キャリア教育って難しい?
キャリア教育との出会い
2022年。ついに高校の学習指導要領が改訂されます。
現場ではここ数年間、改訂に向けてたくさんの研修が実施され、その度に観点別評価、カリキュラムマネジメント、社会に開かれた学校など、さまざまなキーワードが出てきました。正直、いろいろなことが変わっていって頭がパニックの状態になっている先生も多いのではないでしょうか。
もちろん私もその一人で、改訂によって今まで行っていた教育を大きく見直さなくてはいけなくなりました。また、新しい学習指導要領について学んでいるとキャリア教育と言う言葉をよく耳にするようになりました。
「キャリア教育って何???」
「僕は美術の先生なんだからそんなの教えられないよ。」
とか思っていたところ、勤務している学校の人事で「進路部のキャリア教育担当です」と言われ、3年前からキャリア教育に携わるようになりました。最初は本当に何をやらなくてはいけないか分からず手探りの状態でしたが、やってみるとこれがなかなか面白い!自分にはあまり縁のないと思っていたキャリア教育が自分自身を大きく変えてくれることになりました。
キャリア教育って何だ?
そもそもキャリア教育って何なんでしょう?
学習指導要領を見てみると下記のような記述が出てきます。
ふむふむ、要するに特別活動や教科の学習によって将来のことを考え、社会で生きていくために困らないような力を身に付ける・・・と言いったところでしょうか?でも、、、その力って何でしょう?将来なりたい夢とか職業とかって人によって異なりますよね?例えば教師になりたい人とダンサーになりたい人では身に付ける力も変わってくるのでは???
もう少し詳しく調べていきましょう。
なるほど、少し詳しく見えてきました。キャリアとは人生における役割(僕だったら美術家として絵を描き、仕事は美術教師で家では夫であり父親)の中でその役割を果たし、積み重ねていった歴史(自分史)が「キャリア」であって、それを大人になってある役割(仕事やプライベートでの立場)についたときにそれを実行できるための教育が「キャリア教育」といったところでしょうか?また、その教育の中で高校生として学校や家庭での自分のポジション(生徒であり家では子ども)を理解しながら自分らしい生き方を探して実現していくのが「キャリア発達」ということですね。
そうなるとキャリア教育で大切なのは今の自分を知ることと将来の道筋を見通すことといったことになりそうです。キャリアとはもともとラテン語で轍(わだち)という意味があるそうなので正に自分の進むべき道を考え作るといった学習と言えそうです。
何の力を身に付けるべき?
さあ、キャリア教育が何なのか少しずつ見えてきたような気がします。でも「自立に向けた資質・能力」といってもそれってどんな力なんでしょうか?またまた調べてみるとちゃんとありました!!「基礎的・汎用的能力」と呼ばれている力だそうです。この能力はキャリア教育が提唱されはじめた当初、アメリカやデンマークなどのキャリア教育の事例を調査研究し、「4領域8能力」と定義づけられ、それを更に整理する形で「基礎的・汎用的能力」となったようです。下図を見てもらうと分かりやすいのではないでしょうか?
とは言え、まだ少し難しそうですね・・・整理してみると基礎的・汎用的能力の「人間関係形成・社会形成能力」と言うのはコミュニケーション能力やリーダーシップ、フォロワーシップ、協働性と言うことができそうです。もっと言うと人間関係を円滑にしできる力の事ですね。「自己理解・自己管理能力」は主体性、自己肯定感、計画性、前向きに捉える力、自己の役割への理解と言えるでしょうか。いわゆる自分を知りましょうと言うことですね。「課題対応能力」は課題発見・解決力、情報収集・処理能力、考え抜く力、アウトプット、そして今はやりのデザイン思考もここに入るでしょうか。柔軟な発想とつなぎ合わせる力、知識が必要ですね。最後に「キャリアプランニング能力」は働く・学ぶことの意義・多様性の理解、生き方の選択、自己有用感、将来設計、社会課題への関心などが挙げられるでしょう。(ここに挙げた例は私の主観なので悪しからず)これらの力を身に付けることによってキャリアを積み重ねて自立していく事につながっていくようです。
どこでやるキャリア教育?
さあ、ここで大きな問題が起こります。学習指導要領では「特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図ること。」とあります。
えっ!各教科等ってことは普段の学習の中でこの力を身につけさせなきゃいけないの???
そうなんです。特別活動を要としつつも実は国語、数学、理科、社会、英語、家庭科、芸術といった全ての教科でこの力を身につけさせなければいけないんです。
いやいや各教科には各教科で教えるものがたくさんあってそれどころじゃないよ!!!
と思いますよね。私も最初はそう思いました。でもよくよく考えてみると、美術では作品を作るときに自分と向き合ってコンセプトやテーマを決め、表現したいものを考えさせて自分の個性を大切に作品を作らせています。そう考えると「自己理解・自己管理能力」を身に着けさせる一助にはなっていそうです。また、作品制作の際はなかなか生徒の思う通りの作品にならず、教員のアドバイスを受けながら試行錯誤しながら知識や技術を身につけさせています。「課題対応能力」も身につけさせられそうですね!!それから、作品鑑賞の際はグループワークを実施してコミュニケーションを取らせています。「人間関係形成・社会形成能力」の育成もできているのではないでしょうか。そうやって改めて振り返ると実は、私たち教師は日々の学習を通じて生徒たちに既にキャリア教育を実践しているようです。つまり、これから授業を180度変えて実践するのではなく、今行っている授業の中で何がキャリア教育に当たるのかを意識して授業を行うとキャリア教育の充実につながるのではないでしょうか。つまり、何より大切なのは各教科における日々の授業の充実ということですね。
また、「総合的な探究の時間」や「産業社会と人間」といった授業はそうしたキャリア教育を実践するに当たって適している授業と言えます。実は私は、今の勤務校でこのカリキュラムの作成や改良を行い、キャリア教育の実践を行ってきました。詳しく書きたいところですが結構長くなってきたのでまた、別の機会に書こうと思います。
まとめ
キャリア教育って難しそうですけど嚙み砕いていくと実は教科であったり学級で身につけさせている力の事になります。でも大切なのは自分の行っている教育活動の何がキャリア教育に当たるのかを整理して理解することだと思います。いわゆる「メタ認知」です。自分の授業や学級での活動を「メタ認知」できると「あっ!ここはキャリア教育の部分になるからより丁寧に生徒に説明しよう」と思ったり、「この授業はキャリア教育の要素が少ないからもう少しグループワークを入れてみるか」とか思うことができるはずです。こうしたことを繰り返していく事がいわゆる授業改善、カリキュラムマネジメントにつながると思いますし、生徒にとってもキャリア発達が促されよりよい学校になっていくのではないかと思います。
分かると楽しいキャリア教育!無理せずやれるところから実践していきましょう。
Let's challenge!!
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