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探究学習に必要なもの

学校における探究学習


 来年度より高校では新学習指導要領が改訂され、それに伴い「探究」と名前のついた授業が始まります。

古典探究 地理探究 日本史探究 世界史探究 理数探究基礎 理数探究
総合的な探究の時間

平成30年改訂 高等学校学習指導要領 各学科に共通する教科・科目等及び標準単位数

 探究という言葉は、高校教員ならばここ数年の教育改革において、さまざまな場面で耳にした言葉ではないでしょうか。探究とはどんな意味があるのでしょう?辞書を引くと次のような内容が出てきます。

[名](スル)物事の意義・本質などをさぐって見きわめようとすること。「真理の―」「生命の神秘を―する」

デジタル大辞泉(小学館)

 と言うことは授業において物事の意義や本質について考えさせるような授業を展開する必要があるようです。
 うーん・・・また難しいことを・・・とも思いつつも、振り返ってみると日ごろから学校教育を通して私たちが育成しようとしている生徒の姿は「物事の意義や本質を見極めることができる生徒」ではないでしょうか?そういう生徒を私たちの授業を通じて育成できたら教員冥利に尽きますよね!むしろ全ての教育にこうした探究的な側面が既にあるのでは?とも思います
 でも、どうやって探究学習を進めていけばよいのでしょうか?学習指導要領を見ると探究における生徒の学習の姿として以下のような図が出てきます。

高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説  総合的な探究の時間編

 この図は探究のプロセスを具体化したもので、生徒が日常生活や社会から課題を設定して情報を収集、整理分析して、まとめて表現するといったプロセスを繰り返していく事で学習の内容が深まっていく(図では高まっていく?)と示されています。今後、探究の授業ではこうした探究のプロセスを意識した学習展開が必要になってきます。


探究学習をやってみて

 実は、前述した探究学習の中で既に多くの学校で実施されている授業があります。それは「総合的な探究の時間」です。この授業は元々「総合的な学習の時間」として全国の高校で行われていた授業ですが、移行措置として令和元年度入学生から年次進行で「探究の時間」に変更して実施されています。私が勤務している学校でも本格的に「総合的な探究の時間」が行われました。実は、私はここ数年間このカリキュラムの作成に関わっており、探究のプロセスを念頭に置きながら、さまざまな試行を行ってきました。今年の授業においては全体統括の役割でこの授業に関わり、学年全体の授業を俯瞰する形で携わりました。生徒は本当によくがんばって課題を見つけ探究のプロセスに従って学習を進め、とても素晴らしい課題解決のアイデアを考え出しました。本格実施の初年度としては大きな成果がありましたが、1年間の学習を通じて見えてきた課題もあります。それは・・・

課題をどれだけ自分事として捉えられるか

 と言うことです。課題を設定するときにもちろん自分の関心がある事柄を設定すると思うのですが、その課題が高校生にとってどれだけ自分と関連しているかを考えられるかと言うことが重要になります。例えば、高齢者の問題について考えるグループがいたとします。インターネットで「高齢者の問題」と検索するとさまざまな情報が出てくるでしょう。介護問題、老老介護、認知症の増加など、、、調べれば調べるほどたくさん出てきます。とっても重要な問題ですが、高校生にとってはちょっとハードルが高く、いきなりこうしたキーワードに当たるとちょっと尻込みしてしまいます。さまざまな問題があって何から手を付けて良いのかわからず、とりあえずでてきたキーワードから問題を絞って課題解決をするのですが、なかなかうまくいかず最終的に表面的な課題解決になってしまいます。
 今年の探究活動を見ているとこうしたグループがいくつか見られました。もちろん高校生が高齢化社会について考えることは大変意義のあることです。でも彼らは高齢者ではありません。実際に高齢者がどのようなことに困っているのかを理解するのは大変です。でも、実際に高齢の祖父や祖母と同居していて日常的に介護の手伝いをしている生徒やNHKのドキュメンタリーでリアルな高齢者の問題を知って衝撃を受けた生徒なら高齢者の気持ちやその課題にかかわる人たちの気持ちを理解して探究活動に臨むことができるのではないでしょうか?こうした実感を高め、課題が生徒にとって自分事になっていないと、なかなか探究活動がうまくいきません。私の学校では大学と高大連携をしながら探究を進めていますが、大学ではこれらの問題は課題への「共感」と言われていました。探究活動おいては「デザイン思考」や「ブレインストーミング」「KJ法」などを活用させていますが、こうした思考法や技法よりも、もっと根本の「共感」を高めていくことが探究の成功のカギになると言えます。

まとめ

 探究は奥が深いです。まだまだ始まったばかりですが、さまざまな学校が取り組みを行っているので、これからどんどん事例が出てきて学習としての深まりが出てくるでしょう。授業を実践していきながら課題を発見して改善していく事が重要です。そう考えたら授業を作っていく事もひとつの「探究」と言えるのではないでしょうか。

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