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松下幸之助と『経営の技法』#345

1/25 大らかな人生をひらく

~仕事も人生も、寿命に達するその瞬間まで、全精神を打ちこんでゆきたいものである。~

 我々の仕事というものも、それがいつのことかわからないにしても、やはりそこに1つの寿命というものがあるのである。しかし、だからといって、努力してもつまらない、と放棄してしまうようでは、天寿を全うせしめることはできない。これは、いわば人間はやがては死ぬのだからと、不摂生、不養生の限りを尽くすのと同じであろう。
 それよりもむしろ、寿命に達するその瞬間までは、そこに自分を生かすというか、全精神を打ちこんでゆくことこそ、大切ではないかと思うのである。
 一切のものには寿命がある。ということを知った上で、お互いがそこにすべてを打ちこんでゆくという姿から、僕は大きな安心感というか、おおらかな人生がひらけるのではないか、と思ったりしているのである。
(出展:『運命を生かす』~[改訂新版]松下幸之助 成功の金言365~/松下幸之助[著]/PHP研究所[編刊]/2018年9月)

2つの会社組織論の図

1.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 まず、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 投資家である株主と経営者の関係で見た場合、経営者は投資対象ですから、しっかりと儲けてもらわないと困ります。逆に、投資家はそのような経営者の資質を見抜くことが必要です。
 今日の言葉を、個人の人生哲学などのような観点から見た場合には、仏教哲学の重要な部分そのものと言えそうです。何故なら、世の中すべて「無常」だが、だからと言ってやけくそになるのではなく、だからこそ一瞬を無駄にしないように努力し続けること、という「教え」につながるからです。「無常」だけど、一所懸命になる、という逆説部分について、宗教的な何かが無ければ、論理的につながらないはずだ、という解説を聞いたことがあります。
 けれども、このような人生哲学や宗教哲学ではなく、経営の観点から、氏の言葉を検討しましょう。
 その場合、一般的な話である前半部分ではなく、最後の松下幸之助自身の言葉である、「一切のものには寿命がある。ということを知った上で、お互いがそこにすべてを打ちこんでゆくという姿から、僕は大きな安心感というか、おおらかな人生がひらけるのではないか、と思ったりしているのである。」という部分に、ヒントがあるように思います。
 特に、「お互い」が打ちこんでいくことに価値があり、「安心感」「大らかな人生」につながる、という点です。
 経営者、という立場を当てはめた場合、市場での競争に参加する全ての経営者が、「お互い」打ちこむからこそ、市場経済、社会全体が反映していく、と読めるように思われます。氏は、市場競争崇拝者だからです。競争こそ、お互いが成長するために、社会全体が反映するために、重要である、ということを様々な場面で説いているからです。

2.内部統制(下の正三角形)の問題
 次に、社長が率いる会社の内部の問題を考えましょう。
 ここで、会社組織、という場を当てはめた場合、会社従業員全てが、「お互い」打ちこむからこそ、会社が成長し、そこに努める従業員全体にとっても、「安心感」「大らかな人生」につながる、と読めるように思われます。氏は、従業員の積極的な関与を常に期待し、従業員にどんどん権限移譲する経営モデルを磨き上げてきましたから、従業員自身の成長と会社全体の反映は、ベクトルが一致しているのです。

3.おわりに
 今日の分析は、松下幸之助氏の言葉を随分と俗っぽくしてしまいました。何かもっと良い分析ができたかもしれません。
 どう思いますか?

※ 『経営の技法』の観点から、一日一言、日めくりカレンダーのように松下幸之助氏の言葉を読み解きながら、『法と経営学』を学びます。
 冒頭の松下幸之助氏の言葉の引用は、①『運命を生かす』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に了解いただきました。

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SMBCseminar(A4)_産労用チラシ_表面




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