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呵責液
2019年1月23日 11:55
ここは、夢や幻想に住まう者達が、互いの世界に干渉しないで、欲しいものや要る物を、物々交換で、手に入れるための水路です。ここでは、誰でも商人になれます。手に入れたいものと、同じくらい尊いもの、珍しいものを、代金の代わりにして、取り引きします。ここに来る者達は、商人にも、お客にもなるので、商客と、呼ばれます。人間が決めた価値や値段は、ここで、取り引きされる物には、あまり関係ありません。ただ、そ
2019年1月22日 20:13
貿易風や、偏西風、とにかく世界中の風に乗って旅をしている一羽の鷹がいた。 鷹は、ある日ふと思い立って、自分の巣穴と、限られた縄張りから外に飛び出したのだ。「おれは、こんなに立派な羽が神様から与えられたというのに、世界中で、ごく限られた、こんなに狭いところで死ぬまで、生きなくてはならんなど、何とも馬鹿らしい」今、鷹は魚の鱗のように煌めく海面の、少し上空を飛び回っている。「ここまで来るのに、羽
2019年1月21日 20:19
彼岸花の咲き乱れる山には、時折、真っ白なワンピースを来た綺麗な女が、何処からともなく、現れるらしい。女は、その格好のまま、躊躇なく真っ赤な毒花の中に寝転ぶと、すうすうと、赤子のような寝息を立て始めて、彼岸花が、自然と枯れ始める頃まで、起きては来ないらしい。彼女が、すっかり目が覚めて、起き上がる頃には、彼岸花の毒が、真っ白なワンピースに染み込み、血のような赤に染っているという。彼女は、辺り一面の、
2019年1月20日 14:53
あなたは、ルピタスの種をご存じですか。ルピナス?いえいえ言い間違いでは御座いませんよ。・・・それならば、お教えしましょう。ルピタスの種は、見た目の形は、翡翠葛に良く似ていましてね、しかし、皮は硝子質の硬い膜で覆われていまして、水入瑪瑙のように、中に混じり気のないとろりとした、純正の青墨(あおインク)のような養分の液体がたっぷりと入っていまるのです。不思議なことに、中には気泡の様なものは全く
2019年1月16日 19:31
これは、誰も知らない程の、遠い遠い大昔、まだ、世の中が、決められた天の運航どおりに、生命が巡り巡って、全てが決まった順序で、きっちり廻っていた頃のお話です。カラスの羽のような、黒いこうもり傘の中に、三日月をしまい込んでしまった男がいました。男は、真っ暗な、本当の暗闇の中でも、皆から見つめられて、愛でられ、持て囃されている月の事を、どうにかしてやりたいと思っていました。男の正体は、夜の闇でし
2019年1月13日 10:33
銀の砂漠は、月の砂で出来ている、と昔語りの、老婆は語る。流星が三度瞬いて、辺り一面を天幕状になった、炎の波が焼き払い、この地にはほんの少しの灰と、風だけが残ったらしい。緑洲(オアシス)の民達から、希望の花と言い伝えられている、黄色く、可憐な花でさえも、燃えてしまった。僅かに残った力無い風は、燃え屑達を巻き上げることしか出来なきなかった。生き物の、生命を力を奮いたたせてくれるような、風を吹き鳴
2019年1月9日 13:38
よく花の美しさは一瞬という人がいるが、それは蕾が咲いてから花弁が散るまでの事だけを見てるからそう思うんだよ。 種から柔らかく、幼く、可愛らしいつやつやとした新芽を出した時も、一生懸命に、陽の光を吸って、ぐんぐんと背を伸ばそうとする時も、蕾を膨らませて、開花に備えている時も、花弁を風にはためかせて、甘い匂いをそこらじゅうに撒き散らしている時も、実をつけて、少しずつ全体から生気が失われていく
2019年1月7日 22:28
とある大陸では、牡丹という獅子の鉤爪ような強さと、鬣の華やかさ、毛並みの美しさを併せ持つ花を、その威風堂々とした佇まいから、花の王と呼ぶようになりました。また、その牡丹に似ているけれど、どことなく僕のような佇まいの芍薬という花は、宰相と呼ばれるようになりました。これは、その芍薬が、まだ生まれ落ちたばかりの、柔い淡雪のような色しか、持ち得なかった頃から始まるお話です。皆さんは、花が喋るなど、ただ