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あなたは誰にも罵られない

例えば小説のタイトルを考える。

小説という形式の魅力はその自由さにあると思っている。

活字離れが叫ばれて久しいが、sns文化は活字文化でもある。

フィクションの力を信じている。

自分のともだちには話しづらいような、ネガティブで複雑な感情を架空の人物や生活背景を与えることにより表現することができる。

映像や写真の力を借りない分、より読み手に届く表現を求められる点ではシビアでもある。

その中でタイトルは読んでみたいと思うかどうかを決めるにあたってとても重要だと考える。

山崎ナオコーラさんの『人のセックスを笑うな』という小説のタイトルを初めて知ったときセンセーショナルで記憶に残った。

そして何年か後に文庫版で手に取ることになった。

フラット派。小説に登場する感情には俯瞰的で肯定の姿勢でありたいと思う。

『あなたは誰にも罵られない』

届けたいから、主語は「私」ではなく「あなた」を選ぶ。親も恋人も上司も友人も、そしてあなた自身も「私」という存在を罵ることなんてできない。

そのことを踏まえた上で初めて傷ついた経験、小さな違和感からいわゆるトラウマ的体験まで様々ある困難を乗り越える、あるいは失敗から学ぶ努力ができる気がする。

『人のセックスを笑うな』が笑う人に向けた言葉と解釈するとすると、このタイトルは罵られる人に向けた言葉でありたい。

まだ書き始めてもいない小説のタイトル

『あなたは誰にも罵られない』




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