいんだよ。でもわたしは弱い人間だから、今日も君の声を探すの。
ね、おかしな話でしょ。

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