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呵責液
2019年12月30日 21:39
片脚義足のバレリーナは、一回転〈ピルエット〉の時に中心軸を任せられる自慢の左脚に油を差しながら、真空管ラジヲから流れる、音質の悪いニュースに耳を傾けていた。天気予報で明後日の雨のことを知り、憂鬱になる。神経痛に悩まされる日々には、仕方がないとはいえ、もううんざりだ。その気持ちを、先日太っ腹なパトロンから貰った真絹のトゥシューズを箱から出して眺めることで、豊かな気持ちで上書きし、何とかその日を
2019年12月25日 20:37
地中深くに眠る鸚鵡螺化石〈アンモナイト〉が、金になるほど、山羊の角が水晶になるほど遠い昔のお話です。大変に子供っぽく残酷で、享楽に事欠かない支那の大国の王様がいました。血に飢えた大虎が入った檻の上で、ひらひらとした衣装の踊り子を踊らせ、虎の鋼のような鉤爪で踊り子の領布〈ひれ〉や裳裾がずたずたに引き裂かれていく様子を、虫を観察する子供のように、飽きずに見ていたり、踊り子の傷ついた足から流れる血の
2019年12月6日 13:54
私の骨髄には、銀の砂時計が埋まっている。寝転がりながら、自分の肉体〈カラダ 〉が出す音だけを聞いていると、よく分かる。死んだ星を細〈ほそ〉く砕き、その白粉〈しらごな〉を硝子の背骨の管に通したもの、それが私。星の瞬きや、妖精が囁く音よりも、絹の糸に茜珊瑚や金の粒を通すよりも、輝かしい、ささめきながら降り積もる、溶けない雪のような、その音。全ての砂が脳の頂点まで達すれば、その時が私の寿命、今際