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真夏の九州うつわ旅・1日目(その3)~あこがれの隆太窯~


8月8日~12日の日程で九州北部をめぐった「九州うつわ旅」の記録をしています。

前回は、川島豆腐さんで頂いた、眼福、口福の豆腐会席ランチを記録しました。


今日ははそのつづき。いよいよ窯元に伺います。




1日目:8月8日(火) 晴れたり曇ったり

福岡空港から佐賀県唐津市へ。1つ目の目的地、ざる豆腐発祥のお店『川島豆腐店』でランチ会席を頂いたあとは、2つ目の目的地へ。
台風が迫っているのでお天気により考えようと思ったけれど、大丈夫そうでよかった。お豆腐料理を頂いて外に出ると、日差しが眩しい。風もおだやか。


るんるんで向かったのは、唐津を代表する窯のひとつ、「隆太窯」さん。
唐津の窯元は広い範囲で山の中に点在しているので、1日で多くを ”めぐる”ことは不可能。隆太窯さんは あこがれの窯元だから、いの一番で向かわなくちゃ。


こちらは唐津では珍しく、個人であれば事前予約が不要な窯元なのだけれど、念のためお電話を入れた。
「今日はあいにく作家が不在なのですが、それでよろしければぜひお越しください。お待ちしています。」とのこと。心が弾む。
作家さんがいらっしゃらないのは とても残念だけれど、台風で来られるかどうかもわからなかったこの旅のことを思えば、窯元を拝見できるだけで望外の喜びなのだ。

隆太窯の作家さんとは、中里隆さま、中里太亀たきさま、中里健太さまの親子3代。
唐津といえば中里家、といっても過言ではないかもしれない。この隆太窯を開かれた隆さまは、人間国宝 十二代 中里太郎右衛門の五男でいらっしゃる。(十二代 中里太郎右衛門についてはこちらで触れています。)唐津で最も歴史ある窯・中里太郎右衛門窯を「本家」、こちらの隆太窯を「分家」と呼ぶ方もいらっしゃる。
隆さまは、海外でも人気の有名人だ。1年のうち半分はアメリカなどの海外で作陶されると聞く。

お帽子がトレードマークの隆さま


隆さまとともに窯の作品を中心的に作陶されている隆さまのご子息・太亀さまも、やっぱりその作品は大人気。地元に行くとそのカリスマ性を実感する。
そのご子息 健太さまもまだお若いけれどご活躍。
そのお三方の轆轤ろくろが並んでいる工房も拝見できるというのだから、わくわくが止まらない。


山道を登っていった先に、隆太窯はあった。

もう、この山あいに佇む建物を見渡すだけで感動しちゃう。

全景を撮り損ねたのでポストカードで。


まずはギャラリーを拝見して、そのすてきな空間と魅力的なうつわの数々にうっとり。できればずっと、この場を離れたくない。

そして作品をよく拝見すると、お三方それぞれの特徴がわかる…ような気がしてくる。私には、それぞれ「しっとり」、「繊細」、「フレッシュ」な感じが漂うように思われた。いずれにしても手のぬくもりを感じるようでとても素敵。やっぱりいいなぁとしみじみ思う。


ステンドグラスをとおして入る光がやさしく美しい。
「川島豆腐店」でも使われていた粉引こひきのお湯のみ。
繊細な三島唐津に心奪われる。
冬場はこのストーブに火がはいるのだそう。


従業員の方と少しお話をして、いよいよ作業場へ。写真はどこを撮っても構わないとおっしゃりながら見送ってくださった。


敷地内には小川もながれ、せせらぎが心地よい。


普段はもう少し水が澄んでいるのかも。


自然を満喫しつつも、作業場へと心は はやる。

そしてその建物へ。
とても雰囲気のある作業場にはいる。
作家さんがいらっしゃれば、隆さまがお好きだというバロック音楽が流れているはずの空間だ。


右から隆さま、太亀たきさま、健太さまの轆轤。
その左にもう一つあり。
使われているのは蹴轆轤けろくろ。(足で蹴って回すろくろ)


轆轤ろくろをひく音と、バロック音楽と、小川のせせらぎと。その音風景を想像して陶酔する。
開放的で、想像していたとおりの素晴らしい作業場。今ここに自分がいるなんて、夢なんじゃない?と思うほど。


と、一人の男性がそこにいらした。ご挨拶をすると、中里さまのお知り合いとのこと。レストランをされているのだけれど、時々轆轤ろくろを借りてご趣味で作陶されているのだとか。轆轤は4台並んでいるから、3人いらっしゃるときでも1台は使えるのでしょう。
「せっかく来てもらったのに、今日はあいにく中里さんがいなくて。」と残念そうにおっしゃる。
「いえ。作陶の様子を拝見できないのは残念ですけれど、この場所を見ることができただけで十分です。」とおこたえすると
「ボクでよければ轆轤をひくところ、お見せしますけど…。素人ですけどね。」と笑う。
「えっ、よろしいのですか!? ぜひお願いします!」


ということで…


蹴轆轤の回し方から道具のあて方まで、ご丁寧な説明もくださった。心からありがたいと思う。感謝。

作業場をあとにするとき、お名前を伺うと、ちょっぴり照れくさそうにお店のお名前とご自身の苗字を教えてくださった。「ボクのお店では、こういう うつわは使ってませんよ。」と付け加えて。
「ありがとうございます」とお名前をインプットし、あとで検索してびっくり・・・!
その地域(唐津ではない)を代表する、名フレンチ店のオーナーシェフでいらした。半袖短パン姿もよかったけれど、コック服姿がまぶしすぎる。
それはそれは立派なお店で、さまざまなところで高評価。行きたいお店がまたひとつ、増えてしまった…。
おめかしをして、いつか かならず。


それにしても、やっぱり料理を愛する人はうつわを愛するし、うつわを愛する人は料理を愛するものなのかしら。
そういえば魯山人は「うつわは料理の着物」という言葉を残したし、「お料理を乗せてうつわは完成する」とおっしゃる陶芸家の方も多い。
陶芸家の方にはお料理好きが多いしな。隆太窯の中里さまも日常的にお料理をされるのだとか。




このあと、また別の場所で隆太窯の作品は観ることができる。それがわかっているから、すこし安心してその場をあとにした。ありがとうの気持ちをそっと置いて。


現在使われている窯。
以前つかわれていたという窯。
この建物でわけあり品のバーゲンをしていた。わけありといっても、使用するにはノー問題。ラッキー。
高台をけずるカンナ。





1日目:8月8日(火)
福岡空港→佐賀県唐津市 「山内薬局」→「川島豆腐店」→「隆太窯」の空間とうつわに うっとり。


次回も窯元に向かいます。


最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。




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